第31話


 

「ぐああっ!?」

「なッ!?」


 霧のような煙のツルギは、ブロンズの冒険者たちの間を縫うように抜けると、彼らの証明書は斬り落とされていた。

 そうして、再び姿を現した時にはシルバーの二人のみとなった。

 

「マジかよ、一人で全員やっちまうとはねぇ」

「いや、一人じゃないさ」


 そう、サラが居るからこそ今の芸当はて来たこと。

 もし魔法使いが陣を張ることに徹していなければ、俺はただ魔力を飛ばされるで弾かれていたのだから。

 

 これはそういう能力だ。

 自信に雲のような光を屈折させる魔力を張り巡らせて、まるであたかも煙のように見えているだけ。

 時を止めるという、ことをできないかイメージして形成した結果がこれだった。

 正直、形成に使用する魔力を抑えたというのもあるが、時間停止とは似ても似つかない能力の剣が生まれてしまった。

 

 まあ、止めるという点においては、光の屈折で自分の幻覚を作りだしその場にとどめることもできるのだから、ある意味時間停止ではあるが、俺の求めている結果ではなかった。

 

 ゆえにその方法はとらず、こうして幽霊のように斬り去った。

 ただし、魔力によってかき消される欠陥品ではあるが……。

 

 まあ、そこはサラと協力という意味では良しとしよう。

 

 

「で、どうする?正直、俺はやめたいんだけど……」

「ハッまさか――腕の立つ奴とやりやえる気かいなんてないからな、いっちょっ、楽しませてもらうぜえ!!」


 そう言って槍をクルクルと回転させt、構え直す男。

 

「クリスティル、方陣を解け。オレなら狙撃をかわせる。お前はジョウちゃんをやれ。オレは――このボウズと指しでやりてぇ」

「またワガママを……。いいわ、行きなさい!!」

「オウよ!!」


 消える防御陣。

 同時、槍を持つ男が飛び出し。

 パンッ――!!

 

 無論そのチャンをサラは見逃さなかったが、ソレはいとも簡単に避けられ俺へと男は突撃し槍を突き入れた。

 

「狙いが分かってんだから、避けるのは簡単ってな」


 タンッ、タンッ!!

 

 続く射撃もかわし、霧と消える俺を捕え槍が襲い掛かる。

 見えているのか……?

 

 キーンッ!!

 

 避け斬り入れた俺のミスティルテインが槍によって防がれる。

 

 タンッ!!

 

「アナタの相手はこっちよ!!」


 放った弾丸は魔法の風の刃によって弾かれあらぬ方向へ着弾し、素早くサラは魔法使いへ狙いを変更する。


「サラッ!?」

「そっちの心配してる場合かぁッ?」


 煙を突き抜ける槍、明らかにとらえられている事実で少し遅ければ間違いなく俺の胸を突き抜けていた。

 そう――少しおそければの話だが……。

 槍使いの男は確かに早い。

 魔法で身体の強化をしているのか、判断力やその反射神経。それらは並みの人間では到底ありえないもだった。

 接近戦に関しては間違いなく、シャルロットよりも早く、キレもある。

 だが――所詮はそれまでだ。

 奥の手はなさそうであり、なにより。|この程度(・・・・)の速度なら既に体験済みだ。

 

 それに、あの吸血鬼よりも遥かに遅い。

 

 サラに危害が加えらえるようなら手を抜く必要などない。

 ゆえに俺は加速する。というよりその存在をぼかす。

 ミスティルテインの能力は光を屈折させて幻を作り出すこと、であればこういった芸当も可能なのだ。

 

「なっ!?同時に4人」


 四方を囲むようにして現れた煙の俺に、驚く男、その首を狙ってミスティルテインが狙い撃つ。

 

「だったら、全員突けばいい!!」


 叫びの通り、肉眼では通常捕えられないよな槍捌きで、四人の俺は突き刺されるが――

 

「全部幻!?」


 瞬間、男の証明書は宙を舞った。

 

「自分の姿を消せるなら、見せる訳ないだろう」

「ハナから手加減されてたのか……。気に入らねボウズだな」


 気に入らなくて結構、そんな言葉など気にも留めずおれは魔法使いを止めるべく、その先を見る

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