概要
あるいは死ぬため、あるいは生き返るため、彼女たちは一年間を共に過ごした
最先端医療技術によって薄弱の運命を乗り越え、遂に世界公演を成し遂げた〈声無き歌姫〉ミザの最終公演を記念して、とある人に向けて送られた手紙と『空白の一年』について綴られた日記を特別公開致します。
あるいは死ぬため、あるいは生き返るために一年間を共に過ごした彼女たちの軌跡。
どうか、心で感じ取ってください。
あるいは死ぬため、あるいは生き返るために一年間を共に過ごした彼女たちの軌跡。
どうか、心で感じ取ってください。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!美しき《遺伝子》の二重奏
ふたりの人間のゲノムを融合させることであらゆる難病を治療する「ゲノム融合化施術」という最先端技術が実現された近未来。
癌に侵された「私」は声無き「歌姫」とその施術を受けることになった。
「彼女」は死ぬために、「私」は生きかえるために。
しかしながらゲノム融合化施術を受けるには、ゲノムの照合率がもともと99.9%でないと受けられない。作中の言葉を借りるならば、「地球と同じ環境の星を見つけるより低い」――なればこそ、遺伝子。ゲノム。記憶。能力。人格。なにが個人を確立させ、他人との境界線となっているのか。
なかなかに難しいことを書きましたが、そうした哲学は物語の基礎にすぎません。たいせつなのは「…続きを読む - ★★★ Excellent!!!二重螺旋の奇跡のシンフォニーを堪能あれ
人の形を司る記録媒体-遺伝子。異なる二人のそれを融合させる施術が実現し、ガンをも克服する奇跡が生まれた。
そんな奇跡を受け入れた「〈声無き歌姫〉ミザ」と「私」の二人の関係を描いた本作の最大の見所は、二人の対比の描き方だ。
人の遺伝子は二重螺旋。それぞれの螺旋は決して交わらない。だが、いずれの螺旋も右巻きで同じ方向に進む。見る角度によっては平面的に交わっているようにも見える。そんな人の遺伝子の構造を二人の関係に重ねながら、彼女達の行き着く先を見届けた後、私の心に残ったもの。それは、作者の秀逸な表現がもたらした、二人の紡ぐ美しきシンフォニーだ。
その旋律はきっと、私以外の読者の心にも必ず届…続きを読む