現代医療と古代の呪術が交錯する、一風変わったホラー作品。医師である主人公夫婦の日常に潜む不穏さから始まり、徐々に明かされる村の禁忌と血にまつわる秘密に引き込まれる。
特筆すべきは、リアルな医学描写と超自然的要素の絶妙なバランス。慢性骨髄性白血病という実在の疾患を軸に展開される物語は、科学と迷信の境界線を曖昧にし、独特の不気味さを演出している。
複数の時代と視点を織り交ぜた構成も秀逸で、断片的に明かされる真実が徐々に一つの大きな恐怖へと収束していく過程は圧巻。大人向けの重厚なホラーを求める読者には強く勧められる。
血と願い、そして代償をテーマにした、読み応えのある本格派ホラー小説。
読み終わった後しばらく放心しました……。こんな体験させてくれる作品、そうそうないと思います!
最初は、雰囲気のあるホラーかな? って軽い気持ちで手を伸ばしたんですが、気づけばページをめくる手が止まらなくて!
怖さだけじゃなく、人間模様や情感がしっかり織り込まれているから、ただの怪談に収まらない奥深さがあるんです。
とにかく描写が鮮烈で!
静けさの中で鳴る音や、ふとした匂い、誰かの視線……五感を侵食してくるような描き方に何度も鳥肌が立ちました。
そして人物たちがとにかく生々しい。
弱さも葛藤も含めて、こういう人、いるよねと思わせるリアルさがあるから、彼らの選択や感情に共感してしまうんです。
だからこそ、その先に訪れる場面の迫力が増していて……。
さらにすごいのは、ホラーの枠を超えて、美しさや切なさまできっちり描かれているところです。
読んでいると、背筋が冷えるのに心が震えるような瞬間が何度もあって、ただ怖いだけじゃなく、むしろ、美しいものを見たと思わせてくれる不思議な読後感でした。
正直、語りすぎるとネタバレになってしまうので多くは言えませんが、これはホラー好きはもちろん、濃厚な人間ドラマを味わいたい人にも胸を張ってオススメできます!
読後に鈴の音が耳に残るような、そんな忘れられない一冊です(๑•̀ㅂ•́)و✧
この作品を読み終えて、まず感じたのは作者の圧倒的な構築力への敬服です。
古代から現代へと時を紡ぐ壮大な物語の設計図に、思わず息を呑みました。
特に心を打たれたのは、御神木という存在の描き方です。
単純な恐怖の対象ではなく、長い年月を経て変貌を遂げた複雑な存在として描かれている点に深い共感を覚えます。
人間の行いが自然に与える影響を、これほど詩的に表現した作品は珍しいのではないでしょうか。
登場人物たちの描写も実に丁寧で、特に現代パートの若者たちの心情描写には胸を締め付けられました。
YouTuberという現代的な職業の人物を配置したことで、古典的な怪談に新しい息吹を吹き込んでいる点も見事です。
時系列の構成も巧妙で、現代から過去へ、そしてまた現代へと行き来する構造は、読者に楽しさを与えてくれます。
江戸時代の出来事が現代にどう影響するのか、その因果関係の描き方には作者の深い洞察力を感じます。
何より印象的だったのは、血という生命の象徴を通して語られる人間ドラマの数々です。
恐怖だけでなく、愛情や贖罪、そして希望といった多層的な感情が織り込まれており、読後感は決して後味の悪いものではありません。
この物語は確かにホラーの衣を纏っていますが、その本質は人間の心の奥底にある普遍的な感情を描いた作品だと思います。
樹齢を重ねた御神木が見つめ続けてきた人の世の移ろいを、これほど美しく描いた作品に出会えたことを心から嬉しく思います。
素晴らしい作品をありがとうございました。
江戸時代、炎に包まれる御神木から物語は始まる。
がらりと変わって現代。「行ってはいけない」とされる禁忌の山に、冷やかしに足を踏み入れる若者たち。
ご想像の通り、若い男女4人の行く先は壮絶な道を辿ることとなる————
しかし、ただの王道や植物パニックホラーにとどまらないのが本作の魅力。
彼岸花に囲われた、夫婦の部屋。
紅い左眼を合わせ、妖艶に交わる女たち。
画面越しの、美醜の悲劇。
徐々に明かされる真実……
愛と嫉妬、欲望と狂気が、蔦のように絡みつく。
そんな恐ろしくも艶かしい、人と御神木のドラマが、作者様の圧倒的な文章力によって描かれる————唯一無二の「怪木小説」。
どうですか、行ってみませんか?鈴哭山……
最終話まで読んでのレビューです。
自然を神と崇める信仰は古来より現在に至るまで脈々と伝わっています。
奈良の三輪山のように山そのものが神である、といったところで、本作も山が御神木が神そのものなのです。
これらは通常、人に恵みをもたらすもの、でもその反面ではどうでしょうか?
