9話「はじめてのサンタさん・上」

 現代において子育てをする上で欠かせないものがいくつかある。

 その中で一つ、クリスマスのサンタクロースだ。

 年に一度、良い子にプレゼントを贈る人物。

 私達親は、そんなサンタクロースの代わりにならなければならない。

 

 12月の中旬。

 彩香が芽依に何が欲しいか聞いてみたようで、返答は「え!?サンタさんくれるの!?」だったそうだ。

 「芽依、サンタさんからプレゼントをもらえると聞いて、ずっとああなんですよ」

 目を輝かせ、興奮した芽依。

 私にも、「サンタさんが来てくれる」と興奮気味で言ってきた。

 

 芽依がそうなのも無理はない。

 美菜の生活は金銭的に限界で、プレゼントをあげる余裕は無かったはずだ。

 まあ、子供には罪はなく、心待ちにしていたはずだ。

 

 芽依はしばらく考えた後、ミカちゃん人形がいいと言ったようだ。

 

 ミカちゃん人形はずいぶん昔からある有名な人形だ。

 

 さて、来る25日に向け、ミカちゃん人形を探すことにした。

 

 そして大手玩具屋、普通に置かれていた。

 そうだ、今のトレンドはゲームだ。

 私は気になってゲームのコーナーへと向かった。

 12月2日発売のゲーム機は、その棚に無かった。

 流石だ。

 

 私はそこを離れようと後ろを振り向き、歩き始めたとき、誰かとぶつかってしまった。

 「すいません」

 「こちらこそ」

 顔を上げると、そこには俊がいた。

 「あれ?俊?」

 「あ、正義じゃねえか」

 「何でこんなところに」

 「何でって、そりゃああのゲーム機を、ってここも不発か」

 どうやら、ずっとゲーム機を探しているらしい。

 「お前もゲーム機か?」

 「いや、人形だ」

 「それは向こうだぞ」

 俊は人形がある棚の方を指さした。

 「いや分かってる、ただ気になってな」

 「そうか、俺はまだ探してくるから、それじゃあな」

 「ああ、じゃあ」

 ところで、俊の家はここから少し離れた場所だったはずだが。

 

 さて、私は無事ミカちゃん人形を購入することができた。

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