あれっ? なんであかね様が?
「何? 私がここにいると、なんか変なの?」
っと、題名からかなり失礼なことを行ってしまった私。でも第三実働部隊からいらっしゃると思ったら、まさか小百合様と一緒に風紀係のあかね様がいらっしゃるなんて……。
「ごめんねぇ~。一緒に行くはずだった子が急用で来れなくなっちゃってねぇ~」
「それで急遽、第三実働部隊だった私にお呼びがかかったのよ」
のほほぉ~んとしていらっしゃる小百合様と対照的に、腰に佩いた刀の柄に手を掛けて姿勢を正されているあかね様。
「ほんまに対照的なお二人なやぁ~」ひそひそ
「うんうん、対照的」ひそひそ
ひそひそ声で話し合う私と睡蓮ちゃん。
「それよりも、聖麗山にいる魔物の撃退を始めるわよっ! もし華蓮にまで魔物が来てしまったら大変じゃないっ!」
「はいっ!」
「はいぃ~‼」
「こら九条院さんっ‼ またその挨拶っ‼ もっとシャキッとしなさいって……」
「まぁまぁあかねちゃん。いいじゃないそのくらいはぁ~」
と、ここで小百合様がにっこりしながら話に割って入ってこられた。
「小百合様、我々雅華神社の巫女は倭国の民を守る為の存在。層であるからには普段からふるまいにも気を付けなければならないということを……」
「そろそろ行かないとぉ~大変なことになっちゃうってぇ~、あかねちゃん言ってたでしょぉ~」
「そ、それは……」
「それではぁ~しゅっぱ~つ!」
「って、小百合様ぁ~!」
っと、あかね様はさっさと出発されてしまった小百合様の後を急いで追いかけられた。
「って、こんなことしてる場合じゃないわっ! 私達も急ごうっ!」
「そうやなぁ~」
という訳で、私達もお二人に置いて行かれないように駆け足で後を追ったの。
⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶
聖麗山を上り始めてから一時間半。私達は山の中腹に到着していた。
「確か例の魔物は、ここからもう少し上で目撃されたって聞いたけど……」
「まだ邪悪な気配は感じないわねぇ~」
慎重に慎重を重ねるように周囲を見渡されているあかね様、対照的に小百合様はのほのんとされてて、危機感を抱いていらっしゃるようには全然見えなかった。
「小百合様っ‼ いい加減危機感を持ってくださいっ‼ もう敵は目と鼻の先にいるかも知れないんですよっ⁉」
「もうぅ~。あかねちゃんったらぁ~怖いわぁ~」
「なぁ~にが怖いわぁ~、ですよっ‼ ここへ来てそんな態度じゃ後輩達に示しがつかないじゃないですかぁ~」
「可愛い顔が台無しになっちゃってるわよぉ~」
「あなたが私をそうされてるんでしょうにぃ~‼」
……なんだかあかね様、小百合様の掌の上で踊らされてしまわれているように見える……。
「それにしてもぉ~、この山ってほんまに霊気を強く感じるなぁ~」
と、ここで睡蓮ちゃんが全く空気を読まない発言をした。でも確かに強い霊気を感じるわ。
「聖麗山が霊気の強く出る山、実際に来てみて、その話を実感できたでしょ?」
それまでプンプン怒っていらっしゃったあかね様が表情を改められ、私達にそう話しかけられた。
「これだけ強い霊気があると、霊力操作が難しゅうなってまいそうやぁ~」
そっか、九条院家に連なる睡蓮ちゃんは凄まじい量の霊気を取り込むことが出来てしまう。聖麗山だとその体質故に、むしろ霊気の扱いが難しくなっちゃうかもしれないんだ……。
「睡蓮は体質の影響でまだ霊力操作が難しいと聞いてるから、今回は実戦になっても武術で対抗してもらえればいいわ。無理に霊力操作をして身体に負担をかけたら大変だし」
「気を付けますぅ~」
「そ、そう……」
なんか歯切れが悪くなってるあかね様。多分、どうやってもブレない睡蓮ちゃんのこの態度の改善を諦めちゃったのかもしれない……。
「あらら?」
すると小百合様が、急に南西の方角に目を向けられた。
「ねぇ、あかねちゃん。例の魔物がこの近くに来たってのは知ってるんだけど、どの方角から来たってのは知ってる?」
「確か、ここから南西の方角です」
「やっぱり、道理でその方角からむわわぁ~っていうなんだか嫌ぁ~な感覚が襲って来る訳ねぇ」
そう言いながら小百合様は袖から浄化呪術用の印籠を取り出された。
「……はっ‼ 沙綾、睡蓮っ‼」
「はいっ‼」
「はぃ~?」
突然あかね様に声を掛けられ、立ち上がる私と睡蓮ちゃん。
「浄化呪術の準備をして」
「了解っ‼」
「おおきに」
私達も印籠を取り出して周囲の警戒を始めた。
「ありがとう、あかねちゃん」
「いいえ」
印籠を構えてらっしゃるあかね様に向かって穏やかな態度で接する小百合様だけど、まさか、敵を感じ取ったんじゃ……。
「気を付けてね、そろそろ来るわよぉ~」
穏やかな声で小百合様がそうおっしゃった、まさにその瞬間だったの……。
ガササッ‼
茂みの奥から、五体の狼のような姿の魔物が私達に襲い掛かって来たの。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます