第43話
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「それで?どうしてこんなことになっているかを訊きたいのだが?」
夜も更けて宿のベットの上、仰向けに寝転ぶ俺は、俺の下半身に跨いで座るシャルロットへと問うた。
「なにもおかしなことはありませんツルギさん。いえ、ご主人様。どうか私の穢れた体にご慈悲を下さい」
そういう言うシャルロットは自身が着ているネグリジェを降ろし、胸をあらわにして俺の胸板に顔を埋める。
いや、だから。
城での一件のあと俺は正式に、シャルロットと奴隷契約をした。
それは所謂魔法で、俺とシャルロットの血を使い結びつける魔術的儀式だった。それで、これだ。
結果、ジンがしたように俺の命令は強制的にシャルロットに現状聞かせることができるようになっている。
……のだが。
奴隷に早速なったシャルロットは、お詫びとして俺に何か命令するように頼んできた。
正直、俺は別にいいと言ったがシャルロットがどうしても、というのだからついうかつな命令をしてしまった訳だ。
で、その命令は「好きにしろ」それが、どう解釈されたのかは知らないが、こうして俺は半裸というかもはや裸のシャルロットに馬乗りにされ、抱き着かれている訳だ。
ちなみに、サラは疲れたのか宿に着くなりすぐ横のソファーで寝てしまい、今は幸せそうな顔で寝息を立てている。
でた。
「好きになってと言われましたので……。そんな願いなどしなくとも私はアナタのことをもう愛しています」
「はあ?」
突然の告白に驚きを隠せない。
というか、好きにしろと言ったはずがいつの間にか、好きになれと訊き間違いか勘違いをされている。
「愛しています」
「冗談だよな?」
「いえ……。こんな事、冗談な訳ではありません。お慕いしております」
そう言って、俺の頬へ両手を伸ばし唇に自分の唇重ねるシャルロット。
それはすごく柔らかく、シャルロットからはいい匂いがして、
「ふあっ…」
さらにそこから舌を出し絡めてくる。
「んふっ、は……」
そうして離し俺を見る顔は誇らしげで、
「ご主人様」
瞳を薄くし笑顔を浮かべる。
ここまで抵抗しなかった俺も正直、嫌じゃなかった訳だからもう取り返しがつかない。
「後で、色々話を聞かせてもらうぞ?」
「はい。なんなりと……。ひゃああっ」
俺はシャルロットの体を抱きしめて、くるりと回転し上下を逆転させ彼女の唇に強引に唇を重ねた。
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それから、夜も更に老けて。
満足し寝入ったシャルロットを残して俺は宿を一人出た。
そうして、宿から少し離れた街の広間にて周りを見渡す。
街は何処にも明かりはなく、人の気配は一つもない。
まるで、自分だけがこの世界に取り残されたような気分だ。
そうして、俺は声を一つあげる。
「見ているんだろ?ミレアスフィール」
その問に、何かが答える。
目の前に蒸気がもくもくと集まり光輝き、人の姿を成してそれからそれが弾けると共に彼女は姿を現した。
蒼の髪に、夜の街に溶けるような漆黒のドレス衣装。
水の女神ミレアスフィールだ。
彼女は澄んだ瞳を俺へと向けて、無機質に問いかけ返してくる。
「なぁに」
その言葉は本当に中身がないように感じられた。
何も考えていない。まるで寝起きを起こされて寝ぼけているような。そんな空虚な感じを感じさる。
呆けているのか?まさかそんなことはない。
おそらくは、現状、契約者を失ったことによってその性格が薄れかかっているのだろう。もとよりミレアスフィールには性格など存在せず、今までは契約者であるジンの裏の顔を表していたようだった。
それはティアラの知識にあり、だからなのか?と自己解決へと疑問を持たせることが俺はできた。
とはいえ、それが本当なのかは定かではないが、どちらにしても、このままではミレアスフィール自体の存在はこの場において直ぐに消滅してしまう可能性がある。
彼女は、誰かを鏡にしないと存在できない女神なのだから。
ゆえに、俺がミレアスフィールを呼び出した理由は
「アンタと契約したい」
その答えにミレアスフィールは瞳を細め、俺を睨む。
「正気?」
「正気だ」
まあ、そう言うのも無理はない。
正直なところ、さっきのさっきまで俺を契約者に殺させようとしていた女神と契約なんて俺も契約なんてしたくはないし、和解なんてしたくもない。というかそれこそもってのほかだ。そもそも、俺がこの世界で困り果てる原因を作ったのは、このミレアスフィールなのだから。
それだけは許せないし、そんな理不尽認められない。
けれど、だ。
これが、彼女の願いだからこそそうしている。
彼女。そうだ、剣の女神ティアラ。
