5話「恋」

 家に帰ると、僕は部屋に行き、芽依お姉ちゃんと話をした。

 「パーティーはどうだった?」

 「楽しかったよ」

 「誰の誕生日だったの?」

 「ううん、あの、あれだった」

 芽依お姉ちゃんの頭の上に、「?」が浮かんでいる。

 「あの…その…僕が、付き合った、っていう…」

 顔が赤くなっていくのを感じる。

 「な、なるほど…」

 その後は、昨日と同じ静けさになった。

 

 ああ。

 なんでこう静かになるんだろうか。

 何か話さなければ。

 何か、何か話さなければ。

 でも何を。

 

 静けさを破いたのは芽依お姉ちゃんだった。

 「ねえ、明日暇?」

 こちらをちらりと見る。

 「うん」

 「良かったら、ショッピングでも行かない?」

 「うん、良いよ。どこ行く?」

 こうして、時間が過ぎていった。


 次の日、僕は歯を磨いてる時に気付いた。

 これは、もしかしてデートなんじゃ。

 そう思うと、胸の方から顔へ熱が伝わっているように感じた。

 

 そしていざ芽依お姉ちゃんと出掛ける時間になった。

 僕は家の前で待つ。

 しばらくしない内に芽依お姉ちゃんが来た。

 

 電車に揺られる。

 「初めてだね」

 芽依お姉ちゃんが隣で座る僕に話しかける。

 「え?」

 「こうして2人だけで出掛けるの」

 「そういえば、そうだね」

 デート、か。

 そう思うと不思議と緊張してしまう。

 「楽しみだね」

 芽依お姉ちゃんがこちらを向いて微笑む。

 それの瞬間は、まるで時間が止まったようで、僕の瞳に焼き付いた。


 ああ。

 これは、もう、分かった。

 この気持ちはやっぱりそうなんだ。

 芽依お姉ちゃんを想うこの気持ちは。

 言おう。

 僕は拳を握る。

 これは、もう、恋なんだ。

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