だから私は、巫女になったのよ
芽衣奈さんと一緒に与那真神社に入った私と睡蓮ちゃんを、中にいる巫女さん達も温かく迎えてくださったわ。
「久しぶりね~沙綾ちゃん」
「久しぶりですっ!」
「元気そうで何よりだわぁ~」
「元気ですよっ!」
歩く度に私に声を掛けてくれる巫女さん達に、私は明るく言葉を返し続けたわ。
「沙綾ちゃん、めっちゃ人気者やんっ!」
「まぁ、昔から出入りしてたしね。ここの子供たちとはみんな顔見知りだよ」
「そうなんやぁ~」
ニコニコしながら睡蓮ちゃんはそう言った。
「芽衣奈様ぁ~!」
すると遠くから、六歳くらいの男の子が芽衣奈さんに抱き着いた。
「あらあら、どうしたの?」
「そっちに蹴鞠が飛んじゃったんですっ! 一緒に探してほしいのっ!」
「そうねぇ……」
そう呟きながら、芽衣奈さんは私達の方を振り向いた。
「私達は大丈夫ですよっ!この神社のことは私も知ってるのでっ!」
「案内するって言って手前、申し訳ないわねぇ~。分かったわ。
「どうしたの芽衣奈~」
すると賽銭箱の近くで掃除をしていた肩まで届く翡翠色の髪をした巫女さんが、私達の下へ駆けつけた。
「私、この子の蹴鞠を探しに一緒に行きたいから、沙綾ちゃん達のこと、お願いしてもらえるかしら?」
「分かったわ~」
そう言って幸子さんは案内役を引き継いでくださったわ。この人は芽衣奈さんの同期で、穏やかな母性溢れる巫女さんとして有名なの。
「久しぶりねぇ~、沙綾ちゃん」
「はい、幸子さんもお変わりなく」
「そう言ってもらえると嬉しいわぁ~。それで、そちらの可愛い女の子が……」
「初めましてぇ~。沙綾ちゃんと同じく、雅華神社の巫女になりました、九条院睡蓮と申しますぅ~」
そう言って睡蓮ちゃんも幸子さんに深々とお辞儀をした。
「九条院財閥から久しぶりに巫女になった子が出たって聞いたけど、本当に立派な子ねぇ~」
「おおきにですぅ~」
口元に手を当てて上品に謙遜する睡蓮ちゃん。こうやって見ると、本当に良家のお嬢様なんだなぁ~って言うのが分かるわ。
「じゃあ、芽衣奈に変わって、ここからは私が案内するわぁ~」
「お願いね、幸子。じゃあ、一緒に行きましょう」
「うんっ!」
涙目になりながら頷いた男の子と一緒に、芽衣奈さんは私達と別れ、幸子さんと一緒に境内を回って歩き始めたわ。
「それにしても、いい神社ですなぁ~」
睡蓮ちゃんはそう言いながら幸子さんに微笑んだ。
「そうですね。みんないい子達ですし、毎日が楽しいですわ」
幸子さんも睡蓮ちゃんに微笑みながらそう言葉を返したけど、こう続けたの。
「でも、みんな孤児だから、ここに来るまでは色々と大変だったのよ。心無い親からの虐待や、災害で身内をなくした子とか、そう言った子達を引き取って育てるのが、私達与那真神社の巫女の仕事なの」
そう言う幸子さんの表情は真剣そのもので、流石は雅華神社に連なる神社の巫女と思わせるものがあるわ。
「私ね、雅華神社の巫女になった理由って、この与那真神社の巫女さん達の影響を受けたからなの」
「そうなん?」
「うん。皆さんとっても優しいし、強い。子供の頃から見ていて、いつか私もそんな巫女さんになりたいって思ったの。そして、子供たちを守れる優しくて強い巫女を目標にしたの」
「子供たちを守れる巫女……」
そう呟いた睡蓮ちゃんの表情は、いつものはんなりした感じがないように見えたわ。
「うち、まだそこまで深く考えてへんかったわ……」
「えっ?」
そんなつぶやきを聞きながら、私達の神社の見学は続いたわ。
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