他のファンタジー作品を読んでも、この作品が思い出される

どんな作品であれ、登場人物が有限の寿命を持つ物語であれば、描かれない登場人物のラストには「老い」が待っているはず。それがたとえ一騎当千の英雄であったとしても。
私たち現代の日本人にとっても多くの人が意識せざるを得ない「老人ホーム」というインパクトのある舞台とファンタジーの融合であり、個性的だけど共感を得られる作品ではないでしょうか。
ただ、老人ホームが題材ではあっても無闇に重い世界観ではなくそこで生きる人たちが前向きに描かれているので、全体的な雰囲気も明るく暗い気持ちにはなりません。
初めは言動が鼻につく天才を自称する主人公も、かつての英雄たちの前では「それなりに、よくできる」良好なパワーバランスに収まっているのもちょうどよく、楽しめました。
登場人物やその活躍するポイント、全体的な構成も綺麗にまとまっていて、消化不良がありません。
また、平易な文章で読みやすく、話はテンポよく進み、読むスピードが普通なら全体的なボリュームも丁度いいくらいです。

他のファンタジー作品を読んだ後でも「あいつもいつかはあんな風になるのかな」とこの作品が思い返されるのではないでしょうか。

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