綺嬋

景色が、国が、時代が変わっても、月は変わることなく暗い夜を優しく照らし続けます。 ふたりの想いもまた、彼女の姿が変わり、時代が変わり、そして彼の姿が変わっても、美しく在り続けます…続きを読む

ポラリスの母は世界に２つの電球を産み落としました。 しかし不幸なことに、その１つはあまりに明るい電球の翌日に生まれたせいで、分からなかったのです。 たとえほんの微かな明かりしか灯…続きを読む

『かつて行きつけだった店が閉店』という経験は、多くの人にとってしたことがあるか、あるいは容易に想像ができることのはずです。 そんな、ありふれたところから始まる予想外の物語とあたたか…続きを読む

視力と引き換えに他人の心の声を読む能力を得た少女と、助手あるいは探偵として彼女に寄りそう少年。ふたりのキャラクターとちょっぴり甘い関係の魅力に学園ミステリーが合わさった素敵な作品で…続きを読む

血の滲む努力をしても自らの生まれを覆すことはできず、生まれたときから恵まれた者と持たざる者にわかれる世界はあまりに理不尽。人間としての服の下に、血の呪いと社会への憎悪を餌にしたムカ…続きを読む

奨励日の有給に振替休日、社内スケジュールに在宅勤務まで。働く人々にとっての当たり前を寄せ集めたはじまりが、ちょっとした勇気で素敵に変わります。 もしかしたら私たちが過ごす代わり映え…続きを読む

『女は海』 それは生命の源であり、破壊的な奔流。 時に穏やかで温かく、時に冷たく底を知らない。 一人の男にナプキンの帆を張らせペンのオールを漕がせ、気まぐれな波で弄ぶ。 誰かはそれ…続きを読む

現実世界で鳥に転生するという独創的な世界観は、当たり前の人の世界を自由の象徴である空の世界に変えてくれるだけでなく、人と鳥という世界の隔絶を自然かつ絶対的にあらわしてくれます。 け…続きを読む

夢を叶えたじぶん。夢に向かって進むじぶん。夢に破れたじぶん。自由を謳歌していても、机に向かっていても、あるいは檻の内に囚われていても。それは自分自身の魂であり、どんな形であっても殺…続きを読む

月に何を思うでしょう。 白。夢。女性。双子。円環。狂気。美しさ。愛の告白。闇より世界を照らすもの。いつも近くにありながら手の届かぬもの。 そのすべてがここにはあります。 彼女はた…続きを読む

『人が覚えといてくれとると思えるから、忘れられることもある』 考えたことなんてありませんが、はっとさせられる言葉です。自身を苛む忘れたい記憶は、時として再び必要になることがありま…続きを読む

人だってモノだってサービスだって、この世はありとあらゆる裏切りの可能性をはらんでいます。 裏切りに遭わないで人生を進めるのならそれが一番です。しかし、幾多の裏切りを乗り越えることが…続きを読む

独創的な近未来のSF世界観。 繊細で美しい情景の描写。 死と隣り合わせの儚げな雰囲気を持ちつつも、生き生きとした登場人物たち。 生と死は交差し、二つは一つへと束ねられ、行為は確認か…続きを読む

タイトルは身構えてしまいます。「セックス」に加えて夜を想像させる「月光」。 ですが内容はとても真面目で、架空の保険でありながらその仕組みやサービスなどは現実に存在していても納得でき…続きを読む

おおよその物語にとって欠かせないのは成長や変容。 ですが、この作品の重要なポイントの一つは「変わらないこと」。変わることは美しく素晴らしいことですが、その影で消えていくものも必ずあ…続きを読む

二次元に逃避した主人公が、日常をギャルゲーにあてはめたように語っていくスタイル。気の合う幼馴染だけでなく個性的なヒロイン達と関わることになっていく展開はラブコメを予感させます。 が…続きを読む

長いものに巻かれて世間をロールして生きていくか。 世間の流れに乗れなくても、自分のやりたいことを追いロックに生きていくか。 多感な時期の青い人間関係を、悩みもがいて模索していく一組…続きを読む

SFの範疇ではあるものの、主となるのはトラウマを抱え、極端に受動的になってしまった一人の青年の自己変革の物語。 なので、SFが苦手な方にもオススメです。 誰しもが持っている「他の…続きを読む

周りの顔色を窺い、言いたいことも言えない気弱な少年、優輝。 彼の転機となるのは異世界への転移なのですが、そこは言葉はおろか表情すらも読みがたく、外見も人とは全く異なるトカゲたちの世…続きを読む

神にも等しい力を何のデメリットもなく得て、俗人として享受する。そんな存在でありながら、今やもうほんの些細な問題のはずのトラック運転手を、自分を顧みず救いに行く。 欲望に忠実で、妙な…続きを読む

この世の中のものの大半に科学的な理由づけができるわけであって、それは人の心の動きにすら及びます。 そうなるように作られている心なんて、まるでプログラミングされた機械と変わりがないの…続きを読む

男は基本的に愚かな生き物です。 間違いなくただの仕事で、相手はそこにいるのが人でもロボットでも興味ないだろうに、接客をした女性に下心を抱き、向こうも関心を持ってくれるんじゃないかと…続きを読む

自分の一番大切な人を世界の中心にするために、全てを振り絞ってその台になろうとする少年少女。 これだけで尊いのに、VR、e-Sports、難易度ゆえにプレイ人口が少なく、それでいて…続きを読む

経験者なんじゃないのかな、と思うくらいのリアルな感情の流れ。 恋なのか、性欲なのか。 好きなのか、思いどおりにできそうなのか。 これが人間。若さ。男の愚かさ。 ネガティブなイメ…続きを読む

読みやすい調子に、考えを巡らせれば普通の人にも解ける、適度な難易度の謎。 堅苦しく取っつきづらいイメージのあるミステリですが、本作は各々の魅力もつキャラクターが読者を作品の世界に…続きを読む

カブトムシ。少年の良き友達であり、憧れであり、限りある命の存在を「手軽に」教えてくれる、少年にとっての「大人の階段」たる生き物。 そんな生き物の視点を借りて描かれた物語は、かつて…続きを読む

本物の魔法を認識してしまったら？ 自身の生きるこの世界の何が現実で、何が魔法なのか。どこまでが本当で、どこからが偽物なのか。何を信じて、何を信じないか。 たって一人の男の物語です…続きを読む

姿形のなくなったお手軽なデジタルのラブソングと、重くて高くて読みづらいアナログの本。その表現と対比が面白く繊細に表現されていて、ギャルと地味な男子の恋がそれはそれは奥ゆかしい趣のあ…続きを読む

薬に溺れ、自分にすがる少女に対して怨み辛みを吐き捨てる。今や勇者は見る影もなく、蔑まれるべき存在です。 しかし彼は愛する人を失い、人々の思い出の中に残らなくなっても、その強大な力を…続きを読む

私は読む前に「彼女が海苔の佃煮になった」という文字を見てそこにばかり注目してしまいました。ですが、読み終えた時には自分が海苔の佃煮に焦点を当てていたことがズレていたんだな、と思いま…続きを読む

どんな作品であれ、登場人物が有限の寿命を持つ物語であれば、描かれない登場人物のラストには「老い」が待っているはず。それがたとえ一騎当千の英雄であったとしても。 私たち現代の日本人に…続きを読む