16話「初めては吸い込まれるように」

 「翔平?」

 ドアを開け、部屋に入ってきた彼に聞いた。

 「勇気、お前を男にする」

 「へ?」

 「お前はよく自分の顔がどうとか言っている。だけどそれは違う」

 翔平は、僕の正面に座る。

 「芽依さんとお前は、付き合ってるんだろ?」

 僕は頷く。

 「でも何か違うんだ見ていて」

 「いや…」

 僕も思っていたことだ。

 「今までとあまり変わらないというか」

 「そうだ。だからお前を男にする」

 「それで、これ?」

 僕は、智也の読んでいる本を指差す。

 「そう」

 「繋がりが見えないんだけど」

 「そこに関しては智也に聞いて」

 なんだろうか、嫌な予感がする。

 「うーん、特に無いかな」

 やっぱりだった。

 「だけど、多分変わる。そう思ってる。ところで、芽依姉ちゃんとはどこまでいった?キスしたか?」

 「え…?」

 僕は首を振る。

 2人はとても驚いていた。

 「まあ、そこも含めて教える」

 「安心しなさいな、なにも『教える』わけではないからな」

 どうゆうことだろうか。

 僕はそう思いながら、この部屋でいろいろ見た。

 後にその意味が、そうゆうことだと分かった。

 分かってしまった。

 

 僕は、今日見た光景を忘れずに家に帰った。

 

 両親の寝室から、必要なあれは取ってきた。

 今日も、芽依お姉ちゃんが部屋に来る。

 僕は今日、2人から色々教えてもらってしまった。

 「あれ?今日ゲームはいいんだ」

 「芽依お姉ちゃん」

 「ん?」

 肝心な事を教えてもらっていないことに気付いた。

 誘い方だ。

 どうすればいいんだろうか。

 恥ずかしさがこみ上げてくる。

 

 だから。

 僕は、芽依お姉ちゃんに近づく。

 

 だから今は。

 そして吸い込まれるように、キスをした。

 まるで、僕の中に芽依お姉ちゃんが入ってきて、混ざり合うような。

 そんな感覚がした。

 

 今はこれだけにしておこう。

 恥ずかしさで、どうにかなってしまいそうだから。

 

 僕は、その後少し、顔を赤くし、恥ずかしさに身を委ねていた。

 きっと芽依お姉ちゃんも同じだろう。

 

 僕は今日、これまでで一番好きと伝えた日になった。

 それは言葉ではないけれど、しっかりと伝わるものだった。

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