第2章 巫女って大変だなぁ~
初めての巡回
私と睡蓮ちゃんが雅華神社に入社して早一ヶ月。呪術や武術の修練を積み続けた私達は、遂にこの日、初めて華蓮の巡回に出ることになったの。
初めてってこともあって、私も睡蓮ちゃんもちょっと胸がどきどきしていて、いつも以上に早く起きて準備を始めたの。
「いよいよ今日から、うちらも街の巡回をすることになるんやなぁ~」
「今日は確か、先輩の巫女と組んでの訓練だったっけ」
そう、最初の二ヶ月間は、涼音様と恋様が指定した先輩方と組んで、どんな風に巫女が街の巡回をするのかを間近で見て学ぶことになるの。ついでに言うと、今日の巡回が終わったら、午後から魔物の邪気を払う為の浄化呪術を勉強することになるわ。
「それにしても、どんな方達なんやろなぁ~。一緒に巡回する方達って」
「私達よりも四年先輩の方々だってくらいしか情報がないものね」
「厳しい方やったらどないしよう~」
「そんなことを言ってる場合じゃないわ。私達は華蓮を守る巫女なのよ。どんな厳しい試練が待ち受けていても、どんなに厳しい方であっても、それを乗り越えるのが大事だと思うわ」
「ほんまに沙綾ちゃんは真面目やなぁ~」
はんなり笑顔の睡蓮ちゃん。正直なところ、私も結構怖い。でもそれを表に出さずに毅然としているのも巫女の務め、だと思っているけど……。
「沙綾ちゃん、ちょっと震えてるでぇ~」
「そそ、そんなこと、な、ないわ……」
言葉では分かってても、やっぱり身体は正直みたい……。
⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶
そして午前十時になり、私達は境内に出て涼音様と恋様をお待ちしていた。
「お待たせ」
「お・ま・た・せ~❤」
すると涼音様の凛々しい声と、恋様の艶やかな声が遠くから聞こえて来た。
「いらっしゃったわね」
「そうやなぁ~」
いらっしゃった方向に振り向くと、お二人以外に、背中まで届く長い髪の美しい巫女と、肩まで届く長さの白銀色の髪の綺麗な巫女がいらっしゃった。
「さて、二人共準備は出来てるわね?」
「はいっ!」
「勿論です~」
涼音様の質問に、私と睡蓮ちゃんは元気よく応えた。
「よしっ、では今回あなた達と組む巫女を紹介するわ」
涼音様にそう言われ、二人の巫女が私達の前にすっと歩み寄られ、最初に桃色の髪の巫女が自己紹介を始められた。
「私は
愛梨様は綺麗な翡翠色の瞳を輝かせながら私と睡蓮ちゃんに挨拶された。
「私は
琥珀色の瞳を持ち、微かに吹いた風に白銀色の髪を靡かせながらそう言った姫華様。お二人とも本当にきれいな方達……。
「二人が言ったように、彼女達はこの雅華神社の十九歳の巫女達の中でも、浄化呪術に一番長けているわ」
「この二人には、あなた達の浄化呪術の師匠にも付けることになるわ」
「「えっ⁉」」
と、涼音様と恋様の説明に、何故か愛梨様と姫華様は唖然とした表情になっていた。あれ? もしかして存じてらっしゃらなかったの?
「えっ、って、あなた達、知らなかったの?」
「ええ……」
「私達、何も……」
「へぇ……」
戸惑う愛梨様と姫華様の話を聞き、涼音様は目を細めながら恋様を見られた。
「ごっめ~ん‼ ついその話をするの忘れちゃった~❤」
「あなたったらまた……」
恋様の連絡不足だったみたい。
「二人とも、そう言うことだから、突然で悪いんだけどお願いね」
「それは全然大丈夫なんですが……」
「また愛梨との時間が取れなくなっちゃうわ~❤」
あれ? 姫華様も愛梨様もお互いを見合ってもじもじし始めてる……あれ?
「ひょっとして愛梨様と姫華様、恋人同士なんですかぁ~?」
ちょ、ちょっと睡蓮ちゃん⁉ 何を大胆なことを聞いちゃってるのよ~⁉
「こ、恋人だなんて、そんな……」
「そう、私達は恋人ではなく、
もじもじする愛梨様に対し、姫華様はまるで当たり前のことのようにあっさりと言い切った。やっぱりそうだったんだ……。
「はぁ、あなた達ときたら、終わってからいくらでも求め合うことは出来るでしょうに。雅華神社の巫女となってもう五年目よ。一人前の巫女としての自覚を持ってもらわないと困るわよ?」
「いいじゃない涼音。少しの時間でもあれば互いを求めるのが雅華神社の巫女の
「新人の教育が出来るかどうかが問題なの。この二人の技術は沙綾ちゃんと睡蓮ちゃんの成長に大きく貢献すると思うの。事前に話して置けば、こうなることを避けられるのに……」
この様子だと、涼音様も恋様も、愛梨様と姫華様の関係を承知されてるみたい。しかも涼音様に至ってはその上での配慮までされてる感じだし、本当に凄い方。でもやっぱり雅華神社って、恋様や愛梨様みたいな巫女の方が多いのかなぁ~?
「とにかく、二人共お願いね。正午まで巡回を行って、浄化呪術の稽古は午後二時から行ってね」
「「はいっ!」」
凛々しく答えられた愛梨様と姫華様に見送られ、涼音様と恋様は境内を後にされた。
「さて、これから巡回をする訳だけど、沙綾ちゃんだっけ?」
「は、はいっ! 愛梨様っ!」
「沙綾ちゃんは、これから私と組んで、華蓮の西側を巡回するわ」
「分かりましたっ!」
愛梨様にそう言われ、私も敬礼しながら答えた。
「じゃあ睡蓮ちゃんは、私と一緒に東側の巡回を行うわ」
「勉強させていただきます~」
睡蓮ちゃんも姫華様に対して丁寧にお辞儀をし、私達は二手に分かれて巡回を始めた。
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