第26話
「なんだいそれ!!」
「はっ!?」
それから思いっきり蹴飛ばしたサラが飛んで俺の横で倒れる。
「サラ大丈夫か!?」
「っ――」
苦しむサラを抱き抱え、見上げるジンは笑っている。
「ツルギ……、じかん」
「じかん?」
ツンツンと指先で弱々しく服を引かれ、そうサラは呟きながらジン見る。
「時間?」
「なんだ、ゴミのキサマと違って意外と優秀なガキじゃないか?その通り、オレは時間を止めている」
「時間だと……」
「そうだ、ミレアスフィール様に頂いた偉大な加護だ。キサマのようなゴミ風情には到底想像つかないだろうが、救世主の力とは絶対だ。それでキサマの力はどうだ?せいぜいゴミにふさわしいなんだろうな?」
「この……、ソードクリエイト――ティルフィング」
ジンに挑発されたことと、なによりサラがこうまでされたことに腹が立ち俺をティルフィングを抜いて立ち上がる。
神々しい黄金が宙を舞い俺を包むも、その黄金を突き抜けて――、
パリンッ!!
「なっ」
瞬間、ティルフィングの黄金に輝く刃は砕け散った。
そんなバカなことがありえるのか、という話だがそれがありえているのだ。
こぼれた刃は四散し消え去り、その本身もまた黄金が弾けて砕け散る。
「やっぱりゴミじゃないか。なんだそれは?子供のお遊びじゃないんだゴミはやはりさっさと潰して置くべきだ」
「ソードクリエイト――」
完全形成のティルフィングが砕け散ったのは、正直ありえないほどに信じられないことだが、そんなことを嘆いている場合ではない。
新たに剣をイメージして形成を始める。
その時だった
「テメェら!!ギルドの目の前で何やってんだ!!」
真横の建物の扉から大男が一人扉を勢いよく開けると、強く怒鳴りつけた声が街に響く。
「ギルドマスターか、チッ――命拾いしたな」
横目で大男を見ると、何かをしようとしていたジンが鼻を鳴らす。
「ジンさん!!」
「ああ――シャルロット嬢、王がお呼びでしたよ。早くダンジョンでの成果を報告しなくていいのですか?」
「え、ええ」
「大丈夫、アナタが売られてもオレが買い取りますので」
「……それは遠慮させていただきます」
「フッ、遠慮などなさっても、アナタに決定権はありませんよ」
呼び止めたシャルロットにそれだけ言って、ジンは立ち去っていった。
「あいつ……クソッ!!」
集めた力を霧散させ、俺は歯を食いしばった。
それから、サラ介抱してポーションを飲ませて傷をいやして立たせる。
「大丈夫か?」
「うん……」
「申し訳ありません、何もできずに」
「いや、ケガがなくてよかったよ。それで、あんたは?」
扉の前に上を組み偉そうに仁王立ちするハゲの大男。
なんというか恰好は世紀末見たいな感じで、裸にジャケットだ。
そんな、見た目怖そうなオッサンがニカッと笑って。
「シャルロットのお嬢ちゃん、すまねぇなジンが」
「いえ」
「相変かわらず手におえやしねえ。さっきだってウチの依頼を頼んだら、オレには相応しくないからって断られた。救世主様はどうしてこうも偉そうなのかねぇ」
「全ての方がそういう訳ではないでよ。ツルギさん、紹介します。この方がこのギルドをまとめるギルドマスターのガンツさんです」「おうよ!!剛腕のガンツってのはまさにオレ様のことよ!!」
「あ、ああ。ツルギだ。こっちはサラ」
「そうか、嬢ちゃん大丈夫か?」
そう言って一歩サラに踏みよると、サラは俺の後ろへと隠れ顔だけをのぞかせる。
「嫌われてるようですね」
言われて肩を降ろし落ち込むガンツ。
「兄ちゃんも救世主様なのか?どの女神様のだ?」
「えっと、剣の女神ティアラだ」
「ティアラ?知らねぇな、キツネにでも化かされたんじゃないか?」
「えぇ」
「ははっ、冗談だ。それで?ギルドに用か?」
「はい。この方がギルドで仕事を受けたいと。ダンジョンについての情報も知りたいそうです」
「そうか、なら兄ちゃんと嬢ちゃん、二人ともついてきな!!」
ギルドの扉を開け中へ入ってくるガンツ。
「それでは私はこの辺で、前日のダンジョンについて報告しないといけないですので。それとツルギさん」
「ん?」
「改めて、ありがとうございました」
そう言い丁寧に頭を下げるシャルロット。
「それはもういいって言ったろ?」
「はい。それと最後にお別れを」
「お別れ?」
「今回、私は部隊長として責務を立たせませんでした。おそらくは処罰されるでしょう」
「処罰って?」
「奴隷落ちでしょうね」
「は?」
どういうことだそれ?奴隷だと?
「当たり前の罰です。優秀な1っこ部隊の壊滅させえてしまったのです罪は重い」
「だから奴隷って……、逃げないのか?」
「私は騎士です、そんなことは致しません。最後まで責務を全うして私は私自身を貫きたいのです。ですから、改めてあなたに感謝を」
胸に片手を当て祈るように意を込めてされるお辞儀。
正直、奴隷という話を訊いてお辞儀などされても嬉しくも思わない。
「ああ」
「それでは、ツルギさんにあえて本当によかったです」
静かに立ち去っていくシャルロット。
その背中は堂々としたものだったが、何故だか寂しさを感じる。
それを見送る俺のコートを、サラがくいくいと引く。
「助けないの?」
バカ言え、相手は王国だ。
この国の規模は知らないが、シャルロットを助けるということは国にたてつくということだ。そうなればおそらく、あのジンというミレアスフィールの契約者も出てくる。
正直、悔しい話だが今の俺に奴をどうこうする方法が思いつかない。
それにティルフィングが砕かれた以上。現状、手はなかった。
形成しなおせばティルフィングがいくら砕けても問題はないが、結局時間が止められたら意味がない。
ただ――いや……まあいいか。
「さあな」
俺はサラを引き連れて、ギルドへと入って行った。
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