睡蓮ちゃんはどういう巫女になりたいの?
「今日は一日ありがとうございました!」
「おおきにぃ~」
一日を通じての見学を終え、私と睡蓮ちゃんは幸子さんに挨拶をして与那真神社を後にした。
「はぁ~。久しぶりに芽衣奈さんと幸子さんにあったけど、元気そうで何よりだったわぁ~」
「子供たちも元気そうやったし、沙綾ちゃんも楽しそうやったなぁ~」
睡蓮ちゃんはいつものはんなり声で私にそう言ったけど、私はさっきの睡蓮ちゃんの態度が気になっていた。
「……ねぇ、睡蓮ちゃん」
「なんやぁ~?」
「ちょっと、さっきの睡蓮ちゃんの態度が気になったんだけど……」
「気になった態度ってぇ~」
「私が巫女としてちゃんと考えてた、みたいなことを言ってたと思うんだけど……?」
「あぁ、それかぁ……」
すると睡蓮ちゃんは、またさっきまでの態度に戻った。
「あの、無理なことを聞いてるんだったら、その……」
「ええねん、沙綾ちゃんに入った方がええと思うし……いつまでも、一人で抱え込んでてもあかんし……」
微かに笑みを浮かべながらつぶやいた睡蓮ちゃんは、そのまま話を続けた。
「うち、神社の巫女になろう思ったんは、単純に巫女さん達がかっこえぇって思ったからなん。幸い、うちは九条院財閥でも末娘やから自由に進路を決められたし、巫女になれて嬉しいって思っとる」
「うん」
「でも、巫女になって具体的に何をやりたいかってのは、あんまり考えとらんかったの。倭国の人達を守るってのはもちろんなんやけど、沙綾ちゃんみたいに、孤児になった子供達の為に頑張るって言う、一歩踏み込んで考えとらんかったわ」
「そうなんだ……。睡蓮ちゃんにはそう見えたんだ……」
なんだが深刻な感じの睡蓮ちゃん。いつもはんなりした睡蓮ちゃんの姿しか見たことがない私からすると、今のこの態度はちょっと不思議に思えた。
「正直、沙綾ちゃんみたいに巫女として考えなあかんのかなぁって、今日一日、一緒に居て思わされたわぁ~。しっかりとした目標とか、巫女になってうちがどうしたいのかとか、考えることはほんまに多いわぁ……」
「睡蓮ちゃんのなりたい巫女、かぁ……睡蓮ちゃんも、私も、こうやって自分の道を歩き出していくんだね……」
「そうせなあかんって、痛感したわぁ」
「でも私も、そうやって睡蓮ちゃんの話を聞いて、うかうかしてちゃいけないって思ったわ」
「そうなん?」
睡蓮ちゃんは首を傾げながらそう言った。
「睡蓮ちゃんみたいな武術の才能は持ってないから、目標だけあっても道のりが遠いって思ってる。睡蓮ちゃんがどんな巫女になるのかは分からないけど、もしそれが見つかったら、私はすぐに追い越されちゃうかもしれないわね」
「ふふっ、謙遜せんでもええて~」
そう言う睡蓮ちゃんは、またいつものはんなりした雰囲気に戻ったわ。でも、さっきまでの睡蓮ちゃんを見ていると、本当にいろんな形で巫女を目指した人がいるんだなぁって思える一日だったわ。
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