第35話
一人ギルドを出た俺は、真っ暗になった夜の街を城に向かって走り、そうしてその城の入口へと来た。
とはいえ、入口といってもそこには見張りの兵が砦のような門の前で突っ立ていたためコソコソと建物の陰に隠れて見ている訳だが……。
どう中に潜入した者か……。
見張っているのは二人、こういう時こそミスティルテインを使うところだろう。
あれであれば、光を屈折させて姿を見られずに中に潜入できる。
「ソードクリエイト――ミスティルテイン」
俺はすかさずミスティルテインを形成して手に取る。
その時だ。
タァーンッ!!
遠くでやまびこのように響いたその音。そうして次の瞬間には、
「うがっ」
「うっ」
二人の見張りは何かに撃ち飛ばされ、その場に倒れていた。
「へ?」
突然のことに俺も動揺を隠せないが、その撃たれた軌道場を追ってみて見れば、街の外壁の上、街で一番高い場所かもしれないその位置で、キラリと一瞬だけ月光を反射し小さく輝く何か。
まさか……。
サラ?
あの距離を狙撃したのか。
距離は近くない。あそこからここまで1キロぐらいだろうか、それほどの距離がある。
風もそれなりに吹いている中で、ソレをやってのけるとは……。
ギルドでの証明書へのピンポイントショットもそうだが、サラの狙撃の技量(スキル)はそこがしれない。
どんな練習をしたらそこまでになるのか。はたまたなにか魔法でも使っているのか、分からないが……。
「後で怒られるな」
勝手に出て行ったこと。
おそらく、こうして狙撃をしてきたということは俺の目的も分かっているんだろうが、どの道あとで攻められる事には変わりない。
まあ、それはシャルロットを救出してからでいいか。
そう、シャルロットだ。
ダンジョンでの失態で奴隷にされると言っていた彼女。正直のところそんなこと俺にはどうでもいいのだが、俺が攻略したダンジョンのことでどうこうなるのは気分がわるい。というより、あれは俺が攻略したダンジョンであり、シャルロット達が攻略した訳じゃない。
取り合えず、人の手柄を勝手に横取りしようとしているシャルロットに文句を言ってやらないと。
だから俺はシャルロットに文句を言うべく、ミスティルテインで霧と姿を消し城へと占有する。
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