大切な人を月に葬る、幻想的な物語。

夏の夜、「わたし」は荷車を押し、山間の道を進む。「たなばたさま」を口ずさみながら、小学生の頃の七夕の出来事を思い出す。短冊にすぐに願い事を書いた双子の姉と、二つの願い事を書いて一方を隠してしまったわたし。満月の下で、ある儀式が始まる……。

一つ一つ丁寧に紡がれた言葉たちが、読者を幻想的な物語の舞台へと誘います。特に「月葬」のシーンは圧巻で、思わず呼吸を止めて読んでしまうくらいの密度です。叶わなかった願い、決して届かない想い。静謐な世界の中で、奇跡のような一瞬が描かれます。

そして、最後にわたしが見出した答えとは……。終始美しい、珠玉の短編小説です。

(カクヨムWeb小説短編賞2021 “短編小説マイスター”特集/文=カクヨム運営)

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