禁忌に触れた途端、悪意剥き出しに邪悪なものに豹変する。
本作はそこを巧みな文章力で描き出しています。
多くのレビューがついているのでその辺は割愛しますが、とにかくおぞましいホラー要素の中に、ミステリー要素が重なり、物語を巧みに組み上げています。
恐ろしい部分はとにかく恐ろしく、地獄絵図的な光景も繰り広げられます。
読むのを思わず止めてしまいそうになりながらも、気になって先に進んでしまう。きっとそういう経験が皆さんにもあるでしょう。
本作は間違いなくその一本に該当します。
もちろん、ホラーが苦手だという方には全く向かないデメリットもあるので、そこがホラーの持つ両極端な部分ではあります。
多くの謎が随所にちりばめられています。
時系列が飛んだりする読みにくさは少しぐらいありますが、上記含めてそれらを差し引いても、本作はぜひ読んでもらいたい、読むべきホラー作品に仕上がっています。
クオリティの非常に高い独特なホラー作品ともいえるでしょう。
昨今流行りのモキュメンタリーホラーもいいですが、ぜひともこういう作品に触れてもらいたいです。
ホラーファンなら必読です。ぜひ手に取ってください。
こちらはホラー作品となるのですが、それだけでは終わらない面白さに溢れています。
まず最初に感じた事は、言葉です。
文章を書く上で、選択すべき言葉は無限にあります。その言葉に対して、筆者様の並々ならぬ気迫、魂が込められていると私は思いました。
何かを伝える上で、どう表現するかと部分において、「熱い、とにかく熱い想い」がビリビリとそしてヒリヒリと伝わってくるのです。凄いです。
そして続いて思った事は、小説と言う形態ですが、すごく映像的だと思いました。
ここを正確にお伝えするのなら、言葉→文節→文と続く一連の流れというのは、脳内の認識に訴えるものです。
その過程において、重要なのは「テンポ」です。
この「テンポ」において、意図されておられるのかナチュラルなのかはわかりませんが、私には文が「映像作品におけるカット割り」の役目を的確に果たしておられると思いました。
ゆえに脳内において映像変換された想像が、具体性をもって任意に記憶してある映像場面を易々と思い浮かべる事が出来ます。
とてもスピード感のある演出の獲得にこちらの小説は成功しております。
以上の2点を踏まえた上で、多少の語弊を伴ないますが海外ホラー作品の様な設定の魅力と、ジャパニーズホラー作品の精神性の魅力が混在し炸裂しているのです。
お勧め致します。
迫力があります、これでもか、これでもかと、物語に引き込まれます。すごくお楽しみ頂けるエンターテインメント小説です。
皆様、宜しくお願い致します( ;∀;)
山と人は一体です。
山の恵みによって、ふもとの民は生きてゆくから。
でもその心臓たる山が怪異であったらどうなるのでしょう。
巨大な包摂体は怒張した赤い瘤こぶを所々漲みなぎらせ、脈打つ赤い管が底部一点へと集中していく(本文)。
「光が当たると、花びらの色が目まぐるしくグラデーションする野花」など。
鈴哭山の描写です。
山頂部において闇堕ちした神の山は、映画「エイリアン」のような直接殴ってくるスリルがあります。
とにかく「何でこんなのを思いつくのだろう」というセンスで、
多くの人がすずなりを「本格ホラー」と評するのは「自分にこれほど怖いものは書けない」と察知するからです。
けれども振り切れているストレンジさはある意味好みなところで、花びらの色が目まぐるしくグラデーションする野花は、怖い反面、実際に見てみたいなと思いました。
一方、人里に降りると、鈴哭山のために村ぐるみで何かをやっている因習の「普通の顔をした人間の怖さ」へ性質が変わってゆきます。
山の怖さと、里の怖さが、緩急ついて一つのテーマで連結している。ヒトコワ部分も見所満載です。
「キャラクターが魅力」
人間造形もすごくユニークです。ホラーらしく一癖ある。
誰が主人公でも物語になるくらい濃いです。
あまりネタバレしないよう「梢さん」だけ。
梢さん。献血センターで血を抜き取ってるアイドル看護師。にこにこして男性に人気しながら、内心とある女性に興味がある。
ソレさんと玲奈、由貴と美嘉、珠鈴と楓。珠鈴と榊。どの関係にも、それを主人公とした短編小説のような「あっ」という驚きがあります。
そのヒトコワ的に癖のある登場人物が、御神木を中心に、ヒューマンドラマのようなものを形成します。
なんていうんだろう。みんな誰かを怖くするために生まれたんじゃなくて、あるように生きた結果、怖くなってしまっている人たちだから、人間ドラマと感じるのかも。
他人って結局わからないよねって怖さを「理解出来ない」と切り捨てたらホラーで、もう一歩踏み込んだら人間ドラマなのかな。御神木自身も含めて。
珠鈴さん、2つ目の願いは呪縛だね