概要
だから、わたしは決めたのだ。姉を月葬にすると。
《月葬》それはなにも遺さない葬式だ。だから廃れた。
けれどもわたしは今宵、双子の姉を月に葬る。姉を愛するがゆえに。
「ね、ふたりだけのお葬式をはじめようか、姉さん」
わたしには姉がいる。なにかを選択することのできない臆病なわたしとは違って、姉はいつでもすぐになにかを決められるひとだった。姉は田舎の町を出て都会の大学にいってしまった。五年振りに帰ってきた姉は赤ん坊を抱き、男を連れてきた。姉はいう「結婚したの」と。けれども幸せの絶頂にいるはずの姉は、その一週間後に急死してしまう。
葬式の晩、わたしは死んだ姉をひそかに運びだす。
姉を《月葬》にするために。
*こちらの小説はノベルアップ+様にも掲載致しております。
*唱歌「たなばたさま」の歌詞を一部引用させていただいております
作詞・権藤
けれどもわたしは今宵、双子の姉を月に葬る。姉を愛するがゆえに。
「ね、ふたりだけのお葬式をはじめようか、姉さん」
わたしには姉がいる。なにかを選択することのできない臆病なわたしとは違って、姉はいつでもすぐになにかを決められるひとだった。姉は田舎の町を出て都会の大学にいってしまった。五年振りに帰ってきた姉は赤ん坊を抱き、男を連れてきた。姉はいう「結婚したの」と。けれども幸せの絶頂にいるはずの姉は、その一週間後に急死してしまう。
葬式の晩、わたしは死んだ姉をひそかに運びだす。
姉を《月葬》にするために。
*こちらの小説はノベルアップ+様にも掲載致しております。
*唱歌「たなばたさま」の歌詞を一部引用させていただいております
作詞・権藤
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!大切な人を月に葬る、幻想的な物語。
夏の夜、「わたし」は荷車を押し、山間の道を進む。「たなばたさま」を口ずさみながら、小学生の頃の七夕の出来事を思い出す。短冊にすぐに願い事を書いた双子の姉と、二つの願い事を書いて一方を隠してしまったわたし。満月の下で、ある儀式が始まる……。
一つ一つ丁寧に紡がれた言葉たちが、読者を幻想的な物語の舞台へと誘います。特に「月葬」のシーンは圧巻で、思わず呼吸を止めて読んでしまうくらいの密度です。叶わなかった願い、決して届かない想い。静謐な世界の中で、奇跡のような一瞬が描かれます。
そして、最後にわたしが見出した答えとは……。終始美しい、珠玉の短編小説です。
(カクヨムWeb小説短編賞2021 …続きを読む