姫華様はほんまに愛梨様が好きなんやなぁ~
うちが沙綾ちゃんと別れて姫華様と巡回を始めて一時間が経ったんやけど、特に大きな事件などは起こることなく、とても平和な巡回となっているわ。
そんなこんなで、うちと姫華様は巡回している間、お互いのことについてお話をしておったの。
「九条院財閥に生まれて、色々大変だったのね?」
「そうなんですよ~。お母様は礼儀作法にはうるさくて、腹が立つことも何度もありましたわ~」
「でもそのおかげで、こんなきれいで立派なお嬢様になったんですもの」
「まぁ~。それはとても感謝しとります~。おかげで九条院家の娘として、よそ様に恥ずかしゅうと頃を見せることはなくなりました~」
姫華様とお話ししとると、なんや心が軽ぅくなってくる。沙綾ちゃんはうちのこと、動じない強い女の子って言ってくれるんやけど、本当はうちだって驚くことは多い。ただ表情に出にくいだけなんやけどなぁ~。
「それにしても、姫華様は愛梨様のことをが本当に好きなんですなぁ~」
「えっ? 分かる?」
「分かりますよぉ~。さっきのお二人のやり取りを見取れば、誰だってそう思いますぅ~」
「ふふっ、そうよ。だぁ~い好きよ❤」
ほっぺをめっちゃ赤くさせながらもじもじされる姫華様。こういうとこを見ると、ほんまに恋する乙女やなぁ。
「姫華様は、愛梨様とは同期なんですの~」
「そうよ。寮では同室だから、もう五年になるわね~」
「それで、姫華様は愛梨様のどんなとこが好きなんですのぉ~?」
「身体?」
あらら、めっちゃ直球。
「って言うのは冗談よ」
そうやろなぁ、安心したわぁ~。
「私ね、自分で言うのもなんだけど、ここに入った時はとっても要領が悪かったの。よく先輩からも怒られたわ~」
「そうなんですのぉ?」
「ええ。呪術も武芸も愛梨には全然かなわなくて、周りとよく比較されてたの」
「そないなことがあったんですなぁ~」
「でもね、そんな中でも愛梨は私と一緒に居てくれて、呪術の修業の時も、私が分からないことがあったら色々教えてくれたわ。おかげで技術は向上したし、武芸も愛梨の指導を受けて成長できたわ❤️」
「愛梨様が?」
「そう、自身のない私をいつも励ましてくれて、出来ることから少しずつ始めて行ければいいって言ってくれたの。比較してくる周囲の声が気になるなら、それを激励と思い込んで成長の糧にすればいいって」
確かに、さっき見ただけやけど、愛梨様なら言いそうって思ってまうわぁ。結構はきはきしてそうやったし。
「愛梨がいてくれたから、私は後ろ向きにならずに済んだの。愛梨がいつも私の隣で支えてくれたから、成長することも出来た。全て、あの子のお陰なの。そして気付いたらいつの間にか、あの子のことが誰よりも大好きになってたわ❤️」
「素敵な話ですなぁ~」
本間に立派なお方や。同じ寮で組む相方のことを、ここまで思いやれる方はそうはおらんと思う。
「……うちと沙綾ちゃんも、そんな関係になれるんやろうかぁ」
「えっ?」
「沙綾ちゃん、呪術の扱いがめっちゃうまくて、武芸だって改善しようとめっちゃ頑張っとる。うちは今も呪術の基礎的な操作方法を学んでばかり。あの子の相方なのに、こんな調子で大丈夫なのか、心配なんですぅ~」
姫華様のお話を聞いとったうちは、心に思うことを姫華様に始めとった。あいりさまとひめかさまのかんけいのことを聞いてて、相談しとぅなたのかも知れへん。
「……睡蓮ちゃんは、沙綾ちゃんに引け目を感じてるってことなのね?」
「はい……」
沙綾ちゃんは成長しとるのに、うちはおんなじ所で足踏みしとるだけ。このままで大丈夫な訳はないんやけど、成長せぇへんかったらどうしようって気持ちが、日を追うごとに大きくなっとった。
「うち、せっかく沙綾ちゃんと相方になったんやから、少しでも追いつけるように、んで、肩を並べて一緒に仕事できるようになりたいんです」
「なら、その気持ちを胸に、日々頑張ることよ」
「姫華様……」
「最後は自分の気持ち次第。自分を信じることが大事。それを忘れちゃダメよ」
自分を信じること……。それが大事……。
「って、これも愛梨の受け売りなんだけどねっ!」
「愛梨様の?」
「そうよ。それにあなたはまだ入社して一ヶ月よ。今からそんなに後ろ向きになってたら、それこそ沙綾ちゃんとの差が大きくなっちゃうばかりよ」
「……そう、ですなぁ」
先輩方の凄さを感じるうち。自分を信じ続けることの大切さ、愛梨様が姫華様にそう仰られたように、うちも自分を信じて頑張らなあかんなぁ。
「その為にも、この巡回の仕事を早く覚えることよ。雅華神社の巫女としての仕事をしっかりと覚えない限り、一人前の巫女になることは出来ないわ」
「はいぃ~。頑張りますぅ~」
姫華様と愛梨様の励ましのお言葉を胸に、うちはもっともっと頑張ろうって気持ちを持つことが出来た。待っててや沙綾ちゃん。うちも必ず沙綾ちゃんに追いつけるように頑張るわぁ。
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