16話「人参」

 芽依の冬休みも終わり、学校へ行き始めた。

 そして、出来れば早めに解決しておきたい問題がある。

 「芽依の人参嫌いをどうにかしたい」

 私は朝、料理をする彩香に話しかける。

 「分かりました。それじゃあ…みじん切りにしてハンバーグにしましょうか」

 「ありがとう。宜しく」

 そして朝食を食べ、私は仕事へ行く。

 

 帰宅後。

 食卓の上にはハンバーグがあった。

 芽依はハンバーグをいつも通りに食べる。

 ごく普通に美味しそうに。

 彩香の作る料理なのだから、実際美味しいのだが。

 どうやらこれは大丈夫のようだ。

 まあ、人参の味も匂いも食感もほとんどしなかったが。


 ここから人参を大きくしていく。

 そうすれば、芽依は人参嫌いを克服してくれるだろう。


 そして数日後。

 芽依は煮物の人参を残していた。

 どうやら駄目だったようだ。

 一体何が駄目なのだろうか。

 私は人参を食べながら考えてみる。

 俊に聞いてみるか。


 起きて、今日も仕事へ行く。

 「よう、おはよう」

 「おはよう。なあ、ちょっと聞いていいか?」

 「なんだ、どうした?」

 「私の娘の芽依だけど、人参が嫌いでな。何とか克服させようとしてるんだ」

 俊は相槌をしながら話を聞く。

 「それで、私は人参が嫌いじゃないんだが、何で嫌いだと思う?」

 「そんなん俺が知るかよ。本人に聞いてみればどうだ?」

 「あー、そうだな。ありがと」

 「お役に立てたようで」

 俊は皮肉っぽく言った。


 家に帰り、私は早速芽依に聞いてみた。

 「芽依は何で人参嫌いなんだ?」

 「んーとー」

 「味?」

 「それもある」

 「匂い?」

 「ううん」

 「食感?」

 「多分それ」

 「そうなのか」

 食感と味か。

 人参の食感を思い出してみる。

 柔らかく、見た目より硬くない。

 あれ、柔らかいのが駄目なのか?

 

 後日。

 居間には、スティック状の人参やきゅうりを味噌に付けて食べる芽依がいた。

 こうして、芽依は人参嫌いを克服した。

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