村の巫女さん達、久しぶりっ!

この村にも巫女さん達がいるんだよっ!

 次に日、私と睡蓮ちゃんは午前七時に起きて朝食をとり、それから私の部屋で二人でゴロゴロしながら今日一日なにをしようか考えていたの。


「うう~ん、今日一日は何をして遊ぼうかなぁ~」

「一日丸ごと遊べるのって、今日ぐらいやからなぁ~」


 正直、今日一日は家でゴロゴロしたいって気持ちもあるけど、それだけでいいのかなぁ~という気持ちもちょっとある。一応、装束と武器は巫女として常日頃から持ち歩くようにってことで持ってきてはいるんだけど、実家にいるうちは修業や巫女としてのことを忘れて過ごしたい……。


 そんなことを考えてると、睡蓮ちゃんが思い出したようにこう切り出したの。


「そう言えばなんやけど、この与那真村よなまむらにも雅華神社の系列神社があるって聞いたことがあるんやけど……?」

「うん、与那真神社よなまじんじゃって言って、孤児院を兼ねている神社があるよ。確か巫女さんは神主さんを含めて百人ぐらいいるよ」

「孤児院かぁ……確か孤児院を持っとる神社って、確か倭国でも村とか小さな町とかにあるんよなぁ~」


 睡蓮ちゃんの言う通り、雅華神社では、親から虐待をされた子供や、災害などで身寄りを失った子供たちを保護し、十五歳まで教育し、それ以降を里親に預ける為の孤児院があるの。


 なんで孤児院が村や小さな町にあるのかって言うと、不届き者からの襲撃を避ける為と、危機というものを魔物や邪気からに限定して、子供たちの面倒を見る時間を増やす為なの。


「私が巫女になろうって思ったのも、この村の神社の巫女さん達に憧れたからなのよねぇ~。本当に皆立派で強くて、そして子供たちに優しくて……」

「そうなんやぁ~。ってことは、沙綾ちゃんもここの巫女さん達と知り合いなん?」

「うん、今も現役でやってる巫女さんもいるよ。お母さんとも仲がいい人もいるし」

「じゃあさぁ~。今日挨拶に行ってみぃひん?」


 そう言って起き上がった睡蓮ちゃん。そうだよね。ずっと憧れていた巫女になったことを、ここの神社の巫女さん達に報告がてら挨拶に行くのもいいかもしれないわね。


「よしっ、じゃあ今日は与那真神社に行ってみよっか! ここから歩いても一時間で行ける距離よ」

「巫女として神社に行くんやから、装束で行った方がええかなぁ?」

「私服で大丈夫だと思うよ。あくまで休日だし」

「分かったわぁ~」


 という訳で、私達は身支度を済ませて、与那真神社へ遊びに行くことになったわ。



⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶


 与那真神社は、私の家から南に徒歩で一時間で行ける場所なの。気持ち的には馬車か近くで馬を借りていくことも考えたんだけど、二人でお互いのことをしゃべりながら歩きたいってこともあって、歩いていくことにしたわ。


「もうすぐ与那真神社よ」

「なんやかんやでしゃべりに夢中になりながらやったから、案外早よぅ付いてもうたなぁ~」


 意外そうな表情でそう語る睡蓮ちゃんだけど、私もお母さんと一緒に神社に行くときは喋りながら歩いてたから、何も珍しいことじゃないの。


 そんな風に歩いていると、私達の目の前に、雅華神社系列の神社共通の超巨大な鳥居が目の前が見えて来たわ。鳥居の前で、雅華神社の特徴的な露出度過剰の装束に身を包んだ巫女さんが箒で神社の前の道を掃除してるわ。


「あら? あの子ってもしかして……?」


 すると巫女さんは私を見るや否や、近くまでサササッと近づいてきた。


「お久しぶりです、芽衣奈めいなさん」

「沙綾ちゃん? 久しぶりねぇ~!」


 駆け寄って私の肩を抱きながらそう言ってきたのは、私達親子を昔から知っている巫女の芽衣奈さんって巫女さんなの。


「聞いたわよ、雅華神社の巫女になったんですってねぇ~」

「はい、今日は夏休みで実家に帰省してたんですけど、ここに寄りたいって思ったの出来ちゃいました!」

「そうなの~。じゃあそっちの子はもしかして……」


 そう言いながら芽衣奈さんは睡蓮ちゃんの方を見た。


「初めましてぇ~、九条院睡蓮と申しますぅ~」

「初めまして、この与那真神社の巫女を務めてる、浅香芽衣奈と申します」


 そう言いながら睡蓮ちゃんと芽衣奈さんは互いに深々とお辞儀した。


「睡蓮ちゃんはあの九条院財閥の令嬢なの」

「そうなの~。沙綾ちゃんと仲がいいのねぇ~」


 芽衣奈さんはニコニコ嬉しそうに私と睡蓮ちゃんを交互に見てそう言った。


「沙綾ちゃんとは同じ部屋で暮らし取りますのぉ~。早ぅ一人前の巫女になるために頑張っとりますぅ~」

「巫女になりたてだといろいろと大変かもしれないけど、応援してるわ、頑張ってね」


 そう言って芽衣奈さんは私と睡蓮ちゃんの頭を優しく撫でてくれた。


「ここで立ち話もなんだから、神社の中に入りましょう」

「はいっ!」

「よろしゅうお願いしますぅ~」


 そう言いながら私と睡蓮ちゃんは、芽衣奈さんと一緒に与那真神社の中に入った。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る