だから、わたしは決めたのだ。姉を月葬にすると。
《月葬》それはなにも遺さない葬式だ。だから廃れた。
けれどもわたしは今宵、双子の姉を月に葬る。姉を愛するがゆえに。
「ね、ふたりだけのお葬式をはじめようか、姉さん」
わたしには姉がいる。なにかを選択することのできない臆病なわたしとは違って、姉はいつでもすぐになにかを決められるひとだった。姉は田舎の町を出て都会の大学にいってしまった。五年振りに帰ってきた姉は赤ん坊を抱き、男を連れてきた。姉はいう「結婚したの」と。けれども幸せの絶頂にいるはずの姉は、その一週間後に急死してしまう。
葬式の晩、わたしは死んだ姉をひそかに運びだす。
姉を《月葬》にするために。
*こちらの小説はノベルアップ+様にも掲載致しております。
*唱歌「たなばたさま」の歌詞を一部引用させていただいております
作詞・権藤花代 様 作曲・下総皖一 様 補作詞・林柳波 様
歌の著作権は平成25年に消滅しています
素晴らしい歌詞を引用させていただき、ありがとうございます