4セット目:サウナ探偵の温度
復讐に至る病
その人物は
がきり。
突然の手ごたえと衝撃に、思わずシャベルを両手から取り落とす。はっと我に返り、軍手をはめた手で足元を掻き分けてみると、どうやら大きな岩に当たったらしい。危ない。こんな物の上に落ちたら危険だ。取り除いておかなければ。シャベルを握りなおした手は、しかし、不意に止まった。
――こんな物の上に落ちたら危険だ
その人物は、もう一度考える。危険だ。その通りだ。なるほど。面白いじゃないか。奴らに教えてやるいい機会だ。いったい、自分たちがどんな事をしているのかを思い知らせてやろう。これは、復讐だ。その瞬間、ただの落とし穴は、比喩としての陥穽に変貌した。
ざくり、ざくり。その人物は岩の周りを憑かれたように掘り返す。取り除くためではなく、穴の中心に据えるために。執拗に、そして丁寧に土を退けていく。
その顔には久しぶりに微笑みが浮かんでいた。カメラの前で見せる作り笑いではない、心の底から湧き出る微笑みが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます