概要
だがしかし、【魔王の棲家】と呼ばれるその場所は、年老いた英雄達の介護施設だった――
常識外れの入居者達に振り回されながら、セイルの心に何が生まれるのか。
小さな波紋が、やがて施設を揺るがす大事件に発展する。
危機的状況に直面し、かつての英雄達が立ち上がる!
伝説と言われる彼らの真の実力とは!?
第25回電撃大賞三次落ち作品
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!どんな英雄も、いつかは老いる
そこを描くか!と驚いたお話です。
ファンタジー世界の英雄たちの最期というのは皆いい感じに格好良く語られているけれど、人間なんだから確かにこういうのも有り得るんだよなぁと気付かされました。
主人公はどちらかというと鼻持ちならない性格で、けれど相手は曲者揃いな上に意外と元気な老人たちですから、当たり前ですが一筋縄ではいきません。
序盤は色々と規格外な老人たちを相手に、自信家の主人公が自信をへし折られたり、振り回されたりしながら過ごす日々が描かれています。
だから心温まる触れ合いのお話……と思いきやそれだけでは終わらない。
これ以上は流石にネタバレなので控えますが、異世界ファンタジーならではの…続きを読む - ★★★ Excellent!!!最高の着眼点と、それを書ききる見事な筆力!
奇をてらった着想というのは色々な物語にあるが、「人が目をつけておらず、その上で本質的かつ非常に重要なテーマ」となれば、これはもう滅多にお目にかかれないと言っていい。
本作はまさにそういった、最高のテーマ性を持った小説である。読み初めてしばらくで、あまりの着眼点の素晴らしさに震えが来た。
そして、そのテーマを希望の残るエンターテイメントとして書ききった筆力も見事。
読んだ多くの人が「やられた!」となるであろう、素晴らしい作品です!!
この作者さんは、他にもファンタジー世界に一石を投じるような作品ーーーー勇者の概念を揺るがす短編や、言葉すら通じないある意味真の異世界を書いた長編、を書い…続きを読む - ★★★ Excellent!!!最後の最後、感動が数倍に広がるお話です
『魔王の棲家〜天才魔術師と老いた英雄達の物語〜』
この題名に全てが入っていた。
読み進めると魔王は出て来ないし、天才魔術師と言われている主人公も、いわゆるチートという訳ではない。
でも、描かれる世界観は今まで読んだことのない程、面白い物だった。
チートだった過去を持つ老いた英雄達はたくさん出て来る。
彼らはそれぞれに歴史を持ち、生きてきた英雄達だった。
ただ、彼らは介護を受けるまでに老いていた。
その事実にまず驚くのだが、出て来る元英雄であるじいちゃんもばあちゃんも意外と元気なのだ。
車椅子に乗りながら、介助者に文字通り介護を受けながら、認知症を患いながら、でも彼等は施設内で幸せに生…続きを読む - ★★★ Excellent!!!老いた英雄達の行く末とは
どんなに優れた能力を持っていようと、生きていれば必ず肉体は老いていく。たとえ肉体は衰えても実力は健在。時には意図せずに人を傷つけてしまうこともある。
「魔王の棲家」は老いた英雄たちが暮らす場所。
万が一にも一般人に危害を加えないように、ここで老後を過ごすのだ。
セイルはそのような施設とは知らずにそこに派遣された。
やって来た当初は不満げに仕事をこなすものの、施設の人々と交流するうちにセイルの心に変化が表れる。
魔法と老人ホームと介護、という組み合わせが新鮮だ。この発想自体がすでに面白い。しかも著者の巧みな文章も相まって面白さは倍増。
一気読み間違いなしである。
王道ファンタジーは読み飽きて…続きを読む - ★★★ Excellent!!!面白さは保証する。もし興味があるなら、今すぐにでも読み始めてほしい。
――英雄も、いずれは老いる。
たとえ歴史に名を刻むほどの者であっても、老いを避けることはできない。
そして、老いは判断力を曖昧にする。
想像して欲しい。
「強大な力を持つ英雄が、老いて判断力を失い、なにかの拍子に力を暴走させてしまったらどうなるか」ということを。
恐ろしい暴走を防ぐため、老いた英雄たちは一か所に集められ、人里離れた場所でひっそりと余生を送っている。
それが、この作品の設定だ。
設定だけを見ると「ファンタジー世界版・老人ホームの話かな」と思うかもしれない。確かにそれを連想させる雰囲気はある。
しかし、この作品に登場する施設は、決して穏やかな場所とは言い難…続きを読む - ★★★ Excellent!!!何故、彼らは魔王と呼ばれているのか。
ついつい一気読みしちゃいました。一気読みしない理由なんてありませんでした。
物語最初から、引き込まれる“設定”。
(自称)天才魔術師セイルは、『魔王の棲家』と呼ばれる場所へ任務に向かう。
どんな場所なのか、と読み進めて行くと、年老いた英雄たちの介護施設だということが判明。
まずそこで、嘘ぉ、と言いたくなるが、これでもまだ序盤なんです。物語はむしろこれからです。
破茶滅茶な生活の中で、確かに芽生える絆と英雄たちの気持ち。
そこが丁寧に描かれていて、感情移入がしやすかったです。
物語の構成の仕方が唸りたくなるほど上手くて、読者を絶対に離させない工夫がありました。
バトルシーンも迫力があるの…続きを読む - ★★★ Excellent!!!他のファンタジー作品を読んでも、この作品が思い出される
どんな作品であれ、登場人物が有限の寿命を持つ物語であれば、描かれない登場人物のラストには「老い」が待っているはず。それがたとえ一騎当千の英雄であったとしても。
私たち現代の日本人にとっても多くの人が意識せざるを得ない「老人ホーム」というインパクトのある舞台とファンタジーの融合であり、個性的だけど共感を得られる作品ではないでしょうか。
ただ、老人ホームが題材ではあっても無闇に重い世界観ではなくそこで生きる人たちが前向きに描かれているので、全体的な雰囲気も明るく暗い気持ちにはなりません。
初めは言動が鼻につく天才を自称する主人公も、かつての英雄たちの前では「それなりに、よくできる」良好なパワーバ…続きを読む