ソードクリエイト 魔剣と聖剣であらゆるダンジョンを完全攻略しつくす!!

テケ

第1話

「ここは、どこだ……?」


 ツルギが目を覚ますと、そこは広い神殿のような場所だった。

 白と灰のモノクロ模様の大理石の床、真っ白な天井に部屋の中央には白い長方形碑石が置いてある。神秘的。なんてのは、こう言う場所のことを言うのだろう。

 そこで、俺は突っ立ていた。

 


「俺、さっきまでゲームしてたよな……」



 VRゲーム『ブレイブ・オブ・ソードワールド』剣と魔法の世界で俺は剣士をして、ダンジョン攻略をしていた。

 中学から高校、剣道部に入っていた俺だけども、どちらもレギュラーになれなかった。そんな俺でも一流の剣士になれたのがブレイブ・オブ・ソードワールドの世界だった。

 現実のただの御前試合、そんな形とは違う。たとえゲームであっても死との隣合わせのスリルある戦いこそが俺の居場所だった。

 そこで、俺はトップを争うランカーで、さきっまでそのイベントの真っ最中だったはずなのに……。

 

 

 ここは一体どこだろうか。

 

 

「ここは神の領域。世界と世界の間です」

「世界と世界の間?」



 疑問に答えたのは背後聞こえた、少し高い女性の声だった。

 振り向くと、そいつはそこに居た。

 

 真っ黒なふわりとした、フリルトレースで着飾ったゴスロリなドレスと、

 腰下まである蒼の髪を宙に揺らめかせ、蒼の鋭い虚空の瞳で俺を睨んで彼女は浮遊していた。



「そう。ようこそ神の領域へ。そして、さようなら」

「は?何言ってるんだ」



 いきなりさようならなんて、意味が分からない。

 

 

「意味など分からなくていい。アナタのせいで溜めた力も無駄になったわ。まったく、アナタを異世界からここへ転移させるのに、どれほどの力が必要だったというのか……。能力もなければ能力値も普通と少し高いだけ。つかえない……。使えないわ……」



 一体なんのことなのか分からないが、酷い言われようだ。

 それになんだ?異世界?転移?能力って……。そもそもこれは現実なのか?ゲームの演出の一つなのだろうか……。

 

 

「イベントの催しもの?」

「はっ、つまらぬことを考えるな。現実だ。このワタシ、水の女神――ミレアスフィールが召喚した。そこの結果がお前。何の力も持たない平凡な、お前はいらない。お前のようななんの力を持たないやつなんて。次を召喚しなくては……。時間の無駄だった……」



 様子がおかしい。というかなんというか、まるで俺のことなんて見えていないような。会話しているようで、独り言を言っているようだ。

 けれど、俺に用がないなら戻して欲しい。

 

 仮にこれが現実だとして、何かの間違えで異世界に飛ばされたのなら元の世界にへと。

 俺はイベントの真っ最中だ。こんなことにカマッている暇はない。

 

 

「なら、早く戻してくれ」



 だから、そう請求した。

 けれども。

 

 

「無理よ。つなげる道はあちらからこちらまでの道だけ。戻せやしない」


 なんだって……。


「じゃあ俺は……」

「言ったでしょう?いらない、と……。あー、時間の無駄だった。こんなことに力を使わさせるなんて……。さようなら」

「何言って……」



 人のことを勝手に使えないとか無駄だとか言って。こんなのか女神様?ふざけるなよ。

 自分の都合で読んでおいて……。

 

 そう、反発しそうになった時だった。

 強制的に光が俺を包んだ。

 視界は真っ白になり、音も遮断され、俺の意識はゆっくりと遠のいた。

 

 

 クソ――勝手な事ばっかしやがって……。

 

 遠のく意識の中、俺はこの女神を見返したいと思った。

 

 

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