第29話

 ギルドの奥へと案内された俺たちを待っていたのは、いわゆる訓練場という奴だった。

 建物を出た先は広く、小さな円形のコロシアムのような作りで、中心には舞台のように石でできた台があり、ソレを囲むようにして観客席がある。

 なんでギルドにこんなものがと訊けば、冒険者が日々鍛錬できるよう用意したものらしく、その言葉通り俺たちが入って来た時には何名か剣で手合わせしている者や的に向かって魔法を撃つ者が居た。

 

 ただ、今は彼らは訓練をやめ観客席に座り、広い舞台の上にガンツと俺サラの三人で立っていた。

 観客席は全ては埋まっていないものの柄の悪い冒険者らが、睨むようにして俺たちは見られている。

 

 俺ら今からどうなるんだろうか……。

 

「よぉし!!オメェラッ!!こいつをやりてぇ奴は居りて来い!!」

「オオオオオオオオオオッ!!」


 巻き上がる歓声、まるで今から試合でも始まるとでも言いそうな。

 それと共にザワザワとし始めて、何名もの冒険者が観客席から降りてくる。

 

 槍を持った男に、剣を持った男。ローブを着た女にその他もろもろ。悪そうな顔をしている者も居れば真面目そうな顔も、バラバラとした面子だ。

 そんな彼らが20人程が降りてきた。

 

「ルールを説明する。お互いに首にかけてる証明書を取り合ってもらう。奪われた時点でそいつは負け、速やかに下れ。もちろん、紐が切れたりしただけでもアウト。今回はオメェら二人とこいつらだ。せいぜい持ちこたえてくれよ」

「はっ!?ちょっと待てどういうことだ!?」


 連れてこられて突然そんなことを言われて、はいなんて言えない。

 相手は複数こっちは二人だ。いじめもいいところだぞ。

 

「心配すんなっ。オレたちも鬼じゃネェ。それなりにては抜いてくれるさ。それに、ここで強さを見せれば有名にもなれる。有名になれば他からも頼られていい仕事を受けることだってできるぞ?」

「いや、俺たちはいい仕事を受けたいわけじゃ……」


 ダンジョンを攻略するために、その情報を知りたいだけなのだが……。

 とんだ勘違いをされているみたいだ。

 

「うんうん、みんな最初はそういうんだ」

「お、おい」


 そう言われ、俺とサラは前に出されてガンツは観客席はへスタスタと下がって行ってしまう。

 

「マジかよ……」

「ツルギ」

「分かってる」


 目の前に集まる冒険者達。

 

「ボウズ少し遊んでやるよ」

「あらあらぁ、かわいい子」

「ケッ、救世主様ってのはなんでこうもガキばっかなんだ?」

「救世主様ならそれなりの実力なんだよな」


 各々が武器を持ちソレを構えてくる。

 彼らにとってこれは当たり前のことなのか、そこになんの躊躇もない。

 

 首のギルドの証明書を見る。

 ほぼ全員が銅。ブロンズだ。

 その中にシルバーが二人まじっている。

 

 片方は槍を持つ黒いスマートな鎧を着た青年。もう一人はローブを着た手には大きな星形を模った杖を持つ女性。

 

 これがテストというのなら、二人が試験官的なものなのだろう。

 なら他はおまけか?

 

 どの道、普通ならこんな人数に勝てる訳がないが……。

 小手調べだ。

 まずは首飾りを斬り落とすことだけを考えよう。

 

「死なない程度なら負傷はやむなしっ!!テメェら死力を尽くせ!!はじめっ!!」



『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』

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