第30話
始めの合図と共に巻き上がる歓声。同時、目の前の冒険者たちが動きだ――
タンッ!!
タンタンッ!!
「なっつ!?」
「はっ!?」
動き出す前に、先に動いたのはサラだった。
リズミカルな発砲音と共に、三人の冒険者の首元を弾丸が通過しその首飾りの紐を切り取った。
ただ――本来であればサラの持つライフル、SVDドラグノフの弾倉10発。早業とその正確さであれば三人と言わず、リロードまでの10人は奇襲で仕留めていたはずだ。
それが三人で止まった。
なぜか……。
それは、シルバーランクの魔法使いの冒険者が即座に防御系の魔法陣を展開して、全ての冒険者を守ったからだった。
あの程度の薄いシールドであればサラなら貫通せしめて見せそうだが、誤射し直接本人に当たるのを嫌ったのかそこでやめたようだ。
いや――そもそも、細い紐だけを打ち抜くなんてそんな神業をやり遂げてしまうだけですごいのだが……。
「クソガキめっ、奇妙な武器使いやがって!!」
「陣の中から出ないで!!飛んできます!!」
声を上げるブロンズの冒険者に、注意する素早く対応した防御陣を張ったシルバーの魔法使い。
怯んでいる。そう俺は確信して行動を起こす。
流石に全部サラだけに任せるのも尺だからな。
「サラ。背中は任せた」
「うん」
俺は走り出す。
「ソードクリエイト――日本刀」
走り出しながら形成するのは日本刀。
相手が複数だが、今は防御の魔法陣によって一か所に集まっている。
出ればサラの狙撃、彼らはいま動けない状態にある。
なら、一気に潰すなら今がチャンスだ。
とは言えここで大物を出したところでただの魔力の無駄づかいだ。
相手の力量が分からない以上、突撃して慌てふためいてるところをやったほうがいい。
それに――もしもの時は下がればサラがどうにかしてくれる。
「オラアアアッ!!」
「なにっ!?」
陣を抜け、その中へ突入すると共に襲い掛かってきてブロンズの冒険者の剣を斬り飛ばし、次々とその首飾りを斬っていく。
その数、1、2、3――
「やるなぁボウズッ!!」
「チッ――」
4人目の首飾りを斬り落とそうとした時だ、突然左下段から槍が俺の首目掛けてついてきた。
とっさにソレを首を逸らしてかわし、下がろうとするも
「逃がしゃしねぇよっ!!」
俺を追いかけるように槍が正面から迫る。
「くっ」
キィン!!
響く金属と金属のぶつかる音。日本刀によって反れた槍は俺の脇をギリギリかすめ、同時に俺は方陣の外へと飛び出た。
無論、そこでその槍は俺の追撃をやめていた。
俺は、追撃してきた槍を見据える。
目の前の槍。いや、槍を持った男。それはシルバーの証明書、二人のシルバーの内の槍を持っていた方だ。
「ボウズ面白い剣術使うな。救世主って聞くがそいつはどこかの流派か?」
槍を構え、陣の向こうで余裕約尺と言う男。
その男を前に、俺も日本刀を構え直す。
いや――日本刀はもういいか……。
正直、素でやりやったなら今のでやられていたかもしれない。
技量では明らかに向こうが上だ。
だてに冒険者してないってか?
だったらその経験の差は力で強引にでも埋めるしかない。
「生憎と、俺は剣道が下手くそだったみたいだからな。ゲームじゃ効率よく斬れるやり方を考えただけだ」
「は?」
「ただの我流だ。ソードクリエイト――ミスティルテイン」
形成するは亡霊の剣。
元はただの剣だったその剣は、多くの者が眠る墓に埋められ育った剣で、その剣は墓で眠り続けいくたもの亡霊の魂いを吸い上げ、その霊気に順応して剣自体が霊体と化した霊気の剣。
本来金属だったその身は霊気へと変換され、剣と事態の魂が霊体として形作れるほどに吸い取った霊気が合わさりあってできた本来は存在しない刀身となった。
ゆえに元来であれば霊にかその剣は握れず、生きた人間ではそれを振るうことは叶わない。
だが、それをツルギは握る。
霧漂わせるその片刃の剣を、ツルギはなんの苦もなく握っている。
それは、剣の女神との契約ゆえなのか、一度死んだ人間だからなのか、形成したツルギにも分からない。
だが言えることは、ツルギ自身は生きた人間であり、死人ではないということだ。
今も生きている。死者にしか握れぬ剣を、生者でありながら構える。
そしてその剣の有する能力は――
「消えた!?」
瞬間、ツルギは煙の如く消え、その姿を消失させる。
「いえ、居ますッ!!」
「チッ!!」
スッ――。
槍を持つ男の首を横から刈り取るように現れたツルギと刃、ソレをとこを寸前のところで避けると、再びツルギは霧と立ち消えてその姿を見せなくなる。
そして、
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