彼女から俺がすべての力を受ける前に、条件として飲んだことの一つ。
『水の女神、ミレアスフィールを解放してやって欲しいと』
契約して、女神としての機能を終えて欲しいと。
最初、言っていることの意味が分からなかったが、訊けばなるほと納得できるようなないようだった。
それは。
元素。7女神はこの世界を守護している。
それは古くも太古から、遠い遠い途方もない太古から続いていることで、俺なんかじゃ到底想像もかない昔からだ。
その彼女達は、いまこうしてダンジョンに世界が蝕まれ始めてから、この世界を守る為に一つあるモノを封印したらしい。
そして、それが再復活するまでの時間その鍵として守り続けていたという。
その話はティアラの口伝いで嘘かホントは分からない。受け取った力の中にその情報はどこにもなく。信憑性には正直なところかける。が、ジンの能力を打ち破る際、ミレアスフィールの剣をソードクリエイトした時に、ソレに関連する縁と所縁を見ることができた。
縁と所縁。それは、ミレアスフィールの剣を持ち奮い立った勇者――いいや魔王の姿でもあり。同時に、封印の際に残った敗残兵の姿でもあった。
彼は、最後の頼みの綱としてミレアスフィールと他の女神と共に封印したようだ。
ただ、その封印したものが何かは分からなかったが……。
そうして、残ったミレアスフィール達は今までこうして生きながらえることで守ってきたようだ、その封印を。
それで、ティアラはその封印を解きたいらしい。
というより、ミレアスフィール達女神にも限界を感じたのだ。
あの場で言った、『ここまで浸食が進んでいたなんて……』その一言はその通りだ。
女神たちもダンジョンの影響を受け始めている。
あれは、あのダンジョンは全ての人類を滅するという言わば法則だ。それがこうして世界を蝕んでいるということは、人間に対して祝福や加護を与える女神たちも蝕まれている。
だからこそこうして今回のようなことが起きた。
元々ミレアスフィールは、その存在の意味から人々から忌み嫌われた存在でもあった。
そこには怒りや悲しみ後悔など、恨みつらみという負の感情がなかった訳じゃない。その魂を模った剣が俺がソードクリエイトしたミレアスフィールの剣なわけで。
彼女自体の感情はあの剣のように冷徹に凍り付いている。
だからこそ、他の7女神よりも影響を受けやすくこうして無理に、大量の転移転生者を呼ぶという強行をしたし、ジンに他の守護者である俺を殺させようとしたのだった。
それは彼女自身分かっても居たのだろう。
自分は既にくるっている。そう思ったからこそ、転生者の中から不要な物を捨て可能性があるモノを駒としようとした訳だ。
まあ正直、それがジンじゃ本末転倒もいいとこだと思うが……。そこもくるって居たからこそなのかもしれない。
だから、ティアラは俺にミレアスフィールを救って欲しいと言った。
他のどの女神よりも、頑張りやでお人好しな女神を救って欲しいと。
ああ、もちろん。
俺はティアラとミレアスフィールの関係がどういったモノかは知らない。
ただ――そう語るティアラの表情から、なにか斬っては切れない関係だったということもうかがえた。
だから、俺はティアラを信じるし最後のその願いを聞き、ミレアスフィールと契約する。
そうして、封印したそれのカギを俺が受け継ぐことで、彼女は解放される。
「そう――ティアラがそう頼んだのね」
「ああ。アンタのカギは俺が預かる」
俺は迷いなく首を縦に振る。
それに、ミレアスフィールは瞳を閉じて。
少しの間、静けさの間が空く。
そうして――
「一つだけ訊かせてちょうだい。ティアラは最後に笑っていた?」
「あ?ああ」
思いもよらない質問に俺は戸惑いながらも頷いた。
「そう。なら、きっと帰ったのでしょうね、元の場所に」
「元の場所?」
「古い世迷言よ。いいわ。不良品のアナタと契約してあげる。とは言え、見守らせてもらう」
この期に及んでまだ上から目線なのかとツッコミたいが、まあいいだろう。
「見守らせてもらうって?」
「ええ。ワタシの神格は下がるからこの世界に居続けられる。あくまでもルールは女神の神格が長時間この下界に滞在できない。だから、ただの抜け道よ」
「それって……」
「ええ、だから――」
そう言った彼女は、俺の胸へと勢いよく飛び込んだ。
身長の低いミレアスフィールは丁度俺の胸ぐらいの高さで、俺の顔を見上げる。
そうして、無機質な顔からいたずらじみた顔で薄く薄い瞳に唇をにぃっと引いて、少し不気味に、
「これから一緒に居てあげる」
それはつまるところ、ミレアスフィールが俺に常に同行するという答えだった……。
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