私と睡蓮ちゃんって、対照的だなぁ~

 昼食を終えた私達の午後は空き時間となっている。その間、私達は部屋に戻って神社の書斎で借りてきた書籍をや教科書で、これまで雅華神社で学んだことの復習をすることにしたの。


「それにしても~。小百合様とあかね様って、全く正反対の雰囲気やったなぁ~」

「恋様と涼音様も対照的だったけど、あのお二人は文字通り、対極に位置してるって感じがあったわね」

「愛梨様と姫華様みたいな関係性もあれば、小百合様とあかね様みたいな関係もあるんやなぁ~」

「そう考えると、私達ってどうなんだろう……?」


 私と睡蓮ちゃんの関係性……あっ、結構対照的だわ。おっとりしていて大抵のことには動じない睡蓮ちゃんと、どんなことにも結構顔に出ちゃう私。


「今、うちと沙綾ちゃんって対照的って思ったやろ~」

「えっ‼ やっぱり顔に出てたっ⁉」

「はっきりとで取ったでぇ~」

「ううぅ~。やっぱり……でも、そう考えると、睡蓮ちゃんって動じないよね~」

「でも心の中では結構出とるんやでぇ~。雅華神社の巫女はんの個性豊かな人柄には、沙綾ちゃん波に戸惑ってるでぇ~」

「それでも表情には出さないところが大物よ。睡蓮ちゃんだったら、この神社一の巫女になれるんじゃないかな~って思う」

「うちはまだ自信ないんよ~」


 すると睡蓮ちゃんは教科書を畳みながら私を見つめた。


「まだまだ沙綾ちゃんみたいに、細かい霊力の扱いが出来てへんからなぁ」

「そう言われると、私は睡蓮ちゃんみたいに武芸の腕がまだまだ向上してないのよねぇ~」

「……やっぱりうちら、対照的やなぁ。得意不得意も」

「本当、対照的ね」


 そう言って微笑む私と睡蓮ちゃん。お互い色々と不安はあるけど、こうやってお互いに話せることをちゃんと話せるところは、多分一緒なのかなぁって思う。


「盛り上がってるみたいね~」


 すると綺麗な声と共に戸が開かれた。


「お疲れさまです、涼音様」

「お疲れさまですぅ~」

「うん、お疲れ様。急なことなんだけど、あなた達には明日、第三実働部隊と一緒に、聖麗山せいれいざんに行ってもらいことになったわ」

「聖麗山って、華蓮の霊峰の一つですなぁ~」


 聖麗山はここ倭国に二十七ある霊気の篭る山の一つで、華蓮の北部に位置しているわ。


「あなた達には今回、本格的な実戦経験を積んでもらいたいと思うの。ここにきて二ヶ月も経ったことだし、そろそろ経験させてもいいと思ってね」

「実戦経験って、何をするんですのぉ~」

「魔物の撃退よ」


 睡蓮ちゃんの質問に、涼音様はビシッと人差し指を突き立てて仰った。


「最近聖麗山に狂暴な魔物が出てきてるの。その撃退に、第三実働部隊と一緒に出てもらいたいの」

「第三実働部隊……」


 そこでふと、私の頭の中に、先程のおっとり巫女さんの姿が思い浮かんだ。


「それよりさっき、小百合ちゃんとあかねちゃんに会ったみたいね」

「えっ、どうしてそのことを?」

「さっき小百合ちゃんから聞いたのよ」


 そう仰りながら戸を閉め、その場に正座される涼音様。


「それでどうだった? あの二人は」

「そうですね~。小百合様はおっとりされていて、あかね様は風紀係と言うこともあってとってもしっかりされてらっしゃってましたね」

「でしょ? 本当に対照的な二人なのよね~。あの子達って」


 そうお話しされる涼音様は微笑んでいらっしゃった。


「何かあったんですかぁ~」


 と、ここで何か気になった様子の睡蓮ちゃんが尋ねて来た。


「いやね、去年のことを思い出しちゃってね」

「確かあかね様って、去年まで小百合様が率いる第三実働部隊に所属されてたんですよね?」

「ええ。その時から小百合ちゃんとあかねちゃんのやり取りはあんな感じよ」

「神主様から聞いてます……」

「あらそう」


 涼音様は微笑みながらそう仰った。


「でも、実戦でのあの二人の息はぴったりよ。あの対照的な二人の性格が、第三実働部隊の巫女達にいい影響を与えたの」

「そうなんですか……」


 でもそんな感じはある。おっとりしていて隙だらけに見える小百合様に対して、とてもしっかりしてらっしゃるあかね様が組まれたら、凄い力を発揮されるんだろうなぁって。


「明日の任務には小百合ちゃんも出るから、あの子の命令に従って動くようにしてね」

「了解ですっ‼」

「分かりましたぁ~」


 私と睡蓮ちゃんは敬礼して涼音様に応えた。


「じゃあ、集合場所は聖麗山の麓になるから、明日は頑張ってねっ!」


 涼音様はそう仰りながら部屋を出て行かれた。

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