第21話
形成するは雷撃を歩飛ばせる日本刀。
元は雷撃轟く戦場掛けた益荒男の手にあった物だ。雷鳴がなり響き荒れ狂う戦を掛けた彼が天に掲げたその日本刀は、天から雷の直撃と共に雷神の力を宿した。
それ以来、力を宿したその刀は雷撃を放つようになった。
雷撃は刀を通して所有者に通電し、所有者もその雷撃に撃たれ、握る真剣もろとも雷と化す。
そうして、所有者は一つの雷となり戦場を落雷の如く全てを焼き焦がすことになる。
その刀の名は――布都御魂剣(ふつみたまのつるぎ)。
刃側にその身を逸らせて、蒼雷をバリバチと纏う雷撃の刀。それを手に取るツルギに蒼雷は伝わり、全身を覆いツルギ自身が抜き身の刀身となる。
そうして――、
瞬間、ツルギは弾けて疾走した。
それは落雷の如く、耳さかんばかりの轟音と共に一のカミナリとなって。
目の前の吸血鬼の男に一閃。
走ったカミナリは男を貫通しその背後に着地する。
無論、言うまでもなくその一撃に吸血鬼の男は大きな負傷を追うはず、だった……。
「あああああああぁぁぁぁッ!!なんだぁ!!なんだ?なんだなんだなんだァアアアア!?テメェさいこうだアアアアアァ!!ああ腕が……。いや、そんなことどうでもいい?なんだそりゃ?雷にでもなったつもりか?けどダメだァ、そんなんじゃオメェまさか腕一本で勝ったつもりじゃねぇだろうなぁ?ハァン!?」
いや、負ってはいるのだ。先の一閃で男の左ひじから下は切断され、その腕は灰と黒く焦げ消え去っている。
けれども、それには一切動じていない。
いや、むしろそれどころか男にとってはそれが楽しいのか、軽快な笑みを浮かべて歓喜している。
「オラオラ?コネェのかァ?じゃあこっちからァッ!!」
飛び出す男。その動きは高速で通常ならば目でとらえるのはほぼ不可能だろう。
それでも――だからどうしたというのか。
ツルギは一つ息を吐き出して集中し、手にしている布都御魂剣(ふつみたまのつるぎ)を構え同時、超高速で落雷した。
ドゴーンッ!!
高速と高速のぶつかり合い、ソレは何度も続くようなものでもなくただ一閃のぶつかり合いで勝敗が決する。
では――勝利したのは。
パチパチと弾ける雷撃をその身に纏わせながら、ツルギは振り切った布都御魂剣(ふつみたまのつるぎ)を露と消し、それと共に、背後に立つ吸血鬼の男は蒼雷を放電し雷に燃えて灰と化した。
ツルギの身を包む雷撃は放電し消える。
「伝説級の宝刀だ。いくら吸血鬼でも雷に撃たれて死なないハズがない」
と言うより、これで死ななきゃ――ああ、死んでないな……。
燃え尽き灰となり、四散したその灰が男が居た場所に集まり出してつむじとうねる。
「だーかーらー、そんなんじゃ死なないってぇの!!」
同時、集まる灰から声が聞こえた。
再生している。とでも言おうか。集まりつむじとなる灰は次第にその密度を増していく。
コイツ相手に長期戦はおそらく愚策だ、再生するのならいくら攻撃したところでいつかはこちらが消耗してやられてしまう。
ならば一撃の超火力を与えて灰も残さない程に消滅させるしかない。
なら方法としては今の俺では一つだろう。
「ソードクリエイト――ティルフィング」
黄金に輝く聖剣を抜く。
同時に迸るりツルギの周りを埋め尽くす輝き。
黄金の粒子は浮上しその鱗粉を散らして輝き放つ。
高まる黄金律とその神聖、それを振り払うようにしてティルフィングを引き、そして――
「ティルフィング!!」
横に勢いよく振り払うと同時、ツルギの纏っていた黄金は津波となって集まる灰を飲み込んだ。
公然と輝くその黄金は、大きく広い部屋の大半を覆い同時に眩いばかりに輝き放って視界を覆う。
そうして――それが止むと。
後には何も残らない。
「さて……っと……」
