第20話

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「で、あからさまにラスボスって感じだが?」

「ラスボス?」

「敵がいるかもしれないってことだ」

「分かった」



 頷いて、サラはライフルを両手に出現させる。

 


 倉庫で休憩した後、俺たちはそのままダンジョンを進みそして――ダンジョンの最深部っぽい場所へと着ていた。

 後ろを見れば蒼い炎の松明が通路にいくつもかけられており、壁も石の灰色のレンガではなく赤いレンガとなっている。

 その通路を通ってきて現れたのが巨大な階段と大きな両開きの扉のある広い空間。

 まるで大聖堂の入口のような。

 金縁に真っ黒の扉が横に広い階段の一番上に存在する。

 この先に何かありますよと言っているようなモノだった。

 

 ならその先に居るのは?

 

 ここはダンジョン、考えられるのは二つ。

 一つ目は、ラスボス。ダンジョンの主が居てそこで今か今かと俺たちを待っている。

 二つ目は、財宝。宝だけがあり他に何もない。

 大抵、そういうのは宝を取ろうものならダンジョンは崩壊を始めそうなものだが。

 

 どちらにせよ、

 俺とサラは警戒しながら階段を登り、厚みのある扉にを押し開いた。

 

 

 そうして――開いた先には。

 

 

「シャルロットッ!!ケインッ!!」

「くっ……あっ……」



 まるでダンスホール。

 円状の大きな部屋にその中心には業かにダイヤモンドのように飾った巨大なシャンデリアが吊るされており、壁の柱には青い宝石が埋め込まれて光り輝いている。

 だが、その美しさとは歪に床は一面に血濡れて赤い模様が弾けるようにして刻まれている。

 その模様の中心、そこには白い肌に黒い眼をした総白髪の真っ黒のコートを着た男に首を掴まれているケインの姿と、その男のまで膝を着き涙を流しているシャルロットの姿があった。

 



 瞬間――

 

 

「つまらないねぇ!」

「かはッ!?」



 ケインの首が握り潰された。

 捻る。斬る、なんてものじゃない。ただ力に、強引に。握りつぶした首は胴から離れコロリと転がり足元のシャルロットの目の前に転がる。

 

 

「――っ!?」



 叫びにならない悲痛の叫び。

 シャルロットが目の前のケインの首に激情し己が細剣を抜き、その喉元へと突き立てるが。

 

 

「なっ!?」



 ドチャリとケインの胴を投げ捨て、その手でシャルロット細剣を掴み取った。

 

 

「下がれ!!」



 俺は間髪入れずにソレはまずいと思い、叫びソードクリエイトし形成したクラウ・ソラスをその首へと投擲して、

 同時、それに気づいた男はシャルロットを投げ捨て飛び引く。

 

 そこに間髪入れずに。

 

 

 タンッ!!

 

 

 サラが発砲。

 それは男の肩を打ち抜き赤い鮮血を飛ばしてその身をよろけさせる。

 それに――

 

 

「ひゃはははははアハハハハハハハハァァッ」



 男は楽し気に狂ったように笑い上げた。

 

 

「シャルロット!!」

「ツルギさん?それに……」

「サラだ。でもアンタ達どうしてここに?」

「あなたが落ちた後、後方部隊を連れて進んでいたのですが……魔物の群れに囲まれてしまったにです。それで逃げていた時に転移陣を見つけて、そうしたらここの近くに」

「他の奴らは?」



 シャルロットは首を振る。

 全滅か……。

 

 それで残ったのはケインとシャルロット。といってもそのケインは今こうして首が吹っ飛んだ訳だが……。

 目の前で、狂ったように高らかに笑い上げるこの男によって。

 

 

「アハハハハッ――。テメェらぁ何無視してんだッ!」

「あ?いや――お前みたいに狂った奴なんか相手にしたくない」

「はぁん――はぁ!テメェ舐めてんのか!?」

「べつに」


 

 なんだこいつ。

 イカレ具合はぶっ飛んでいて、そのテンションも高い。

 ハッキリって相手をしていると疲れるタイプだ。

 

 

