第4章 夏休みだぁっ‼

せっかくの休み、実家で過ごそうかなぁ~

巫女にも夏休みってあるんですかっ⁉

 季節は七月に入り、雅華神社のあるこの倭国でも、気温や湿度がぐぐ~んと上がってとっても暑くてジメジメしてきていた。


「あっつ~い……」

「ジメジメしてて、装束も濡れてまうわぁ~」


 七月に入ってから睡蓮ちゃんと二人で今日は境内のお掃除。雅華神社の巫女としての仕事の一つで、必ず一日は新人の巫女達が当番になるの。


「それにしても、また睡蓮ちゃんの装束、透けてない?」

「そうなんよぉ~。この衣装やっぱり透けやすくて困るわぁ~」

「上の下着さえ付けられればいいんだけどねぇ~」


 そう。雅華神社の巫女達が装束の下に付ける下着はふんどしだけで、上の方には白衣以外何も着ないの。理由はこの装束と同じで、なるべく肌の露出を多くする為。

 

 一応この装束には冬場になってもこのままで着こなせるような特別な呪術が装填されているんだけど、温度を下げる呪術に関してはまだ開発中。だから暑いときは場合によっては白衣が透けてえらいことになっちゃうの。


「私はあんまり汗をかかないから大丈夫だけど、睡蓮ちゃんは気を付けないとダメよ。またあかね様に見つかったら怒られちゃうんだし……」

「ほんまやぁ~。気を付けるわぁ~」


 そう言いながら睡蓮ちゃんは上着を脱いだ。


「お掃除ご苦労様、沙綾ちゃん、睡蓮ちゃん」


 と、そこで涼音様が私達を見つけられて近づいてこられた。


「お疲れ様ですっ!」

「お疲れ様ですぅ~」


 と、私と睡蓮ちゃんは同時に敬礼した。


「ところで睡蓮ちゃん、その上着って……」

「汗かきすぎてもうて、白衣がスケスケになってもうたんですぅ~」

「スケスケ……確かにそうなっちゃってるわね」


 と、涼音様はちょっと頬を紅く染めながら睡蓮ちゃんの上半身を眺められた。


「あ、あんまし見んといてくださいなぁ~/////」


 と言って身体をくねくねさせながら恥じらう睡蓮ちゃん。


「涼音様ぁ~。いい加減、上にも下着をつけた方がいいと思うんですけどぉ~」

「んん~。それは私も以前あかねちゃんと一緒に神主様に意見したことはあったんだけどねぇ……」


 と、頭を抱えだす涼音様。


「どうしたんですか?」


 と、気になって尋ねてみる私。


「その時神主様ときたら『だってその方が色気があっていいじゃぁ~ん‼』って仰られて……」

「それで、どないなったんですぅ?」

「何度も申しあげても同じで、結局気温を下げる呪術が開発されるまで待っててほしいってことになったの。下着があるとそれこそ蒸れるだろうからその方がいいってことになっちゃって……」


 私も、質問をした睡蓮ちゃんも唖然としてしまった。って言うか神主様、お願いですから年頃の女の子の気持ちを考えてくださいっ‼


「結局、恋まで神主様の味方をしちゃって、他の子達も特に気にしてる感じもないからってことで流れちゃったの。私とあかねちゃんは下に勝手にサラシを巻いてるんだけどね」

「じゃあ睡蓮ちゃん、今度からはサラシを巻くようにしようね」

「そやなぁ~。気を付けるわぁ~」


 と、とりあえずこの件は解決を見た。ってか、上に下着をつける習慣が雅華神社ではなかったのが意外。


「それよりあなた達は、夏休みはどう過ごすの?」

「「夏休み?」」

「あっ、まだあなた達には話してなかったわね……」


 唐突にそんなことを仰り始めた涼音様に、私も睡蓮ちゃんも首を傾げた。


「雅華神社では、ある程度週をばらつかせて二週間程度の夏休みを得られるようにしてるの。その間、実家に戻ったり旅行に行ったり、あるいは空き時間を利用して修行に打ち込んだりすることが出来るの」

「雅範神社にも夏休みってあるんですね~」


 初耳ではあったけど耳寄りな情報でもある。雅華神社には全員一斉の大型連休がない。一応週休二日は確保されているんだけど、それも日程がばらばらで、連続で取っているのか、ばらつかせて取っている感じ。だから二週間も休みがもらえるって言うのはかなり大きいことなの。


「夏休み取得期間は再来週からだから、それまでじっくり考えておくといいわ。もし帰省するんだったら、今週中にはご実家に文を送った方がいいと思うわ」

「「はい」」


 そう仰りながら涼音様は私達に手を振ってその場を後にされた。


「どないしよう、夏休み」

「私も考えて見よっと」


 とりあえず午後は巡回がないし、参拝客への応対の当番もないから、休憩時間に考えることにしよっと。





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