第6話

 数分歩き、森を抜けると崖だった。

 幸い、森の中では魔物などの獰猛な生物とは会わず、難なく抜けることができた。

 とはいえ、目の前は崖で森から先は緑の無い岩場が広がっていた。

 崖自体もそこまで高くはないが……。

 

 下を除きこむと、そこには飛行する何かが群れを成していた。

 トカゲのような、大人の人間二人ぐらい大きさの生物。灰色の皮の羽を広げて数十匹の群れを作り何かに集っていた。

 

 あれは……ドラゴン?恐竜?ジュラシックパークじゃないんだからと内心突っ込みながらも、そのドラゴン達が集っている物を見た。

 人が襲われてるのか……?

 

 銀のプレートメールを着た一国の兵士みたいな者たちが、何十匹もいるドラゴン達に囲まれて襲われて剣と盾で迎撃していた。

 その中で、ひと際目立つ人が一人。

 

 

「なにしているの!!陣形を崩さないで下さい!」



 遠めでは視認しずらいが、金髪の腰ほどまでの三つ編み。他の兵士とは異なる軽装――ドレスのような鎧を着た騎士みたいで、16歳ほどの女性が細剣を片手に、兵士を指揮していた。

 

 陣形は整っている、けどあれでは……。

 兵士の数名がドラゴンの足に捕まれ持ち上げられる。

 

 あのまま巣に連れ去ろうとしているのか……。

 

 

「仕方ない……」



 大体分かった。面倒だが助けるか……。

 

 ここでの動きはVRゲームと変わらないなら、この程度の高さ雑作もない。

 こういうショートカットはよくやっていた。

 俺は崖を滑り降り、急速に落下。

 

 片手に剣を形成する。

 形成するのはティルウィングのような聖剣ではない。

 ただの剣、構成は少量の鉄、玉鋼。芯には高純度の地鉄を使用し、その外側に行くにつれて純度の低いものを。

 イメージしたのは日本刀。

 その構造が俺の頭の中に知識として広がり形成される。

 

 

「ソードクリエイト――日本刀」



 やはり――剣と自信が認識してイメージしたものならば形成可能なのだろう。なにも聖剣や魔剣を作るだけがこの能力じゃないようだ。


 俺は右手に現れた"真剣"を手に崖を飛び跳ねて下る。

 そうして、飛び出た崖の岩肌を強く蹴り、兵士を掴むドラゴンの背へと飛び乗った。

 それからそのまま日本刀をドラゴンの背に突き刺すと、ドラゴンは暴れ

 


「おっと」



 不安定になり、ドランゴンが墜落する前に別のドラゴンの背へと乗り換え、同じように繰り返えす。

 それを三匹ほど、宙にはまだ数十匹ほど漂っているが、飛び乗るドラゴンを失い俺は兵士達が集う地面へと着地した。

 

 

「よう」

「あなたは!?」

「ただの剣士だ」



 駆け寄ってきたのは、目立っていた女騎士だった。遠目では分からなかったけれども、すごく綺麗美人だ。

 金の長い三つ編みに、パッチリと大きな金の瞳。幼さがあるが顔立ちは騎士そしては鋭く、高貴な人物だというのは目に見えて分かる。着ている鎧も高貴かつ美しい。銀の軽装な鎧は光を照らし、スカート型になっているそれはドレスのようにヒラヒラとした気品のある甲冑だった。

 

 

「話は後で、今はこいつらどうにかしないと。アンタら遠距離攻撃できないのか?」



 駆け寄ってきた女騎士に言いながら、俺は背合わせするようにして頭上のドラゴンを見上げる。

 


「私が多少魔法を扱えるだけです、他の者は兵士ですので扱える者はいません。恥ずかしながら、私たちはガブラの群れに襲われることは予測できていませんでしたので……、魔導士は一人も……」

「なるほど、大体分かった」



 つまりは、こいつらじゃ無理だったことだ。

 とはいえ――俺ならどうだって話だが……。

 俺も剣士であって魔導士や弓兵ではない。遠距離の敵相手では相性はあまりよくはない。

 ならばどうするか?

 ティルウィングを出して力を放つか?ダメだ。放射型方のあれでは撃ち残しが出てしまう場合がある。

 それに、一発であの疲労感だ。二発目は正直めんどくさくて撃ちたくはないし。

 できれば、あれは最後の切り札として取っておきたい。

 

 ではどうするかだが。

 

 

「どうするのですか?」

 

 かけられる声のことはなど無視して、

 俺は、日本刀を離すと、それは白い露となり消える。

 そして、見上げる。ガブラと言ったか?ドラゴンの群れの規模を把握する。

 空を埋め尽くすとはいかないまでも、20匹ほど居るガブラは黒い影を作り不気味に宙を旋回している。

 いつ滑空して襲ってきてもおかしくはない。

 

 遠距離、複数の敵、剣……。

 

 剣の形成は同時複数は無理なのだろうか?

 やってみる価値はありそうだ。最悪、保険にティルウィングがある。であれば試せるときに試すべきだ。

 

 俺は頭上に浮かぶガブラの群れめがけて手をかざす。

 イメージするのは鉄の剣。日本刀のような頑丈さはなくてもいい。複製するのに向いていてコストその魔力コストを優先する。先ほど斬りつけた時にガブラの皮膚はさほど固くないことは知りえているので、問題はない。

 後は正確に狙いをつけるのみ。

 

 形成――その位置は手元ではなく、広げかざした手の先。

 

 

「ソードクリエイト――剣の射的(ブレードレイン)!!」



 言葉を放つと、同時、数十本の鉄の剣が目の前に現れる。それは宙に浮いたまま空中のガブラを一頭に一本ずつまるでロックオンしているかのように照準が定まり。

 

 

「いけっ!!」



 かけ声と共に一斉射。剣は真っすぐ弾丸の如く飛び行き、それぞれ宙を旋回するガブラを逃すことなく射止た。

 着弾したガブラから頭上へと落下してくる。

 


「今のは!?」

「ほら降ってくるぞ!!」

「きゃっ」


 俺へと問う女騎士の手を掴み引き、降ってくるガブラから退避する。

 

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