探偵はサウナで謎をととのえる
吉岡梅
1セット目:サウナ探偵櫓竜太郎誕生
神から貰った毒物
その人物は、毒物の入った小瓶を手に取り、しげしげと眺めていた。傾けた瓶の中を流れるそれは青酸化合物。わずか0.2グラム程で人ひとりの命を終わらせる白い粉末。
――この粉末を、このタイミングで手に入れたのは、神様が後押しをしてくれているのかもしれない。
ぼんやりとそう考えている自分に気付き、その人物は、はっと我に返った。軽く首を振って、小瓶をことりと机の上に置く。
頭の片隅に浮かんだ考えは、しかし、だんだんと大きく膨らんでくる。そうだ。後押しをしてくれているのだ。いや、後押しなどいらない。自分の意志で、あいつを終わらせるのだ。向こうが好き勝手に清算する気ならば、こちらにも考えがある。
――なんでも自分の自由になると思うなよ。
その人物は、自分の考えがとても気に入った。そうだ。そうなのだ。好きにさせてたまるか。別れの価値も時間も、あいつに勝手に決めさせはしない。こちらが決めてやるのだ。
薄暗い部屋の中、小瓶を握りしめたその人物は、自分でも気づかないうちに、忍び笑いを漏らしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます