ティーンエイジ・オーバーライド

作者 にのまえ あきら

66

24人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

 世界観は近未来。近未来といえばSFの俎上。実際この作品はSF作品によくあるなんだか鋭く冴えた空気に満ちています。ですがにのまえさんは、そこにこれ以上ないエンタメ要素をぶちこんできました。やってくれましたねぇ。これは、面白い。

 この作品の最も優れたところは、やはり7700文字弱の中で新しいゲームのシステムから何からをすべて説明しきっているところでしょう。そしてその上、くみ上げたゲームは「実際あるならやってみたい」と思わせるほどの魅力と熱量があります。これはにのまえさんの描写力の賜物といえるでしょう。

 それだけでは終わりません。この作品は新しいゲームシステムをくみ上げただけでなく、主要人物の内面もこれ以上ないほどしっかり描ききっています。「主人公」(特別)になることへの憧憬と挫折、恋心、そして彼らが抱く「特別な思い」。これらを過たず描き切っている……というよりここまでの設定が、その「特別な思い」を描くためだけに作られたとも考えられるほど、主要人物の情動を確固たるものとして描いているのです。あの設定を使い捨てる覚悟と慧眼には恐れ入ります。

 7700字弱という狭いともいえる土俵で、ここまでの作品を描き切ったにのまえさんに敬意を表して。

★★ Very Good!!


面白かった。
物語を創り上げながら競い合うe-Sportsとは新しい。突き抜けるような青春《ティーン・エイジ》の爽快感が心地よく、バトル調のエンタメでありながらヒロインとのラブコメも匂わせてくる。短編と言いながら中身は非常に詰まっており、長編にできるポテンシャルを感じた。それゆえに湧き上がったのが『この競技をもっとみたい』『主人公の戦い方は?』『ヒロインはどういう意味で強いのだろう?』という競技の中身に対する好奇心だった。短編という形式を取っている以上、文字数の増加は筆者の望むところではないかもしれないが、それでも一読者として、競争&共創をもっとみたい、みせてほしい。そう願って星2つとした。

★★★ Excellent!!!

ゼロから何かを作り上げることは極めて困難なことであるというのは定説であり、それはどんなことにも適応される。よって競技において適応されるのも当然のことである。
そして本作、『ティーンエイジ・オーバーライド』にも架空の競技が登場する。物語で戦う、その名も『FTP』である。
本作、この競技がとにかくとんでもない。約8000文字の短編にも関わらず、この競技がどんなものか理解でき、観客と同時に楽しむことができるのだ。この文字数で理解できてしまうということはそれだけ単純であるがゆえなのかもしれない。しかし、その中でどうして主人公が準決勝まで上がって来れたのか、などの理由の説明の説得力が高く語られていないこと以外もあるのだろうなと推測できてしまう。架空競技というものを扱った作品は何作見てきたがこんなに作り込みの凄い競技は稀にしか出会うことができない。とにかくすごいのだ。
そして、次に僕が語りたいのはその競技をプレイする主人公とヒロインの関係性。
物語で戦う競技ならではの相手への想いの表し方。ああ、素晴らしい。この何とも言えない初恋のもどかしさのような感情はとにかく読んで味わって欲しい。
良作中の良作、つまり神作なので是非一読をお願いします!!!

★★★ Excellent!!!

場面は未来のeSports大会の準決勝。

【物語革新】というゲームは、ふたりが物語を掛け合い紡ぎあい、紡がれた物語がVR技術で具現化されていくゲームだ。プレイ難易度が高いことからプレイ人数は多くない。が、物語の観客は見応えバツグンゆえ、観客は何億っていう人がネットワークを介して注目するほど人気を博している。

と、この特異なeSports設定ってだけで面白いのに、この物語のなにがいいって、まず主人公が強い。「プレイ人数は多くないほどプレイ難易度が高い」スポーツで準決勝まで進む力を持っているわけです。そして、主人公には目的があり、それが胸熱展開に発展していく流れも熱い!

