うちら、もっと立派な巫女にならへんとあかんなぁ~
午後六時に沙綾ちゃんと一緒に帰って来たうちらは、お母様の料理を食べ終えてからお風呂に入ろうとしていたわぁ~。
「それにしても睡蓮ちゃん」
「なんやぁ~」
「私達、巫女になってからいろいろと勉強することが多かったけど、雅華神社に入った時から見て、睡蓮ちゃんは成長したって思ってる?」
「うう~ん、どうやろなぁ~。まだまだ霊力の制御はうまくいっとらんし、微妙やなぁ~。沙綾ちゃんはどう思っとるん?」
「そうだね。今日与那真神社に行って、改めてあそこの巫女さん達と会って思ったのは、覚悟の差かなぁ~」
うちよりも先に服を脱ぎ終えてお風呂に入りながらそう言った沙綾ちゃん。
「覚悟の差?」
それに続いてうちも脱ぎ終えてお風呂に入りながら聞いてみた。
「うん。あの神社で預かってる子供達、私達が経験してないような辛い思いをした子達ばかりだったでしょ? 巫女としての仕事をしながら、そういう子供達に寄り添いながら育てていくのって、並々ならない覚悟が必要だなぁって思ったの」
「並々ならない覚悟……」
真剣な表情でそう言いながらたらいに入ったお湯を身体に掛ける沙綾ちゃん。
「力を付けるだけじゃダメなんだって、心の上でも強くならないとダメなんだって。でも、どうやってそっちも強くなったらいいのか、全然分からなくて……」
「沙綾ちゃん……」
ちょっと驚いたわぁ。立派で明確な目標を持っとる沙綾ちゃんが、こんな風に悩むなんて……。でも……
「覚悟って考えると、うちも考えなあかんなぁって思わされたわぁ。雅華神社の巫女って命がけの仕事やし、どんな形であれ、覚悟が足らんと命を落としてまうって涼音様も仰られとったしなぁ」
「うん。まだ私達に任されている任務は、そこまで危険な物じゃない分、実感が沸きにくいけど、涼音様達は強大な負の霊気や、それに取り付かれて暴走した魔物達と戦ったこともあるって、先輩達も言ってたよね」
「知らないことが多いよね。私達……」
ちょっと暗くなりながらそう言った沙綾ちゃんに、うちもその通りやって思ったわぁ。
「うちが目指したい巫女ってなんやろ……まだ分からんわぁ」
「雅華神社の先輩方を見ていて、憧れてる巫女っている?」
「それを言うたら皆さんに憧れとるからなぁ……」
「その中でも特にって方でいいの」
「うう~ん……」
思い返してみると、皆さん凄いって思っとるから分からへんなぁ。でも、あえて挙げるとしたら……。
「やっぱり小百合様やないかなぁ……」
「ああ、それ分かる」
「分かるぅん?」
「うん。小百合様みたいにおっとりしてるし、包容力もあるし、将来は小百合様みたいになってるって思うわ」
「おっとり巫女の後継者かぁ……その時、うちは巫女として何を目的として動けとるんか、ちゃんと考えなあかんなぁ」
憧れてる小百合様は凄いわぁ。あんな風に普段はおっとりしとるけど、第三実働部隊の隊長さんだけあって実力は凄いし、戦ってる場での隙は全然あらへん。ああいう巫女さんみたいになれたらええなぁって、最近ちょっと思い始めとるんよ。
確かに、雅華神社の巫女として、華蓮、ひいては倭国を守るっていう思いはあるけど、本当にうちはそれだけでええんかなぁって。
「うち、探してみようって思ったわ」
「探すって?」
「うちがなりたい巫女の姿。自分が巫女としてどんな風になりたいんか。もっと考えなあかんわぁ。でも、すぐに見つかる自信はあらへん……」
「睡蓮ちゃん……」
「時間は掛かると思う。せやけど、必ず見つけるわぁ」
「なら私も、睡蓮ちゃんを応援してあげるっ!」
「きゃっ‼」
すると沙綾ちゃんは、急に後ろからムギュって抱き着いてきおったわ。な、なにを考えとるんやぁ~???
「ど、どうしたん?」
「なんか、急に睡蓮ちゃんがかっこよく思えたの❤」
「かっこええ?」
「うん。自分の道を探そうって言ったとことかが」
「そ、そうなんかぁ」
「私ね。睡蓮ちゃんを見てて、巫女を目指そうって思った時のことを思い出したわ」
「そうなんやなぁ……そう言ってもらえると、なんや嬉しいわぁ~」
沙綾ちゃんの声が、めっちゃ優しい感じやぁ。すっごい落ち着くわぁ。
「頑張る睡蓮ちゃん、私好きよっ❤」
「ふえっ⁉」
な、なにを突然言うねんっ⁉
「初めて会った時から綺麗って思ってたけど、こうやって頑張ろうって決めた睡蓮ちゃんを見て、もっと好きになっちゃった❤」
「も、もうっ、沙綾ちゃんったらぁ~❤」
でもめっちゃドキドキしたわぁ。あれ? 沙綾ちゃんもドキドキしとる……? どうしてやろう……?
結局その答えは直ぐには出ぇへんかったわ。でも、この夏の出来事がうちの心を色んな意味で前向きにさせてくれたんは、確かやと思うわぁ。
「夏休みが終わったら、また一緒に修業しようね」
「うん。沙綾ちゃんと一緒に、もっと強ぅならんとあかんなぁ~」
沙綾ちゃんと一緒なら、うちももっと強くなれる。今のうちにはめっちゃそう思えるんよなぁ。
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