第45話

「はあ……」


 満足気味の三人と宿の一回で朝食にしながら、俺は深くため息をついた。

 

「それで、いろいろ話を整理したいのだが……」


 とうとつに話が重なりすぎて問題が山積みになっている。

 ダンジョンへ向かう前に、ソレを崩さなくてはいけない。

 

「まずシャルロット」

「はい主人様。何でも言ってください!!」


 なんだそのやる気は……。

 飼い主に呼ばれた番犬の如く、食い入るシャルロット。気のせいか尻尾がフリフリと振られているようにすら見える。

 そんなことはさて置き。

 

「アンタ。俺の奴隷になるのはいいが。家族とかはどうなんだ?」


 そうだ。シャルロット自身は、まあ王との約束もあるからさておき。彼女の家族などはどうなのだろうか。シャルロット自体が奴隷扱いなら、その家族もまた、なんてことじゃないだろうか?

 そうであれば、早速、王へ交渉なのだが……。

 けれども、シャルロットはきょとんと首を傾げる。

 まるで、そんなこと忘れていたような……。

 

「どうした?」

「いえ、心配なさらないでください。ワタシには家族はおりません」

 それはなんというか……。

「ああ、なんか悪い」

「ひとり?」


 聞いてはいけないことを聞いた気がしてしまい、謝ってしまう。


「いえいえ。お気になさらず。サラさんも心配しないでください」

「でもいないってどういうことだ?」

「はい。元々私はダンジョンに蝕まれた村出身だったのですが、幼いころ逃げ遅れた私は王が救ってくださいました。それからメイドとして働かせて頂いていたのですが……。

たまたま兵の真似事をして箒を振っているのばれてしまい……」

「それで、騎士になったと」

「はい」


 なんだか、随分ととんでもない流れだな……。

 いや、それより。

 なるほど。だからこうして唐突にご主人様で、メイド服なのか……。

 そう、メイド服だ。

 

「なあ、一応あえて突っ込まなかったけど。だからメイド服なのか?」


 シャルロットはメイド服だ。

 いや、シャルロットが今着ているのはメイド服だ。

 白に黒のエプロン。頭にはヘッドドレス。

 どっからどう見ても、エプロンドレス。というかメイド服。

 

「はい!!昔のものでしたので少々小さいかなとは思いますが、それでも十分着れるものですので」


 なるほど、確かに小さい。主に丈が。

 なんかもう、スレスレなスカートなのだが……。

 パンツ見えそうで色々やばいぞ。

 

「新しいものを王に用意してもらってくれ」


 正直、このまま連れ歩くのは気が引ける。

 というより、国の元騎士をそんな恰好で歩かせているヘンタイやろうとおもわれたくないので……。

 

「かわいい」


 サラよ。余分な事は言わんでくれ。

 シャルロットがそうですか?ありがとうございます。などと嬉しそうに言っているじゃないか。」

  

 それはさておき。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る