15話「促し」

 僕は今日、どっと疲れた。

 「疲れてるね」

 「うん。楽しかった」

 電車の窓からオレンジ色の光が刺す。

 電車の中もなかなかの人で、僕達2人はドアの手すりに掴まっていた。

 しかし、僕は疲れすぎて、いつからか分からないけど、そのまま寝てしまった。

 

 気付いた時には、もう最寄り駅近くだった。

 「あ、おはよう。結構寝てたね」

 「ん、おはよう」

 周りを見渡す。

 人はあまり減っていない。

 「僕どれくらい寝てた?」

 「うーんと、1時間半くらいかな」

 「そっか」

 そうとう疲れてたらしい。

 

 なんだろう、恋人なんだろうけど、何か違う。

 いや、今までと同じというか。

 僕はふと思った。

 

 家に帰ると、僕はすぐさま寝た。

 目を閉じた瞬間、夢へと入っていくのを感じた。


 数日後。

 今日は、智也の家で皆と遊ぶ予定だ。

 部屋に通されるが、智也はトイレだと言って、僕は一人となった。

 智也の部屋はそれほど広くはない。

 本当に前、パーティーした部屋と同じ部屋なのだろうか。

 所々散らかっている。

 落ちている本の中にひとつ、気になる漫画があった。

 僕はその本を取る。

 図書室で面白そうな本があった時のような感覚。

 違う。

 胸の高まりを感じる。

 どうゆう感情か分からない。

 行ったことのない楽しい場所に行くような。

 不安もそこそこで楽しみの大きい。

 そんな感情のような。

 そんな気がした。

 適当なページを開く。

 

 その本は、智也が好きそうな本だった。

 僕はすぐに閉じた。

 理由は分からない。

 そしてまた、そっと開く。

 やけに下からの描写が多い気がする。

 「どう?俺のおすすめ」

 僕は後ろを振り返る。

 「いや、別にそんな」

 「いや、いいんだ」

 断ろうとした僕の言葉を遮る。

 「何で…」

 「え?」

 「何で僕にこんな」

 「さあな、誰かとの約束かもな」

 ドアを開ける音がした。

 智也の後ろ、ドアを開けた人を見て、時間が止まったようになった。

 翔平だった。

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