霊力の修業でも変なことしないでくださいっ‼

 午後二時になり、私達は境内の一角にある修錬場に愛梨様と姫華様に呼び出され、霊力操作の応用と、浄化呪術の修業を行うことになった。


「さてさて、涼音様と恋様に変わって、私達がこれからあなた達の霊力操作の応用を教えてあげるわっ!」

「その次に浄化呪術を教えてあげるわ。最初は私達が手取り足取り、色々教えてあげるわよ」

「「はいっ!」」


 愛梨様と姫華様のお言葉に、私も睡蓮ちゃんも少し安心した。


「二人はもう知ってることだと思うけど、この装束がこんなに露出過多なのは、霊気の取り込みと霊力操作の効率化の為よ。そしてこの装束だからこそ、普通に行うだけでは難しい霊力操作も、ある程度簡単に行えるようになるわ」


 姫華様はそう仰りながら装束の裾を摘まんだ。確かにこの装束の凄さは、一ヶ月前の涼音様達との訓練の時に身をもって知ることが出来たわ。


「沙綾ちゃんは午前中に見たことがあると思うけど、私達がああいう盗人たちを捉える時によく使うのが、霊力で生成した目に見えない糸を使って相手を転ばせる。これは強度が普通の縄よりちょっと劣ってるから直接拘束することは出来ないけど、捉える為の時間を稼ぐことが出来るわ」

「これは繊細な霊力操作を鍛えることにも繋がるわ。そうすれば、複雑な霊力操作を必要とする呪術の扱いを行いやすくなれるから、覚えておいて損はないわ」


 愛梨様と姫華様の説明を、私も睡蓮ちゃんも熱心に聞き入っていた。


「私と姫華はもう糸を生成して五分くらいは持続させることが出来るけど、あなた達はまず十五秒持たせることから始めてみましょう」

「糸の作り方は、取り込んだ霊気を指先に集めて、細~く放出する感覚でやってみて。ちょっと大変だけど、頑張って」

「はいっ!」

「はい~」


 私は全身から霊気を取り込み始めた。相変わらずこの装束の取り込みは凄いわ。本当に見る見るうちに霊気が身体に取り込まれていくわ。


「集まった?」

「集まりましたっ!」

「うちも集まりましたわ~」


 姫華様の声掛けに同時に応える私と睡蓮ちゃん。


「じゃあ、細く人差し指から放出して、私と愛梨の緋袴の切れ込みから太ももをくすぐってみてっ!」

「え?」

「はい~?」


 ……姫華様、今、なんて仰りました? 


「もうっ、姫華ったら大胆なことを……❤」

「いいじゃない、この子達の成長にも繋がるんだから……」

「それはそうだけど……」

「そ・れ・に、この子達だっていろいろ見込みがあるわよ?」


 なになに? 姫華様も愛梨様も何を話し合ってらっしゃるの? それに見込みって何ですかっ⁉


「つまり、霊力操作で糸作って、それをちゃんと動かせるかって訓練をするって思ってもええんですか~?」

あるわ」


 首を傾げながら答えた尋ねた睡蓮ちゃんの質問に答えた姫華様。ちょっとまって下さいっ。ってどういうことですかっ⁉


「とにかく、やってみてやってみて❤」


 なんだか嫌な予感しかしないけど、こうなったらやってみるしかないっ‼


「睡蓮ちゃん、これは早速やってみるしかないわっ‼」

「そやなっ、じゃあ、いっせいのせいっ、でやってみようなぁ~」

「うんっ‼」

「「いっせいの……せいっ‼」」


 私と睡蓮ちゃんは同時に霊力を人差し指から糸のように放出し、姫華様と愛梨様の緋袴の切れ込みから露出している太ももを目指した。


「きゃ❤」

「あはっ❤」


 愛梨様と姫華様が同時に艶のある声を上げられた。太ももに届いたみたい


「このまま先端の方を動かして……」

「こちょこちょこちょ~」


 霊力の糸の先端部分の操作に集中し、細やかに動かしてみた。


「うっ、ふふふふっ❤」

「あっ、あっ、あっ❤」


 艶のあるお二人の声は、徐々に喘ぎ声へと変わっていったわ。


「あはは~。なんか楽しいわぁ~、それにお二人共可愛いわ~」


 睡蓮ちゃんは楽しそうだけど、これは可愛らしさって言うよりは大人の色気の方じゃないかなぁ? それも危ない方向の……。


 でも糸はそう長続きせず、放出してから十秒くらいで効果がなくなってしまったわ。


「あれ?」

「くすぐったいの、もう終わり?」


 愛梨様と姫華様は可愛らしく首を傾げて私達を見つめた。


「え、えぇっと……長時間放出し続けるのって、難しいですね……」

「うちもやぁ~。十秒くらい持たせるのが精いっぱいやったわ~」


 確かに、これを後五秒も持たせるのは大変。


「でも、初めてにしては上出来よ。特に睡蓮ちゃんは凄いわね」

「ほぇ?」


 突然愛梨様に褒められてぽか~んとする睡蓮ちゃん。


「恋様から聞いていたけど、九条院家特有の桁違いの霊気の取り込み体質は桁違いなのに、それに負けずに沙綾ちゃんと同じくらいの時間を維持するなんて」

「どんな感じだったの? 姫華」

「そうねぇ、柔らかぁ~くて優しい感じだったわ」

「じゃあ私の方は違うわねぇ~」

「愛梨の方はどうだったの?」

「沙綾ちゃんの糸はとってもしっかりしてて、くすぐり方もすっごくきめ細やか。繊細な制御が出来なければ難しいことをやっていたわ。ただ、ちょっと糸が細すぎかなぁ~」


 お互いの顔を見合って話される姫華様と愛梨様。霊力制御のことを話されているのは確かなんだけど、修行のやり方がやり方だから、傍から聞いたら誤解されそうな内容だわ……。


「基本的なことは十分よ。沙綾ちゃんは制御の方は凄いけど、あと少し霊力を溜めて太さと強度を調節しつつ、持続時間を延ばしてみてね」

「はいっ、愛梨様っ!」

「睡蓮ちゃんは、糸をもう少し細めて、制御の方を重点に置いてやってみてね」

「頑張りますぅ~。一日でも早く姫華様の域に到達してみますぅ~」


 愛梨様と姫華様の助言は的確だったわ。確かに、あと少し糸を太くすれば強度をより強めることが出来るわ。睡蓮ちゃんも、以前涼音様や恋様から指摘されたことになぞらえた助言をされていた。このわずかな時間だけで、的確に私達の霊力操作の問題点を見抜かれるなんて……。


「引き続き、二人にはこの霊力の糸の修業を続けてもらうわ」

「さぁて、次は浄化呪術の修業をするわよ」

「はいっ!」

「はい~」


 愛梨様と姫華様にそう言われ、私達は次の修業に移った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る