第28話
◇
受付嬢がようやく落ち着いて。
因みに、ガンツは落ち着いたのを確認してやることがあるとギルドのカウンター裏へ行ってしまった。
「先ほどはたいへっ―――んっ失礼しましたっ!!また依頼について叱られると思ってつい……」
「いや、、いいよ。誤解も解けたみたいで」
「それで今日は、仕事受けたいということでギルドへの登録でしたね」
「ああ」
「あっと、申し遅れました。私はここで受付リーダーしていますシズネ・カリスタと申します。以後よろしくお願いします」
ペコリと頭を上げるシズネ。
というか、あのあわってぷりで受付リーダーなのか……。
大丈夫かこのギルド……。
「俺は新道ツルギ。でこっちが」
「サラ」
「新道ツルギ……。もしかして二ホンというとこからきたでしたか?」
「あっ……知ってるのか!?」
その言葉をこの世界できくとは思わなかった。
むしろ何故しっている?
「はい。同じように二ホンという場所出身の救世主様が、本ギルドにおりますので」
「ホントか?」
「はい。本日はお居りませんが、二ホンからきて聖典の女神サリエル様の救世主様である、ハナエ・アカリという方がいらっしゃいます」
「聖典の女神ね……」
「そういえば、ツルギさんとサラさんはどの女神様の救世主様なのでしょうか?」
「ああ、俺はその救世主とやらなんだけど、サラは違うんだ」
「そうなのですか?」
「まあ、いろいろあってな。で、俺だが剣の女神ティアラってしってる?」
「………」
シズネは考えふけ流れる沈黙。
「……申し訳ありません。存じておりません」
知らないか……。
ガンツじゃないが、本気で俺はキツネにでも化かされたのだろうか……。
マイナー女神と言えど、知られてないってもはや女神としてどうなんだ。神ならこう、信仰とかどうなっているんだ。
「まあいい。それで、登録だが?」
「はい。では――こちらの用紙に名前の記載をお願い致します」
そう言うと共に出てきたA4程度の二枚の用紙。どちらも同じで俺とサラの分のようだ。
色々と異国の文字か書かれていてるようだが、これは何のためにするのだろうか?
ティアラの碑石の時同様不思議と読めるが……。
注意事項?
貴方は当ギルドに置いてそのルールに準ずることを証明します……。
「ルールとは?」
「主に依頼を受けた際の報酬や、ギルドの人間同士の争いは控えるようお願いする内容です。こういう仕事ですと荒事が多いですので、そう言ったものを取り締まる為の物です。とは言えルールは強制できませんので、あくまでも注意事項です。このギルドで活動するのであれば守ってください程度です。もちろん守らない方には罰則の代わりにギルドからの除名や仕事を減らすなどペナルティがございます」
罰則はないが、ペナルティーはあるとはどういった言葉遊びなのだろうか……。
まあ、イメージとしては明確に何がダメとかはないが、ある程度ギルドに協力的になってくれってことなのだろう。書いてあることもまあ、俺の一般常識レベルの物だし。
取り合えず、詐欺はなさそうだ。
俺とサラはペンを取り、名前を書く。なお、俺は日本語で。
サラはこの世界の文字を知っているのかすらすらと書いていた。
「あの……、もしやと思ったのですが、ツルギさん文字はお書きになれない?」
手渡された用紙を見て、確認してくるシズネ。
「ああ。読めはするがこう書くとなるとな」
「承知しました。ではこちらで第執しますね。よろしいでしょうか?」
「そうしてくれ」
そう言うと、俺が書いた名前の下にササっとこの世界の言葉でシズネが書いていく。
書き終え。
今度は、カウンターの下からなにやら500円玉ほどの水晶玉とドックタグのような札が着いた首飾りが出てくる。
「それでは、この水晶に触れて下さい。こちらは本人確認用の水晶です。こちらの水晶と首飾りが証明のペアになります。水晶にツルギさんの魔力を記録として読み取り、首飾りに読み取らせた魔力と照らし合わせて同じかどうか見て、仕事を受ける際本人確認を致します」
指紋みたいなものか……。
言われて、俺とサラはそれぞれ個人別に出てきた水晶玉に手を触る。
しばらくすると―――水晶玉に変化が現れた。
「これは?」
俺が触った水晶玉は、中で無数の金粉がキラキラと泳いでおり、
それに引き換え、サラの水晶玉は黒煙のような物がうねっている。
「お二人とも面白い魔力の形をしていますね」
それぞれ水晶玉を返すと、それ手にシズネが検査するかのようにのぞき込んで言う。
「そうなのか?」
