金髪の巫女さん襲来‼

 夕飯を取り終え、お風呂を済ました私達は、午後十時半に寝間着に着替えて寝る支度を整えていた。


「それにしても、この寮って凄いわね~。寮母様の料理はおいしいし、お風呂も快適だし、何より寮母様のあの包容力……お母様に包まれてるみたい……」

「うちも思ったなぁ~。めっちゃ癒されたわ~」


 睡蓮ちゃんの言う通り、寮母様の手料理は食堂の料理とはまた違った美味しさがあったし、お風呂も広くて使いやすかった。


「確か明日は、涼音様ともうお一方に、武芸と霊力の今の習熟度合いを見てくれるんだよね」

「そうやなぁ~。基本的なことは、巫女になることが決まってから通った神社でみっちに教わったけど、霊力操作はうちは苦手やったからなぁ~」


 睡蓮ちゃんはちょっと困り気味にそう言ったけど、謙遜だと思うなぁ。だって体力もあるし、呪術だって得意なはず。


「武芸の方はどうなの?」

「薙刀を選んだわぁ。そっちはちょっと自信あるねん。沙綾ちゃんは?」

「私は刀を選んだわ。霊力操作はそこそこだけど、武芸はまだ自信ないわね」

「じゃあ、うちと逆ってことになるなぁ」

「そうだね。でも、両方とも頑張らないとねっ。これから倭国を守る巫女になるんですもの」

「ふふっ、沙綾ちゃんって、ほんまに頑張り屋さんやなぁ」


 おっとりしながらも私に微笑んだ睡蓮ちゃん。出会った時から思ってたけど、やっぱり清楚で可愛い。


「そうと決まれば、そろそろうちらも寝て、英気を養わないとあかんなぁ~」

「そうね。じゃあ明かりを消すわね~」


 そう言いながら私は、枕元に灯っている蝋燭ろうそくを手で煽って消し、そのまま深い深い眠りについた。



⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶⊶


 翌日になり、私と睡蓮ちゃんは寮母様の作った朝食をとり、九時から呪術と武術の習熟度合いを見ていただく為に本殿に向かっていた。


「今回私達の習熟度合いを見てくださるのって、涼音様ともうお一人いらっしゃるって聞いてるけど、どんな人なのかなぁ~」

「うちも気になっとるねん。確か、薬師寺恋やくしじれん様、やったなぁ。涼音様とは同期で、第二実働隊長を務められとるって。気になるなぁ~」

「薬師寺恋様……どんな方なんだろう……?」


 私も睡蓮ちゃんも、まだ見ぬ先輩のことを想像して期待に胸を膨らませた。


「……あれ?」


 その瞬間、私は視線を感じた。


「どないしたん?」

「なんか、誰かに見られてるような……どこからかは分からないんだけど」

「んん~……気のせいやないん?」

「そうかな……確かに感じたんだけど……」


 辺りを見渡しても誰もいない。気のせいかなぁ~? と、思ったその時だった。


「みぃ~つけたぁ❤」


 私は背後から色っぽい声の人に抱き着かれた。


「えっ、えっ?」


 振り返ると、長い金髪をお団子にして、赤い櫛で留めた蒼い瞳の綺麗な巫女様が立っていたの。


「あ、あの……?」

「おっぱいが大きいわねぇ~」


 そう言いながら金髪の巫女様は、なんと私の胸を揉み始めた。


「きゃ……//////」

「ふふっ、いい声ねぇ~❤」


 すると巫女さんは右手を私のお腹に移し、ナデナデし始めた。


「おなかもスベスベ……❤」


 すると金髪の巫女さんはすっと私の前に回り込んでしゃがみこんだ。


「おっぱいにほくろがあるのね。とってもいやらしい……ちゅ❤」

「にゃっ⁉」


 そう言いながら私の胸の谷間にあるほくろに、巫女様は口づけをしたの。ってか、どういうことっ⁉ 


「沙綾ちゃん、えらいことになっとるなぁ~」

「あらら~?」


 突然のことでぼ~っとしている間に、睡蓮ちゃんの声が聞こえた途端、金髪の巫女さんは私から離れ、睡蓮ちゃんの前に跪いて抱き着いた。


「あなた、とっても清楚な雰囲気を出してるわね~❤」

「おおきに~」

「そんな女の子がこの神社の装束を纏うと……とっても背徳的だわ❤」


 そう言いながら巫女様は睡蓮ちゃんのお腹を触り始めた。


「あはははっ、こそばゆいですわ~」

「声も可愛いし、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでる。みかん色の髪の女の子の方もいいけど、あなたのお腹も中々に可愛いわね~❤」

「おおきに~」


 何で睡蓮ちゃん、こんな状況なのにはんなりしてられるの? でもこれまでのことを考えると、やっぱり大物だよ……。


「ちょ、ちょっと何のつもりですかっ⁉」

「何って、可愛い巫女と触れ合うのは、雅華神社では普通のことなのよ?」

「ふ、普通って……」


 それが普通って、この神社どうなってるのっ⁉


「太ももの方はどうなってるのかしら~❤」


 金髪の巫女様は睡蓮ちゃんの緋袴の横にがっつり開いている切れ目から丸出しの太ももを揉み始めた。


「ほんまにこそばゆいわ~!」

「ふふふっ、本当に反応が可愛いわ~❤」

「はわわわわわわ……」


 ひたすら睡蓮ちゃんの太ももを揉み続ける巫女様。そして特に嫌がるそぶりを見せない睡蓮ちゃん。睡蓮ちゃん、もし嫌なら嫌だって言えばいいのに‼ それとも嫌じゃないの? 睡蓮ちゃん、恐ろしい子っ!


「ちょ、ちょっと、いつまでやってるんですかぁ⁉」

「何を慌ててるの? この緋袴の切れ込みから手を入れ合うのも、ここの巫女達の挨拶みたいなものよ?」

「そんなこと知らないですよ~‼」


 全くこの人は何を考えてるんだか……。


「せ、先輩はん、随分と女の子が好きみたいやけど~、お名前伺ってもよろしゅうですか~?」

「あらあら、まだ名乗ってなかったわね~」


 すると金髪の巫女様はスクッと立ち上がって、自己紹介を始めようとした。


「私の名前はぁ……」


 ゴォ~ン!


 金髪の巫女様が名乗ろうとしたのと同時に、雅華神社の境内の鐘が、一時間の時を刻んだことを知らせる音を鳴らした。


「っと、私はそろそろ行くところがあるから、またねぇ~❤」


 巫女様は私達に手を振りながら、軽快な足取りで立ち去ってしまった。


「行っちゃった……」

「なぁ沙綾ちゃん、この鐘が鳴ったっちゅうことは、そろそろ涼音様のとこに行かなあかんとちゃうん?」

「そうだったっ‼ こうしちゃいられないわっ‼ 急ごっ‼」

「そやなぁ‼」


 こうして、私と睡蓮ちゃんは駆け足で本殿へと急いだ。

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