第17話
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「で?結局その力はなんなのか分からないのか?」
「うん……」
俺たちは牢の大広間を出た後、綺麗に石レンガ作りで補整されたダンジョンの通路を進みながら話していた。
どうやらあの大広間以降先はまた別の階層扱いで、更に下へ行くとより一層上よりも美しく整った場所になっていた。
今こうして歩いている場所も、ダンジョンと言うよりはなんだか王宮の中を歩いている。そんな感じを思わされる。
「でも、使い方はわかる……」
そう言って胸いっぱいにライフルを抱きっ抱えサラは視線を落とし見る。
ここに来るまでに少しサラの経緯について話を訊いたが、どうやら、記憶喪失かもしれない。
かもしれない言うというのは、正直、サラの言葉は断片的でどうなのかは審議しづらい事にある。それに、話しているとついついサラは脱線してしまいがちで、どうにも掴めない子の為、俺は正直対応に困ったからでもある。
子供だからなのか、何かしらのここに来る前のことが原因なのか、若干コミュニケーションがうまくとれていない。
とはいえ、今現状訊いたことを繋ぎ合わせると。
おそらくサラは記憶喪失だという結論にたどり着く。
もちろん記憶を失った原因は分からない。そんなもの、そもそも記憶を失う前の話なのだが。
ただ、本当にサラは何も覚えていないと言うのだ。
ここの牢で閉じ込められていた理由。
目覚めた時にはそこに居て、何人か人がいたようだったがその人間は影に飲まれたという。
そうして、気づけは自分だけに、ずっと放置されていて衰弱しきっていたところを俺が発見した訳だった。
言葉には全て嘘はなさそうで、無理に思いださせるのは良くないと判断し俺はソレはやめた。
でまあ――話は戻るが、サラ自身も銃については良く分かっていないようだ。
もっと正確には、銃の扱い方とその銃がすごく大切な物だということは分かるらしい。
だからこうして今は抱くように大切に持っている訳で、試しに見せて欲しいと言ったら断られた。
「ちなみに、弾は?」
「弾?」
「その銃の」
俺に言われて、サラはライフルから手慣れた手つきでマガジンを抜き取り、更に弾薬を一つ取って俺へ渡す。
慣れ過ぎている。
その動きに寸分の迷いなどなく、プロの軍人のような手さばきで流れるような動きだった。
それに、こんな子が?などと思いながらも、差し出された弾を受け取った。
「砂?」
手渡された弾は細長いライフル弾。形自体は俺の知っているあっちの世界での現代兵器のものと変わりはない。
ただ違うのは、その構成。
別に、何か能力を使って見ている訳ではない、それに俺の能力は剣だけに限る。銃の弾なんて見たところでその理など見えやしない。ただ、あからさまに違うのだ。
その銃弾は確かに形は現代のものそれそのものだが、見た目は鉄ではない。もっと正確には、弾の形を模った砂の入ったガラスの小瓶とでも言えばいいだろうか?
先端とけつの部分には金の弾のような部分はあるが、その間はガラスのように透明、そしてその中に銀色の砂が半分ぐらい入って、傾ければキラキラ光の粒が混じって移動する。
何かの魔法の元なのか?
であればただの弾ではなくて魔法の弾になるが。
まあ――考えて見れば、あの炎弾を普通の弾丸一発でどうこうできるとは思えないしな。
「この白い砂は?」
弾の中の砂を見せ、サラに問うと。
「魔素の結晶……」
「魔素の結晶?」
「いろんな弾うてる」
「例えば?これだと」
問うと立ち止まり、外したマガジンをまた手慣れた手つきでハメ直し構え。
バーンッ!!
響く爆音と共に銃口が瞬いて、同時に目の前の壁が爆発して砕け散る。
炸裂弾?
だから、あのメテオ同然な炎弾を破壊で来たのか。
なるほど、能力は大体分かった。
俺は受け取った弾をサラに返す。
ただ、銃と言うのは弾薬が必要で、それは撃つたびに常に消費されるということだ。
ならそれは常に補充しなくてはならない訳で、それをサラはどうしているのだろうか?
「弾はどうしてるんだ?リロードするマガジンは?」
問う俺に首を傾げるサラ。それから。
「いっぱい出せる……」
そう言った彼女は左手の平を開けて上を向けると、その上に金の光が現れてそこからパラパラと大量の弾が降って来た。
どれも中の砂の色はバラバラで、一発一発弾の効果がことなるのだろうと予測はつく。
振ってくる弾はそのまま振り続け、サラの小さな手からは溢れ落ち地に山を作り始めた。
パラパラパラ―――。
出し過ぎだ。
「ストップ」
そのまま出し続けられていたら、この辺一帯が弾の海にでもなりかねなかったので、俺はそれ止める。
言われてようやくサラは止め。
「しまう?」
「ああ」
言われると、今度は地面が円状に金に輝いて、山になった弾は地へと沈んでいく。
「これは……」
消したというより、本当に言葉通りしまったような感じだ。
俺のソードクリエイトの形成とは違うのか分からない。なんというか、サラのは弾を創っているのではなく自分の必要な弾をどこから、出しているようだった。
光は収まり、山となっていた弾は全て地へと飲み込まれていて、後には元の床だけが残った。
「あと、マガジンは……」
そう言うと、今度は大量の同じマガジンが大量に降ってくる。
ドザーッ!!
もはやワザとやっているのだろうか……。
「だからストップ」
言われるとマガジンの山も地に飲み込まれていく。
なんだろうか……。
なんだかやるせない気持ちになりながらも、大体だがサラの能力は理解できた。
精度の高い射撃技術に、多種類の効果を持ち無尽蔵だと思われる弾薬。
妙に戦闘なれしている感じはあるが、これでもかと言うほどに心強い。
魔物は蔓延るダンジョンの中で、一緒居るにはこれほど頼れる存在はいないだろう。
それに、助けた以上守らなければいけない。
とはいえ……。
ただ守るだけでは荷が重すぎるというのも事実で、こうして戦うすべを持っていることに越したことはななかった。
「ありがとう。大体分かったよ」
「ん」
コクンと頷いて、ライフルをサラは消す。
それから、俺の裾を引っ張ったと思うと。
「なんだ?」
「ツルギ」
指を指した先。それは先ほどサラがライフルで試しに撃ちぬいた壁で、よく見て見ると部屋のよな場所へと空いているのが分かった。
「でかしたぞ」
そう言って、頭を撫でてやると気持ちそうにして微笑んでくれる。
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