今度こそ、吸血鬼が完全に消失したのを見かね、ティルフィングを手から離すと同時くらっと目まいがしてふらつく。
これが魔力切れか……。
流石に完全形成の神話級の宝剣に聖剣の連続は魔力を大きく消耗したのか、疲労感と共に身体への影響を始めて感じ力の代償を思い知る。
とは言え、この程度で済むのなら上出来だ。
やはり、こと物を斬るとういことに関しては剣は向いている。
そう思うとともに、間違っても人を蘇らせようなんてことはできればしないことだと改めて思う。あれは俺の手には余ることだから。
ただ――さっきは気絶しただけだと思ったが、これでシャルロットが死にかけてたら本気でどうしようか……。
もう魔力も体力もほぼない。
サラの時みたいにはいかないだろう……が、その心配も無用だった。
「ツルギ」
「ああ、取り合えず一安心だな」
シャルロットの傷はいつの間にかサラがポーションを出し飲ませ癒えていた。今は静かに寝息を立てて眠っている。
ではあるのだが、
「そうじゃない」
「ん?」
「うえ……」
「うえ?」
サラの指摘はサラではなかった。
見上げ言われた天井を俺はつられて見上げる。
「なにもないが?」
「くる」
「くる?まさかまたあの自由の女神か?」
「ちがう……」
違う、そう訊き返そうとした時だ。
揺れる。
揺れる。
部屋の中央に吊ってある巨大なシャンデリアが振り子のように動き出し、その動きは強くなり……。
いや――そもそもこの部屋自体が大きく振動して、
ゴゴゴゴゴゴゴッ!!
「――地震!?」
小さな横揺れは大きな縦揺れと変わり、途端、
ガッシャーンッ!!
シャンデリアは落ち、ピキピキと天井にはヒビが亀裂となって入り始める。
「おいおい、なんとなく想像はしていたけどマジかよ!!」
「にげる?」
「逃げるってどこに!?」
「さあ……」
そこで首を傾げないでくれ……。
逃げるための道なんかないだろうに……。
それでも、考えろ逃げる方法を。
………。
いや待て、シャルロット達が通ったていう道は?
って、ダメだ……。そもそもその道を知ってるシャルロットは気絶している。
「ツルギ」
「知ってる!!」
揺れは収まらず、入った亀裂は大きくなりついには崩落を始める。
まずは部屋の外側入口、柱が崩れ逃げ道はふさがれる。
もう考えている時間もない、頭の上の天井はいつ降ってくるか分からないのだから。
「仕方がない。サラ、ライフルで天井は破壊できるか?」
「ん?」
首を傾げながらライフルその両手に取り出し、構え銃口を天井へ向ける。
「いけそうだな。天井が降ってきたら大きな岩を吹き飛ばせ。細かいのは俺がやる、降ってくる天井全部消し飛ばすぞ!!」
「分かった」
瞬間、
「来た!!」
声と同時俺の隣で破裂する火薬。
ライフル弾の薬莢が宙を舞い、降って来た天井を破片を打ち抜いて
ドーン!!
落石は粉みじんとなって吹き飛ぶ。
同時に部屋はその爆風で本格的な崩落を始めた。
「ソードクリエイト――ブレイドレインッ!!」
大きな落石はサラが炸裂弾で排除し、細かな物は俺が魔法状態の剣を撃ちだし排除する。
これを続け、上手く逃れようとする。
「オラアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
全身全霊、カラッけつの魔力だがその微々たる残りの魔力を全てを注ぐぎ撃ち放つ。
どうせここで潰れれば死ぬ運命なのだから、出し惜しみなどしない。
本当に底の底まで魔力が尽きるまで俺は撃ち放ち続ける。
無論、その横でサラも必死に弾を切らしては見事な早業で弾倉を投げ捨てリロードを繰り返している。
地下何十回かは分からないそこで、俺たちは崩落に耐え続けた。
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