エピローグ 夏休みへ向けて

「オジサ~ン♪」

「あ、亜栖羽ちゃん、こっちこっち」

 すっかり半袖の季節になって、今日の二人は図書館デート。

 亜栖羽の期末試験対策を終えると、大きく伸びをしながらホっと一息。

「ぅう~ん…ふぅ。オジサンは 夏休み、あるんですよね?」

「夏休みっていうか、プログラマーで在宅だからね。仕事を締め切りまでに上げれば、それ以外は自由だよ」

「やった~。えへへ、どこに連れて行ってもらおうかな~♪」

 夏休みに、二人で出かける相談も、今日はしたかったのだ。

 泊まりは無理だけど、一日一緒にいる事は出来る。

「海とかプールも良いですけど~、やっぱり混みますよね?」

「だろうね…あ、山とかのほうが空いてるかな? ちょっとキャンプとか 調べてみるよ」

 言いながら、育郎はタブレットで検索。

 そんな青年を、亜栖羽は頬杖をついて、楽しそうに見つめている。

「? どうしたの? あ、どこか希望の場所とか ある?」

「えへへ~♪ 画面に向かうオジサン、お仕事モードで気格好良いなぁって♪」

「そ、そんな事ないよ…ゴホん」

 動じないと決意したのに、女子高生に褒められて照れてしまう、二十九歳。

 亜栖羽はクスっと微笑んでいる。

 日差しが夏色に変わり始めた窓の外では、半袖半ズボンの子供たちが、男女を問わず噴水ではしゃぎまわって、ズブ濡れだ。

「山かぁ…きっと山も素敵ですよねぇ…♡」

 夏の高原をウットリと想う少女の姿に、育郎も、二人で向かうキャンプの景色を思い浮かべていた。


                         ~終わり~

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好きじゃなくって愛してる! 八乃前 陣 @lacoon

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