「ツルギさん。きおつけてください。ああ見えてかなりのやり手です」

「そんなこと分かってるって」



 先のシャルロットの不意打ちを素手で受けた受けたんだ。それなりに強いのは分かる。

 

 

「なあどうした?来ないのか?来ないのか?ならコッチからいっちまうぞおおおおおぉおおおおっ!!」



 途端、男は姿を消した。

 いいや――、

 消したのではない。移動したのだ。

 高速で。

 

 

「――っ!?」

「ああっ!?」



 捕えられぬ速さで俺たちへ接近していた男は、気づけば膝を着くシャルロットの首を掴みその首を握っている。

 

 

「ぐっ……」

「ソードクリエイト――日本刀!!」

「はっ!!」

「ちぃっ」

「ツルギ」


 素早く日本刀を形成し目の前の振り入れるも、それよりも先に男の回し蹴りが俺の首を襲い俺はソレを腕で守り後ろに弾かれ、サラが俺に駆けつける。

 

 

「オイオイなんだよそれぇ、舐めんのかァ!!」

「くっ……この」



 サクッ……。

 

 

 シャルロットがその間に握る細剣を男の胸に突き刺すも。

 

 

「なんだそれぇ?アアン」



 効いてていない、それどこか。

 笑っている。

 

 

「クククッハハハッ、オラオアラそんなんじゃオレサマは殺せねぇぞォ」

「くっ……」


 首を握る手の力は増し、息苦しさにシャルロットが顔を曲げる。

 どうする?距離はさほど遠くないがさっきの速さだ俺の速度じゃまた蹴られるのが落ちだ。

 ならサラの銃なら?

 ダメだ――シャルロットが掴まれている以上盾にされかねない。

 ケインの時みたいに不意打ちで離せさせることがいいが……。

 無理だ。

 

 どうする?

 そう、俺が考えている時だ。

 

 

「あ?」


 握る細剣に力がこもり雷が迸る。


「し……でんよ……ライトニングッ」

「なにっ!?」


 その刹那。

 男に刺さる細剣を中心に、紫電が弾けて男とシャルロットを包んだ。

 

 

「――うおっ」



 男の体が痺れ紫電が止むと共に、苦し気に声を漏らしシャルロットを投げ捨てた。



「大丈夫か!?」



 駆け寄るも、自爆同然に放った紫電を受けてシャルロットは気絶していた。

 そんな俺たちの前に、血の付いた細剣がカランカランと投げ捨てられる。

 

 

「イテェじゃねぇか!!いてぇ……ああ!?服が汚れちまったぞぉ……この責任どうとってくれんだァ!!いや……でもいいわ、最高だわ。オレサマに傷を負わすなんて……チョーがつくほどスゲーことだぞ?」



 男を無視して、俺はシャルロットを抱えサラへと預ける。

 

「サラ、シャルロットを頼んだ」

「うん」

「おいコラッ!!だからテメェなに無視してんだッ!?」

「あん?いや――大体分かった」

「はぁ?」

「大体分かったって言ったんだ」



 俺は男の前に立ちはだかる。

 まったく、なんてショッキングな物を見せてくれるんだ。

 見るからに子供のサラだっているんだぞ?

 ショック受けてトラウマになったらどうするんだ?

  

 けどまあ――

 

「アンタがこのダンジョンの主か?」

「おうよ、ここはオレサマの工房!!ここで人間どもの血を吸って力を蓄えてたわけだッ!!」

「ああ――そう」



 ということは吸血鬼ってとこだろう。

 素早く動く吸血鬼。

 面倒なやつだ。

 

 ならそれ相応にふさわしい剣を形成しなければいけない。

 イメージするのは高速で移動するものをとらえる速さ、吸血鬼を両断できる言わば特攻。

 クラウ・ソラスは銀の刃に浄化の炎を持つ剣。それならば吸血鬼には弱点とでも言っていい。だが、それだけでは速さが足りない、であれば、その両面を兼ね備えている剣が必要だ。

 

 ならば――俺が形成する剣は。

 俺は日本刀を投げ捨て消し去り新たな剣を形成する。

 

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