転生勇者の心残り

すごいものを読ませていただきました。主人公の心残り、心の動き。それらが物語の根幹をなしているのですが、納得感がありつつ、「そこに目をつけるとは！」と驚かされました！

自己犠牲を伴う善行。
転生勇者たちのキャラクターを善人として立てるこのイントロはありふれたものだが、みんな大好き、俺も大好きなネタである。
短い作品なのでネタバレを避けながら書くのは難しいが、読んでると「おおっ！」となる。
良作。

最初は「ふーん」って読んでるんですよ。
ダジャレにクスッとしたり、「いやお前それパラドックス」とかツッコんでるんですよ。
んでまあ、予想通りの流れで進んでいくわけですよ。
ええ、予想通り……予想どお……予想……はい？

え？

なぬ？

待て待て待て、そっちか、そっちなのか！！！
予想通りの展開の中で、全く予想だにできなかったテーマがここへきて展開されるとは！

たったの五千字そこらでこれは濃い。
これは読まないと損。

なろう系に対するアンチテーゼ。

メタメタなおふざけ話かと思いきや、ものすごくテーマ性のある話です。

爽快感を求める普通の異世界転生好きには絶対に読ませられない…けど、むしろそういう人にも読んで欲しい、そんな作品。

さぁさぁ皆様、こんな駄レビュー見てる暇があったら、5000字しかないので、本編読んでください。

そしてカエル🐸を救いに行きましょう。


あとは細かいところで、全知全能の勇者すら気付かれずに消えたカエルこそ、真の神だったのではないかとか、

主人公は、平和の作り方からして、本当は有能やろ？とか、

いろいろ考えれる高密度短編です！もっと広まれ！！

読み終わったと

「いい……！　凄くいい……！」

なんて語彙失くすのはかなり久しぶりですね。

異世界転生して、チートで強くなる主人公の心残りはなに？　と言うところ一本にフォーカスを当てているんですが、この『心残り』が、凄まじく良いです。

最初は「そうだよね。確かにそうだ」と読み進め、最後の方では「そうか、そうかもな。うん、そうだよ」と同じ「そう」でも意味合いが変わってきます。

そう、そうそう。そうなんですよ。これは読んで頂かないとわからないだろうなあと思います。

そうそう、この作品は「そう」にも注目です。

異世界転生で、転生勇者と言うことは、チート主人公であるということ。

なんでもできる彼がやり残したことがあると悔やむ。その心残りを解消させるために手を下してみると……

きちんと結末がつきます。それはチートに対する批評性も含んでいます。

これは答えの一つであって、別の見解もあるかもしれません。でも評者には爽快でした。皆様にはどうでしょうか。

神にも等しい力を何のデメリットもなく得て、俗人として享受する。そんな存在でありながら、今やもうほんの些細な問題のはずのトラック運転手を、自分を顧みず救いに行く。
欲望に忠実で、妙な知恵の働くいかにもな凡人らしい展開を見せられつつ、最後には彼はやはり神に選ばれた英雄たる人間なんだと思わせてくれる。短い中でもグッと来て、スッキリした読了感のある作品です。

転生のために数多の作品で酷使されるトラックへの思いやりがストーリーに絡むのも非常に面白いポイントでした。