17話「芽依と僕・1」

 ある日のことだった。

 「勇気あんたさぁ、最近、隣の芽依ちゃんとどうゆう関係なの?」

 お母さんが僕に向かって話す。

 丁度、芽依お姉ちゃんと出掛けて、帰ってきた時だった。

 完全に不意を付かれた僕は、完全に動揺した。

 「いや、別に、何も」

 僕はそう言ったが、お母さんにはばれている。

 「勇気、芽依ちゃんは勇気のことが好きなの?」

 「え?」

 予想外の事にびっくりした。

 そんなのは当たり前じゃないか。

 「世の中には、大人と高校生が付き合ってる、ていうのもある。だけど、それはその子のことが好きなんじゃない。高校生が好きっていうこと」

 僕にはよく分からなかった。

 「どうゆうこと?」

 「簡単に言うと、別にその子じゃなくても良いってこと」

 「ふうん」

 僕はそれを聞き流した。

 「まあ、ママは応援してるよ」

 お母さんはテレビを見ながらそう言った。

 

 事が起きたのは次の日だった。

 僕は不安があった。

 何かが起きるんじゃないかという不安感が。

 

 僕はその日も、芽依お姉ちゃんが来るのを部屋で待っていた。

 だけど、一層に来る気配がない。

 不思議と募る不安感。

 僕は、窓を眺めていた。

 雨のカーテンはない。

 芽依お姉ちゃんの方の窓を開ける。

 行ってみよう。

 僕は勇気を振り絞り、窓へ飛び移る。

 

 芽依お姉ちゃんの香りが、部屋中に満たされている。

 微かに誰かの声がした。

 僕は廊下へ通じてそうな扉で聞き耳を立てる。

 男の人の怒鳴るような声がする。

 芽依お姉ちゃんのお父さんだろうか。

 その時、僕の心の中には、重大な選択をさせられているような気がした。

 だけど僕は、選択肢を迷わず選択した。

 その扉を開き、一階へと行く。

 

 「おい。俺が戻ってきたんだぞ!」

 高圧的な男性の声。

 「今更何を言っているんだ!」

 その男性は拳を高く上げた。

 男性の目の前には芽依お姉ちゃん。

 僕は堪らず駆け出す。


 その男性が拳を下ろすより先に、僕の体をぶつけるほうが早かった。

 「何だこのガキ!」

 僕は男性からできるだけ離れようとしたが、玄関の段差につまずき、そのままそこに座り込んだ。

 

 僕はそこまで春山さんを知っているわけではないが、少なくともこの人は、見たことない。

 誰だろうか、この人は。

 「君は、隣の勇気君!」

 「駄目だよ、人を殴っちゃ」

 僕は男性を睨んでいた。

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