出来ることからやろうよっ!
「ねぇ、睡蓮ちゃん」
「ん? どないしたん?」
「やっぱり、総裁が怖い?」
部屋を出て、みんなで五階に続く階段を下る途中で、私は睡蓮ちゃんに気になっていたことを聞いてみた。
「正直に言えば、怖いなぁ……」
「理由は分かるの?」
「まだお母様に認められるような巫女にはなれとらん。未熟すぎる今のうちじゃ、不安っていうか、心許ないって思っとるんやろうなぁって」
総裁の醸し出す雰囲気や威厳は凄かった。確かに睡蓮ちゃんが不安になるのも無理ない。初めて会った私ですらそう思ったもん。
「それでも、神主様はあなたを選んだわ。それはあなたに、一人の巫女として、成すべき任務を与えたことになるわ。しっかりと最後までこなさなくちゃね」
「そう、ですよね……」
愛梨様のご指摘にシュンとなる睡蓮ちゃん。
「大丈夫。あなたには沙綾ちゃんがいるわ」
「そして私と愛梨の愛のこもった教えがあるわ❤️」
と、愛梨様と姫華様は二人して睡蓮ちゃんを横から軽く抱きしめられた。
「それで深夜からの活動だけど、私と愛梨は別行動を取るつもりよ」
「でも睡蓮ちゃんと沙綾ちゃんは二人一組で行動することよ。この前話した連携を思い出して、邪気に対応するのよ」
「はいっ!」
「分かりましたっ」
と、私と睡蓮ちゃんはビシッと敬礼で応えた、お部屋へと急いだ。
⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶
お部屋に着いた後、愛梨様と姫華様はお部屋にあるお風呂に二人で入られた。私と睡蓮ちゃんはその後に入ることになるので、武器の手入れひと段落させて休むことにした。
にしても睡蓮ちゃん、ここ最近やっぱり気が張ってる感じがするわ。まぁ任務内容を考えると当然だけど、なんだろうなぁ。
「ねぇ、睡蓮ちゃん」
「なんや?」
「やっぱり、肩に力入っちゃうよね……」
「そうやな。うちもここ数日そうなっとるんは自覚しとるんよ」
そう。いつものはんなりほんわかな睡蓮ちゃんの雰囲気は、今回の任務を言い渡されてからぱったりとなくなってる。
「でも、愛梨様に言われた通り、うちも雅華神社の巫女や。いつまでもクヨクヨしてられへん」
「気合、入ってきたね」
「まぁ、ない時は自分でなんとかせなあかんし、それにうちには今、沙綾ちゃんがおる。だって、沙綾ちゃんはうちにとって……//////」
と、急にもぞもぞし出した睡蓮ちゃん。うん。私もなんかほっぺが熱くなってきた。
「睡蓮ちゃん。私も一緒だから、力を合わせて、邪気を払おう。私、睡蓮ちゃんとずっと一緒にいたいもん」
「沙綾ちゃん……」
「だからさ、今私達にできる精一杯の力で邪気を払おうっ!」
「うん、うち、沙綾ちゃんと一緒にやってみるわっ!」
「ふふっ、睡蓮ちゃんカッコいいっ!」
そう言いながら睡蓮ちゃんに私はぎゅっと抱きついた。
「さ、沙綾ちゃん⁉︎」
「一生懸命目の前のことに取り組んでる睡蓮ちゃんが、私は大好きだよ」
「一生懸命、取り組む?」
「だから、私と一緒に任務をこなそう!」
「うんっ! うち頑張る!」
大好き。私が言ったその言葉の意味は、友人として、仲間としての意味だけじゃないと思ってる。
多分、もっと深くて、掛け替えの無い人に対しての告白って意味もあると思う。一生懸命に自分なりの巫女になろうと走り続けてる睡蓮ちゃんに、私は惹かれてるんだ。
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