こうやっていつも一緒に寝てるけど……

 大好きなお母さんの料理に舌鼓を打ち、それから部屋で楽しくおしゃべりをしていたら、あっという間に夜の十一時を過ぎていた。私と睡蓮ちゃんは食後に歯を磨いてから、一緒に私の部屋でお布団を敷いて寝ることになった。


「いつも雅華神社で一緒に寝とるけどぉ~。こうやってお友達の家で一緒に寝るっちゅうんのは初めてやなぁ~」

「そうなの?」

「うんうん、うちの実家ってめっちゃ厳しいんよ? だからお友達の家でのお泊りも禁止やってん。出来ても遊びに行くくらいやったわ~」

「本当に厳しんだねぇ~……」


 世界に名を轟かせる九条院財閥が厳しいって言うのは睡蓮茶の話から分かってはいたけど、子供への教育も厳しかったんだ……。


「そういうのを、窮屈って思ったことはなかったの?」

「ない訳やなかったけど、子供の頃から、大人になったり、家を継ぐ以外の道を見つけることが出来るんやったら、そん時は自己責任で好きにせいって言われたんよ。さっき言うた家訓を守れるんやったらって条件付きやけどね」

「そっか。今の財閥の会長さんって、睡蓮ちゃんのお母さんだったよね? 厳しいけど、その辺りは柔軟なんだね」

「まぁ、元々優しい人やし、会長になって厳しきなっただけやしなぁ。少なくとも、子供の未来まで縛るような人やないなぁ」


 しみじみと語る睡蓮ちゃん。話を聞く限りだとすっごい厳しいお母さんみたいだけど、子供に愛情をもって接している人なのかもって思えた。


「お母さんのこと、好き?」

「めっちゃ好きやでぇ~」


 ゆったりはんなりな声でニコニコしている睡蓮ちゃんを見て、本当にお母さんが好きなんだなぁっと思った私。家柄とかいろいろ違うところはあるけど、こういうところは私と一緒みたい。


「それにしてもぉ~、沙綾ちゃんのお母さんはめっちゃええ人やなぁ~」

「うん、すっごい明るくて優しい人だよ」

「こういう生活も羨ましいって思うわぁ~」

「そっか……」


 そこまで話していると、私はふとあることを思った。


「……ねぇ、睡蓮ちゃん」

「なんやぁ~?」

「今思ったんだけど、こうやって睡蓮ちゃんと身の上を話したのって、初めてだね」

「そうやなぁ~。神社に入ってから濃い人達に囲まれてきて、お互いのことより周りの巫女さんのこと達ばっかり話てもうたしなぁ~」


 そう、私達は雅華神社の寮「朱蓮」で同室なんだけど、一緒になってからお互いのことを深いとこまで話したことはなかったの。睡蓮ちゃんの言うように、恋様や姫華様を始めとした、濃すぎる先輩達に関するお話の方が盛り上がったからなの。だから、こういう風にお互いのことを深いとこまで話したのは初めてだったの。


「雅華神社の巫女になってから三ヶ月以上経つけど、色々あったから、あんまりお互いのことを話すことってなかったわね」

「それだけ雅華神社の生活が楽しかったって訳やなぁ~」

「そうだね」

「でもぉ~。こうやって沙綾ちゃんのことをもっとよく知れたのは、うちとしてはめっちゃ嬉しいわぁ~」

「そ、そう? でも私も、睡蓮ちゃんのことをいろいろ知ることが出来たのはすっごく嬉しかったよ」

「うちもやでぇ~!」


 そう言いながら睡蓮ちゃんは私にギュッと抱き着いてきた。


「睡蓮ちゃん……」

「なんだか、今まで以上に沙綾ちゃんとの距離がぐっと近くなった気がするわぁ~」

「……うん、私もそう思う」


 私もまた、睡蓮ちゃんを抱きしめ返す。


「これからももっともっと、お互いのことを知っていこうね」

「勿論やぁ~」


 それから私と睡蓮ちゃんは抱き合ったまま、お互いの体温を感じ合いながら眠りに着いたの。


 



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