10話「はじめてのサンタさん・下」

 ミカちゃん人形を持って家に帰る。

 だが、これを持って中に入ると芽依にバレる。

 一旦車の中に入れておこう。

 そして後で彩香に頼むか。

 私はミカちゃん人形を車の中に入れたまま家に帰る。

 そして夜。

 「芽依のプレゼント車の中に置いてあるから、どっか隠しといて」

 「分かりました。芽依も楽しみにしてますよ」

 「まあ、いままで貰えなかったしな」

 よし、これで大丈夫だ。

 

 ケーキも頼まないと。

 今年は、ショートケーキでいいか。


 そうして24日、クリスマスイブ。

 「サンタさん、ほんとに来る?」

 と、不安そうにしていたが。

 「来るよ、本当に」

 という私の返答を聞くと、すぐに元気になった。

 「サンタさんに会う!起きてる!」

 などという子供なら1度は言うセリフを言うが、会うことはない。

 「ちゃんと寝ないとサンタさん来ないよ」

 彩香はそう言った。

 だが、寝ても寝なくても枕元にサンタさんは来ない。

 リビングに置くつもりだからだ。


 苺のショートケーキ。

 私もここ数年は食べていない。

 「お父さんは苺は後に食べる?先に食べる?」

 「途中で食べるな」

 「お母さんは?」

 「うーん先に食べるかな。酸っぱいし」

 苺を食べ、クリームの多い部分を食べる。

 クリームの甘さと苺の酸味が調和し、食べやすくなる。

 これが美味い。

 「苺あげる」

 彩香は自分の苺を芽依のショートケーキの上に乗せる。

 そしてそれを芽依は頬張る。

 芽依も先に食べる派か。

 芽依は本当に美味しそうに食べていた。

 

 芽依が寝る時間になる。

 「サンタさん、本当に本当に来るかな?」

 「ずっと来なかったんだろ。大丈夫、今夜は来る」

 「そうだよね。おやすみ」

 「おやすみ」

 芽依が寝た後、私達は危険を冒さずプレゼントを置く必要はない。

 この机の上に、この箱を置けばいいだけだ。

 「それじゃあ、寝るか」

 「私にはないんですか?」

 「え、何が?」

 「プレゼントですよ」

 「え、あ、うーん」

 結婚してからプレゼントはあまりあげてないが、今回もプレゼントはない。 

 「そうだな」

 私は彩香の腰に手を当て、引き寄せ、キスをした。

 「悪いけど、これしかない」

 「これでいいんですよ」

 来年はプレゼントは2つか。

 

 次の日。

 トボトボと歩いてきた芽依は机の上を見る。

 そこには人形が。

 「サンタさん来たんだ!」

 「言ったろ、サンタさんは来るって」

 私は芽依の頭を撫でた。

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