第7話


 そうして。

 全てのガブラが落ちた。

 

 中には下敷きになっている者もいるようだが、鎧を着ているのでそうたいしたケガはなさそうだ。

 これで、ひとまずは安全だろう。

 

 剣の同時複製と射撃も可能の様だったし、結果としては力の確認もできて上々だ。

 それにしても、本当に異世界なんだなと、ガブラを見てつくづく実感した。

 

 

「あ、あのぉ……。その、放してもらっても……。」

「ん?ああ」



 ずっとがっしりと掴んでいた手のことを忘れていて、頬を紅く染めながら申し訳なさそうにして女騎士に俺に声かけられて、その手を離した。

 

 

「大丈夫か?」

「あっ……はい!!ありがとうございました!!あなたがいなければここで全滅していたところでした!!」



 丁寧に頭を下げる女騎士。

 見た目、厳しそうな感じがしたがそうでもないようだ。

 

 

「えっと……。あなたお名前は……」

「ツルギ。新道ツルギ」

「ツルギさんですか。あっ、申し遅れました。私はこの部隊を指揮していますシャルロット・アルベリア。シャルロットとお呼びください。さっきは本当にありがとうございました。部隊を代表して私が御礼を申し上げます」

「いやべつに、そんなたいしたことはしてないよ」



 それに、こちらとしても自分の力を試すことができたし、兵士を確実に助ける方法を取らなかった時点で、そんな感謝されるようなことじゃない。

 

「そんなことないです!!あなたが来ていただけなければ、私たちは……」

「それで?どうしてこんなところに?」



 兵士だけで。飛行するドラゴンの対策もしないで。

 

 

「じつは……」

「シャルロット様!!」


 同時、シャルロットが話そうとすると、一人兵士が声をかけよってくる。

 

 

「隊長!!兵の無事を確認できました。……貴方は先ほどのガブラを撃ち落としてくれた方か。ありがとう。僕からも礼を言うよ」



 金髪のイケメン。兜を取って見せるその笑顔はすごく爽やかで、まるで王子様のよう。薔薇とか食わせさせたら似合うんじゃないだろうか……。

 

 

「えっと、君、名前は?」

「ケイン。部隊の確認ありがとうございます。この方はツルギさんです」

「そうか、さっきはありがとう。僕はケイン・マグナス。この部隊の副隊長を務めさせてもらっている」

「えっと、よろしく」



 差し出された手を握り握手を交わす。と一緒に。

 ケインは俺の耳元までさりげなく顔を近づけ。

 

 

「あまり僕のシャルロットに近づかないでくれないかな。目障りだよ」



 ぼそりと、そんなことを言ってくれる。

 

 怖わ。

 風評被害もいいところだ。

 なんなんだ?

 まあ、こういうのは無視しておこう。

 

 

「で?なんでこんなところに居たんだ?」

「実は、最近この近辺に現れたダンジョンを調査するために来たのですが……。運悪くガブラの群れに遭遇してしまいまして……。本来であればダンジョンはギルドの冒険者が主に調査をするのですが、調査にでた冒険者が全員行方知れずなのですよ。だからこうして国家騎士の私たちが調査をと」

「なるほど」

「それで、君は一人でなんでこんなところに?」



 また割って入ってくるケイン。

 よほど、シャルロットと喋らしたくないらしい。

 でもまあ、ダンジョンか。

 多分、ティアラが言っていた災厄のダンジョンとは多分それのことなんだろう。

 状況から察するに、ダンジョン自体が難しいのか。もしくはなにか訳がありそうだが……。

 どちらにせよ、探す手間が省けそうだ。

 道を知っているなら案内してもらった方が良いからな。

 

 

「実は俺もそのダンジョンに行く途中だったんだ」

「まあそれは!?よろしければご一緒しませんか?あなたがいれば、またガブラの群れに遭遇しても困りませんし」

「隊長、一般人を部隊に入れるなど!!」

「ケイン、あなたはこの方の魔法を見ていませんでしたの?」

「それは……」

「部隊の指揮もさっきの奇襲で下がっています。ならば、今は一人でも戦力を増やすべきです!!」



 どうやら、俺のソードクリエイトは魔法扱いらしい。

 正直俺も詳しく知らないけど、確か、ティアラも魔力がどうとか言っていたしな。

 

 でもまあ、こうして話を振って、乗ってきてくれたからひとまずは安心か。

 取り合えず、ダンジョンまではいけそうだ。

 

 

「では――騎士として私はあなたを歓迎します。よろしくお願いしますねツルギさん」



 そういう彼女は満面の笑みで、握手を促すよう右手を差し出した。

 それに、俺は迷わず答える。



「こちらこそ。よろしく」



 握手を交わす。

 ただ一つ。視線が居たい。

 ケインの顔をちらりと視線だけで伺うと、笑っているものの、目は冷徹な物だった。

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