「ええ。大抵は色が変わったりするだけのなのですが、お二人とも形を持っている。ツルギさんはもしかしたら女神様の影響が出ているのかもしれませんね。それと――サラさんは……魔力が水晶に反発していて上手く浸透しないようです。もしかしたら特殊な魔力なのか、もしくは魔力自体に障害を抱えているのかもしれません。申し訳ありませんがサラさん。どこかお体で不自由な部位があったり、魔法を扱う際痛みなどありませんか?」
その問にサラは首を振る。
「ない」
「そうですか。では特殊な魔力なのかも知れませんね」
「なにか問題があるのか?」
「いえ、まれにこういう方もいるというだけです。珍しくはありませんし、本人に自覚症状がないのなら、気にななさらなくても大丈夫ですよ。
それでは、お二人ともギルドで仕事を受ける際にはこちらの飾りをつけてください。こちらがギルドでの冒険者証明となります。
色でギルドでのランクが分かります。
ランクは順に、
ブロンズ。シルバー。ゴールド。プラチナとあり、ランクが高い方ほど腕の立つ冒険者となり、より何度の高い依頼を受けることが可能になります。
この後、お二人の実力テストを行いますが、テストにも使いますのでまずブロンズの証明を差し上げます。
テストの結果によっては最初からシルバーになることも可能ですから頑張って下さいね」
説明され、そう笑顔をふられる。
「冒険者ねぇ」
そして、差し出される銅の首飾り。
それを、俺とサラは顔を合わせつける。
「似合ってない」
「お互い様だ」
お互いに首に着けた姿を見て、似合っていない。
サラの服はシャルロットが用意した、質のよさげな服だそこに地味な銅なんか付けちゃ合う訳がない。
俺は肩を竦めシズネを見る。
「お二人とも見た目、冒険者と言うよりは貴族の方ですので……。申し訳ありません…‥」
いや何も言っていないのだが……。
「それより、テストってのはどうなものなんだ?」
「それでしたら――」
その時、出て行っていたガンツが戻って来た。
「おうっ、どうだ?なんだ証明書似合ってんじゃねぇか」
一体どう見たら似合ってるんだ……。
そう思いながら、俺はガンツの首元を見る。
証明書の首飾りをしていない。
「ガンツ。アンタは首飾りしてなんだな」
「ああ、オレか?」
「ガンツさんは此処のギルドマスターですので。それに、緊急時の時以外依頼を受けることはないのですよ。因みにガンツさんはこう見えてゴールドランクの凄腕の冒険者で、お強いんですよ」
「ふーん」
いや、ちょっと待て。
「ギルマスが金って、じゃあプラチナの奴は居ないのか?」
「よわい?」
その問にガハハと笑い上げるガンツ。
「兄ちゃんに嬢ちゃん。なかなか厳しいなあ。プラチナってのはこの国を代表する冒険者でもなきゃナレネェよ。そうだな、今そのプラチナランクって言ったらジンぐらいだろうよ。まあ性格には困ったもんで手がつけられねぇが、実力はおそらくこの国随一だろうよ」
ジンが国最強……。
そんな相手に俺は目を着けられたのか。
あっちは俺の命を狙ってきている訳だが、これは本気でジンの時止めの対策を考えなければいけない感じがしてきたな。
少なくとも、次あった時にサラを守れるようにはしないと……。
「どうした兄ちゃん、黙りこんじまって」
「だいじょうぶ?」
「いや、ちょっとな。それよりテストって?」
心配したのか、見上げ俺の顔を覗くサラを安心させるべく撫でてやり、話を再開する。
「おうよ。テストって程じゃない、実力を測るだけだ」
「測るって?」
問う俺に、薄く笑い。
「フンっ!!オメェら!!今から生きの良い新人のテスト開始すっぞ!!いびりてぇ奴はついてきやがれぇ!!」
ギルド全体に響き割るように上げた声。
それにつられて――
『ウオオオオオオオオオオーー!!』
喝采の嵐だ。
ギルド内で、俺たちのことを見ていた奴だけにとどまらず、集会スペースで食事や話をしていた者たちも声援を上げている。
「なんだ」
「大丈夫ですよ。新人の方が来た時の儀式見たいなものですから」
「は、はあ」
でも今、新人いびりとか言ったよな……。
本当に大丈夫かよ……。
「オラ、兄ちゃんに嬢ちゃん。ついてきな」
言って、ギルドの奥の部屋へと続く扉を開けて行ってしまうガンツ。
「行ってらっしゃませ」
シズネには笑顔で送り出され、俺たちは半強制的にギルドの奥の部屋へと進んでいった。
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