で、さらに目を見張るのが、物語を「主人公が挑んだ準決勝だけ」切り取って、短く、濃く、描いていることにあります。きっとこの物語に至るまでに流した汗や苦悶があったのかもしれません。もしかすると物語に出ていないキャラクターももっといるのかもしれない。"まるで長編小説の一番胸熱な部分だけ切り取った"よう、とでも表現すべきでしょうか。まあ読者が考える余地の残し方と、奥行きの見せ方がうまい。

にのまえあきらという作家が紡ぐ物語は、設定のオリジナリティと、場面の切り取り方と、余白の絶妙さにいつも舌を巻きますが、本作はとくに秀逸です。言葉遊び・センス含め「らしさ」も全体的にちりばめられ、あきらワールドが展開されています。

きっと長編小説のクライマックスのような――手に汗握るあの感覚が体験できると思いますので、ぜひその目で確かめてみてください。

★★★ Excellent!!!

自分の一番大切な人を世界の中心にするために、全てを振り絞ってその台になろうとする少年少女。

これだけで尊いのに、VR、e-Sports、難易度ゆえにプレイ人口が少なく、それでいて絶大な人気という、これでもかと言わんばかりのエンターテイメント性が押し出された、心沸き立つ彩り。

そして、「物語で戦う」ということ。
FTPでは記憶と知識に昇華させた〈原典〉を新たな物語に成して戦うわけですが。
それは私たちが自らと対峙し、記憶と知識で縒った糸で物語を紡ぐことと同じなのではないでしょうか。
ここは色めき立つ電脳のアリーナではありませんが、世界中のどこからでもアクセスできる舞台に間違いありません。
私たちが何かを賭けて生み出した物語は、名作という主人公の引き立て役ではない。顔見知った相手でも、名も知らぬまだ見ぬ人だとしても、誰かにとっての「主人公」に成り得る可能性を秘めているのです。

さあ、私たちもヴォーパルソードを携えて、ジャバウォックを倒しにいきましょう。

★★★ Excellent!!!

‪『ティーンエイジ・オーバーライド』はレビューなんてして良いんですか?と、躊躇してしまうくらいに、面白い作品です。
‪作中に登場するゲームである〈FTP〉はeSportsであり、VRMMO。童話や神話のような物語そのものを武器として扱い、物語を紡いでゆく掛け合いのバトルをする高難易度のゲームです。
難易度が高いあまりプレイヤーは少なくとも、バトル——紡がれる物語が展開やキャラが愛おしく面白いので界隈が常に盛り上がり、人気を博しているゲームだとか。そのゲームをきっかけに生まれる天才と凡人の差や、各キャラクターの意思が非常に好ましい物語です。
ゲームで実際に戦闘をする時に感じる臨場感などが文章として成り上がっており、非常に鼻息を荒めながら展開を待ち遠しく読書出来るお話でーすっ!
人混みの中などで読めば、鼻息を荒くしすぎて周りの方から犯罪者予備軍と認定される程確実なくらいにのめり込める作品なので、くれぐれも密集しているような場所ではこの作品を読むのは控えた方が良いかと……。
読む場所を限らせるほど(良い意味で)の名作です。是非、一読を!!

★★★ Excellent!!!

まずルビがカッコいい!厨二心がくすぐられます。
次に文章が上手い!短編ながらも伝わってくる情報量の多さ。密度が高いです。最後までチョコたっぷり。
最後に、このゲームをプレイしたい!と強く思わされました。このゲームはいわゆるTRPGに似た楽しみがあるんだろうなぁと。リアルタイムで紡がれるストーリー。そこに瞬時の判断が要求されるバトル要素が加わっている上、世に出ている原典(プレイヤーにとっての共通項)を用いるのでe-sportsとして成立している。想像しただけでワクワクします。自分はこのゲームでどんな物語を生み出すんだろうな楽しみぐへへ。あと他人のプレイを見て、あぁーこの物語にあの物語ぶつけるかぁ!と興奮したい!
戯曲とか歌とかも使えるなら戦略に幅が出るよね、とか無限に想像してしまう。そんな、読者の想像を掻き立てる読み応えのある作品でした。ラブコメパートもヨシ!幼なじみヒロイン最強!