神主様ってすっごく綺麗だけど……
さてさて、戸惑ってばかりもいられない私達は、とにかく時間に余裕をもって本殿に辿り着けた。
「な、何か凄かったわね。さっきの……」
「うん、うちも流石にあそこまではいかへんわ~。皆綺麗な巫女さんやったし、ここって恋愛禁止やん。溜まるもんも溜まってまうんかもなぁ~」
「た、溜まるものって、なんなの?」
「うう~ん。性欲とか?」
こらこら睡蓮ちゃん、可愛い年頃の女の子が性欲なんて言葉を使っちゃいけません! って言うかこの子、見た目によらず結構いろんなこと知ってるのかなぁ……?
「あなた達が、今日からここに入社する新人の巫女ね」
すると右手の廊下から、凛としたちょっと低い女の人の声が私達を呼んだ。
振り向いてみると、肩まで届く青い髪の巫女が私達に向かってきた。
「私は
「は、はい。私は深山沙綾です」
「九条院睡蓮と申しますぅ~」
私と睡蓮ちゃんはお辞儀しながら涼音さんに自己紹介をした。
「九条院……あの財閥の御令嬢なのね」
「はいぃ~」
「そう、二人共初々しくて可愛いわね~。さっ、そろそろ式が始まるから、入っていてね」
「「はいっ!」」
笑顔で手を振る涼音さんを背に、私達は式が行われる大広間に向かった。
⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶
大広間には、既にたくさんの巫女さんが集まっていた。どの方も胸が大きかったりお腹がすべすべしてそうだし、緋袴の横の大胆な切れ込みから見える脚が綺麗だったり、何より容姿端麗な人が多い。
そして何より問題なのが……。
「ねぇねぇ、もうちょっと太もも、触ってもいい?」
「いいわよぉ~❤」
と、桃色の髪の巫女さんはそう言いながら、水色の髪の巫女さんの緋袴の切れ込みに手を突っ込んでまさぐってた。
「相変わらず細くてきれいなお腹ねぇ~❤」
「くすぐったいわぁ~❤」
別の巫女さんは隣の巫女さんのおへそ周りをナデナデしてた。そう、こんな厳かな式典が行われようとしてるのに、巫女さん達は隣同士で触り合いをしていたの。
私と睡蓮ちゃんは巫女の方々が正座して集合している場所から少し横に二人並んで正座し、神主様をお待ちしていた。
「な、なんか、雅華神社に持ってた印象と違う……」
「沙綾ちゃんもなん? うちもそう思っとったけど、堅苦しゅうないからええと思うでぇ~」
それはそうだけど、なんだかなぁ~。そんなことを思ってると、涼音様が巫女さん達の前にさっと歩いてこられた。
「それでは、まず最初に我が雅華神社の神主にして、倭国神社協会の会長。
司会を務められる涼音様が紹介すると、本殿の入り口から清楚で厳かな神主装束に身を包み、腰まで届く赤みがかった髪をお嬢様結びにした、白い肌の綺麗な女の人がいらっしゃった。
「あの方が今の雅華神社の神主様……」
「めっちゃ美人やなぁ……」
ひそひそ声で睡蓮ちゃんと私は神主様を見つめた。確かに神秘的かつ荘厳な雰囲気を醸し出されていて、お話に聞く以上に御立派なお方だなぁと思う私。
「それでは彩芽様、皆さんにご挨拶を」
涼音様がそう言って先輩の巫女達に挨拶をされて私達の隣に戻られると、神主様は広間の中央に立たれ……。
「皆さぁ~ん! 今日も元気で宜しいですね~!」
「「「「「はぁ~い‼」」」」」
……えっ?
「いいことですっ! さてさてっ、今日からこの雅華神社には新しい仲間が加わりますっ! 嬉しいでしょ~? いやっ、嬉しいに決まってるでしょっ!」
……えっと……どゆこと?
「なんや、印象と真逆やなぁ……」
睡蓮ちゃんも私の隣であっけにとられてた。そりゃそうだよね。だってその通りなんだもん。
「じゃあ早速、新しい仲間になった二人に自己紹介してもらっちゃおう‼ さぁ、こっちにいらしゃ~いっ!」
神主様、ぴょんぴょん飛び跳ねながら私達を手招きしてる。さっきまでの荘厳な印象は完全に吹き飛んじゃったよ……。
「と、とりあえず行こっか」
「そうやなぁ~」
私は戸惑いながらも立ち上がり、睡蓮ちゃんと一緒に先輩方の前に立った。
「えっと、深山沙綾と申します。今日からよろしくお願いします!」
「九条院睡蓮と申します。以後よろしゅうお願いします~」
そう言って私と睡蓮ちゃんは同時に皆さんに向かって深々とお辞儀をした。
「うう~ん。やっぱり入りたての女の子が恥じらいながらうちの巫女装束に身を包んでるのは見ものだねぇ~。いろんなとこがス~ス~したり見えまくったりしてこれはいろんなとこを触りまくり……」
「彩芽様っ! そろそろお時間ですっ!」
両手をワシワシさせながら迫る神主様を見かねてか、涼音様が私達に神速の如き脚力で駆け寄って制止なさった。なに? この光景……。
「それでは、彩芽様からの有り難いご挨拶と、新しい仲間達の自己紹介も終わったところで式を終了させていただきます。解散してください」
そう言いながら涼音様は神主様を外へ追い出し始めた
「……ねぇ、睡蓮ちゃん」
「なんやぁ~?」
「神主様ってすっごく美人だけど、変わった人だね……」
「そうやなぁ~」
戸惑ってばかりの私と、ニコニコ笑顔で涼音様に追い出される神主様を見つめる睡蓮ちゃん。流石は九条院財閥のお嬢様。ちょっとやそっとのことじゃ動じないわね……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます