第16話
「おー。でかい……」
「そんなのんきなこと言ってる場合か!!」
振り上げられた杖。それを横払いされる前に、俺は巨大な彫刻を上げるサラを脇に抱え素早く入口の方へと一目散に走り後退する。
ドガアアアアアアアアン!!
振られた杖によって、部屋の地面と並ぶ牢と共に壁が消し飛ぶ。
「自由の女神が襲ってくるとか、非常識にもほどがある」
距離を置き、サラを降ろして俺はその彫刻を見上げる。
天井スレスレ。
周りにお構いなしな攻撃。
このまま放って置けば、間違いなくここは崩れ落ちるのは間違いはない。
なら、こいつをどうにかしなければいけない。
こいつに効く剣はなんだ?
再び振るわれる杖。
「チッ!!」
避け続ければ、この部屋の崩壊は免れない。であれば――
「ソードクリエイト!!――斬魔刀!!」
形成するは斬魔刀。岩と竜骨でできた剣で、芯は竜骨でその周りを超高度の岩が長い年月かけて塊ついた2mは超える大剣。
その剣はどんな岩よりも硬いがゆえに、斬れぬ岩石は存在しない。
岩砕きの大剣である。
であればこそ、振るわれる石の杖には劣ることはありえない。
巨体な剣と杖二つが衝突し合い。
ズガアアアン!!
勝したしたのは言うまでもなく斬魔刀。
石の杖は地や壁と破壊しながらそれは彫刻の手から外れ、先の道への扉横へブチ刺さる。
これで丸腰だ。なら――一気にここで足を狙い、体制を崩しその頭を狙う。
そう作戦立てたつかの間だ。
彫刻の両目が赤へと不気味に光輝いて。
同時、周囲にはいくつもの真っ赤な方陣が展開された。
魔法陣。おそらく方陣はそういった類のものであろう。だとしたなら。
そこから次に起こる嫌な既知感は的中し。
いくつもの炎弾が方陣に浮かび、射出した。
メテオのように襲い掛かる炎弾。食らえばもちろんこの辺り一帯と共に消し飛ぶだろう。
「これは流石に――間に合えよ!!ソー」
「大丈夫……」
「え?」
新たな剣を形成し、向かい討とうとした時だった。
背後からサラの声が聞こえると、それと共に
バンッ!!
バンッ!!
バンッ!!バンッ!!バンッ!!バンッ!!バンッ!!バンッ!!
いくつもの発火音と共に光がリズムよく瞬いて、何かが俺の周りを超高速で通過し襲い掛かる炎弾と激突した。
ドゴーーーーーン!!
炎弾は新星の爆発のごとく全て破裂し消し飛び消える。
拓けた視界。
けれど――今のは?
「サラ?」
疑問に思い振り返り後ろのサラを見れば、その手には銃が握られていた。
黒光りするメタルブラックのその身、拳銃ではなくスコープのついた長く両手持ちで、同時に数発もの球をリロードできるマガジン。
俺は、その銃を銃撃系のゲームで似たようなものがあった。
それは――SVDドラグノフ。セミオートマチックの狙撃銃でありファンタジーには似ても似つかない現代兵器だ。
だが、何故そんなものをサラが……。
それを今は考えている暇はない。というより――一体分かった。
方陣に炎がうねり、次弾が射出されようとしている。
「サラ、任せられるか?」
それに頷き、スコープを通しうねる炎に銃を向けるサラ。
それは、大丈夫。
ということなんだろう。
なら――今はこの子に背中を預けよう。
どういう訳か不思議と出てくる確かな信頼感。
けれども、今はそれでいい。
先ほどの炎弾を撃ち落とした事実もそうだが、なによりも――死ぬかもしれないという、危険と隣り合わせであっても一緒にたたかってくれるということが、嬉しかった。
だから――。
撃ち漏らすなよ。もう俺も死にかけるのはごめんだからな。
俺は勢いよく、斬魔刀を構えながら飛び出だす。
同時、放たれる炎弾。
そのことごとくは、ほぼ出現と共に去り裂けんばかりの爆音と共に爆発し消え去る。
それは、サラが一つ残らず撃ち落としているという意味であり、俺もそれに負けじと続いた。
「オオオオオオオオオッ――!!」
足元まで飛び込み、斬魔刀を彫刻の足に向かって振り払う。
ガキン――!!
一閃。
振り払った斬魔刀は見後にその巨大な足を切断する。そうして彫刻の足の片足が切断されると、当然――バランスなど取れる筈もなく、足の残った方へ衝撃と共に土煙を上げて倒れた。
それと共に方陣も消え砲撃も止む。
起き上がろうとしている?
彫刻が腕を突き体を起こそうとして、方陣が再び展開しだし炎弾がはじけ飛ぶ。
だが――無駄だ。
サラはその方陣を見逃したりなどしなかった。
だからこそ、俺は安心して彫刻の背に乗り頭部まで胴を伝い、
「っ――!!」
その首へ斬魔刀を叩き入れた。
ドーン!!
衝撃が再び部屋に轟き共にその首は粉砕される。
そうして――。
「死んだか」
彫刻は完全に動かなくなった。
「思ったよりもあっけなかったな……」
いや――サラが居たからか。
おそらくサラの支援がなければもう少し苦戦して、ティルウィングを出さざるおえない状況になってただろう。
正直、いつ銃なんて手にしたのか知らないが、戦力としては申し分なくて心強かった。
「そういえば、俺ゲームでPT組んだことなかったな……」
晩年ソロプレイヤー。PTプレイっていうのはこんな感じなのだろうか……。
どうだろ。ここはゲームなのではない。
それは自分の身で体験しただろう。である以上。
もはや、ゲームなんて腑抜けたものと一緒にできない。
気を抜けば、死ぬ。いくら力を持っていようと常に死と隣り合わせなのが今のなんだ。
そう少しそれを思うと怖くなるが、サラが居る以上それも不思議と紛れる。
ああ……。
一人じゃない。それだけでも心強いほかなかった。
「さて――よっと」
斬魔刀を露と消し、停止した彫刻の上から飛び降り近づいてきていたサラの前に着地する。
「ありがとう助かった。大丈夫か?」
「うん……。ケホッケホッ」
頷くも、まだ舞い残っている土煙で咳をサラはする。
ただまあ、大丈夫そうだった。
ライフルを胸に抱き、咳をする彼女を見て俺は判断した。
それにしても――、
「その銃は?」
「これ?」
視線で指したライフルを手でよく俺に見えるようにちょっと見せて訊かれ、今度は俺が頷く。
「出せた……」
「出せた?」
「うん……」
「じゃあ魔法か何かなのか?」
それにサラは首を左右に振った。
「愛銃」
「は?」
首を傾げる俺の目の前で、ライフルは光の粒子となって消え、それから、この度は胸の前で構えるようにするとライフルは消えた時はと、逆再生するかのようにサラの手元に現れた。
反射的に、俺はソードクリエイトと似ている。そう思った。
サラも女神に異世界から呼ばれた救世主ってやつなのか?
分からない。分からないが、
「取り合えず、ここに居るのは危険かもしれない。少し、歩きながら話そう」
提案する俺にサラは頷いて、俺たち二人は崩壊した扉を抜けていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます