概要
「付き合っている彼女が布団に入って変貌する。最後に泣きながら〇〇する」というところだけを決められて、「これで書いて」と言われたので書いてみました。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!あぁ、これが文学なのだなぁ。
読了して最初に感じたのは、あぁ、これが文学なのだなぁ。ということ。
彼女が突然海苔の佃煮になってしまったら、普通は狂乱します。
でも主人公は違う。現実にいたならサイコパスか!って突っ込みたくなる思考と行動をします。
しかし、それがすっと心に入ってくる。確かにこう考えるかもしれないなぁ、とか、これは違うんじゃないか、とか、主人公目線で物事を考え、いつしかその世界に馴染んでしまう自分がいる。
あぁ、これが文学なのだなぁ。
もしこの短編がショートムービーにでもなったものなら気持ち悪くて目を背けてしまうかもしれない。
でも、文章だからこそ、それが心に染み込んで、思考に入り込んで、物語と一体と…続きを読む - ★★★ Excellent!!!パズルに挑戦してみませんか? ただし、風変わりなピースばかりですが。
わけのわからない話。
というのが、第一印象だった。
最初から最後までひたすらシュールである。
内容は決して万人向けではない。
合わない人はとことん合わないと思う。
読後に嫌悪感しか残らない人もいるだろう。
しかし、不思議なことに気付く。
はじめは「わけのわからない話だ」と思っていたはずなのに、物語を読み進めていくうち、あるいは物語を読み終えてあれこれ考えているうち、自分のなかで「もしかして、こういう意味かな」などと解釈が出来上がってゆくのだ。
そこには巧妙な(?)仕掛けがある。
この物語には、さまざまな部品が用意されている。
「海苔の佃煮」「不貞腐れた」「プリン」「消費期限」「キー…続きを読む - ★★★ Excellent!!!この短編を小説という常識で縛っていけない、哲学と文学の《佃煮》だ
不貞腐れて《海苔の佃煮》になってしまった恋人と、戸惑いながらも徐々に佃煮になった彼女に受けいれていく《僕》――衝撃。他に言葉がありません。
普段ならば、物語のあらすじを書かせていただいたり、細部のあれこれに触れて考察を書き散らしたりするのですが、この小説においては、敢えてせずにおきます。
この小説が気になった読者さまには。
取り敢えず理窟は放り投げて、本編を読んで、確かめていただきたいからです。
それにしても、この小説。読みはじめた段階の衝撃が最後まで衰えることなく続くのが、ほんとうに素晴らしいです。
作者さまは頭のなかにどんな大型収納を備えているんだと圧倒されるくらいに多種多様な比喩…続きを読む - ★★★ Excellent!!!先が気になって眠れない……
――ネタバレ含みます。
結局、海苔は海苔のまま、彼に愛され続けるのでしょうか?
わたしには主人公にとって都合のいい形に美羽花がなってしまったように感じました。
異臭こそ放つものの、それまでのようになにも要求しない、大人しいだけの彼女。
彼が彼女とここまで来るまでの道程も、最初はフラれてキープくんだったものの、次第に彼女との性的関係に溺れていく……。
つまり彼女を選んだ理由に、職場のかわいい女の子など必要ないのです。
美羽花は彼を性的に誘うことで彼を繋ぎとめた、それだけのこと。
そして彼は彼女の「気分屋」なところに閉口していた。
それからの海苔の出現。
海苔は文句を言わないし、駄々もこ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!口にしないとわからない。
佃煮の味は食べなければ知ることができない。佃煮がある、という情報だけではどんな味か主観的に捉えられない。ただ食べるには勇気が必要で、そのときをいつ迎えるかという話。
彼女が海苔の佃煮になっていた。から始まる衝撃的な一文からはじまる物語。現実とは思えないそれを目の当たりにしてからの主人公の時間の過ごし方が、静かな変質に感じられます。目の前で起こった異常をすぐには受け入れられない。けれど毎日は変わらずに過ぎていく。ふわふわとした毎日は不可思議にも感じますが、最終話でそれまでの流れから一変します。カタルシスというか、最終話で彼がとった行動こそが、ひとつの受容なのかもしれないと、感じた次第です。