第4話


 ひび割れた地面は爆散し、土煙を上げて地面からそいつは現れた。

 

 なんだこいつッ!?

 

 土に汚れた緑の鉄の鎧。3メートル以上は確実にある、大きな西洋の甲冑がその甲冑にあった巨大な剣と盾を持って仁王立ちする。

 

 

「グレートアーマー。本来はここを守っている魔物見たいなものだけど、逆にいえばここの主であるワタシなら一体ぐらいは自由に操れる」

「それはどうッ――!?」


 やべえっ!


 ドーン!!



 続く疑問はそのグレートアーマーの巨剣によって遮られる。

 真っすぐふりおろされた剣は、俺の頭の上に墜落して、その地面をもはや"斬る"のではなく押しつぶして地面をえぐっていた。

 間一髪で横に避けたものの、その破壊力はすさまじく一目で俺のようなちっぽけな人間は一撃でも受ければ即死は免れないのを理解する。

 

 そうして、それをかわしたことに、危なかったと安堵する間もなく、地に埋もれた剣は無理やり横払いされ、地面ごと俺を吹きとばした。

 

 

「おあっ!?っ――なんだ、いったい……」



 地面ごと割られ吹き飛ばされながらも、立ち上がり、目の前のグレートアーマーを見上げる。

 

 ティアラは……。

 

 冷静に、こいつを出した原因であるティアラを見れば、真剣な目で俺を睨むようにして見ている。

 

 

 なんなんだクソッ!?

 

 

 契約してダンジョンを攻略させるのではなかったのか?

 どうして、こんないきなり襲わせて……。


 

「とっ」



 ドガーンッ!!

 

 

 地が砕け土が舞、クレーターができる。地面ごとえぐる振り上げ、それを間一髪のところで避け懐まで潜る。

 それはゲーム磨き上げた、反射動作でもある。

 

 体は動きは覚えている。そして、ソレは同時に現状それに伴い、記憶の中でゲームとの既知となり対応できていた。

 ただ――この選択は失敗だったかもしれない。

 

 本来なら、懐に潜りこんだあと剣で斬り崩すハズなのだがその剣が今はない。

 大体―――。


 ガシャン!


 止むおえず、地面に向けた盾によるプレスを飛び跳ねかわし、アーマーの射程から飛び出る。

 

 

「ティアラ!!どういうつもりだ」

「どう?練習だよ。ほら、死にたくなかったら、さっきのティルウィングをイメージしてソードクリエイトって言って!!」



 イメージって……。

 言われ、グレートアーマーを目の前にしながら、先ほどの剣を思い浮かべる。

 真っすぐで美しい宝剣。

 聖剣ティルウィング。

 

 

「………」


 胸の中に感じる熱いなにか、それは、そうか……。さっきの剣の力そのもの。

 それが俺に宿ったとティアラは言った。

 

 なら――ソードクリエイト。その言葉が意味するのは……。

 聖剣ティルウィングをイメージする。

 俺の中にあるこの熱いものは……。

 瞬間、理解する。

 剣の成り立ち、その構成。不思議と、思い浮かべた聖剣ティルウィングの理が理解でき、同時、ソレは創り出せるものだと自身が沸いてくる。

 

 

 ああ――大体分かった。

 

 

 静かに深呼吸して、かがめた身を立ち上がらせ、そうして俺はグレートアーマーと真っすぐ立ち向かう。

 そうして、右手を横に宙を握るようにして、

 

 

「ソードクリエイト――聖剣ティルウィング」



 イメージするは黄金の剣。黄金の精によって鍛えられ、その刃は決して錆びることはなく、鉄をも容易く切り裂く剣。狙ったものは決して外さない対魔の黄金を振り放ち、3度使用者を強大な悪から守る。

 一国の王家に受け継がれしそれは、王族の象徴であり、天命を司る証でもある。

 すべての王位の象徴。

 それが今ここに顕現する。

 

 宙を握る手には黄金の粒子が集まり、瞬き四散し姿を現す。

 

 聖剣ティルウィング。

 

 それは、先ほどティアラが俺へと受け渡した物とは、同じものでそうではない。

 あれはあくまでも契約の為に、疑似的に出したもの。

 だが――いま、俺の手にあるこいつは違う。

 

 黄金に輝く刃に鍔、柄。剣身全てが黄金に輝いて、宝物その物を模っている。

 力の解放とでもいうのだろうか。これが本来の聖剣ティルウィングの姿だろう。黄金みまみれた姿はまごうことなき王位を現すにふさわしい輝きだった。

 

 全開で力を解き放ったこの剣に滅殺できないものはない。ならばこそ――。

 

 俺は剣を両手で握り振り上げた。

 巻き上がる黄金の鱗粉と創輝。

 それは振り上げたティルウィングに集まり、黄金を曙光へと変えて、

 そして――

 


「ティルウィング!!」



 叫び、黄金を解き放つとグレートアーマーまもろとも周囲を黄金の爆光で埋め尽くした。


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